片道15分の恋人

1月1日（火・祝）-前編-

『白組が優勝しました！』

　2018年の紅白歌合戦は白組が優勝した。今年の紅白もとても良かったな。あっという間の4時間半だった。

「今年は白組が優勝したね、悠介君」

「そうだね。ということは、明日の初詣で栞に奢ってもらおうことになるのかな」

「そういうことになるね。約束はちゃんと守るよ。大人だからね」

「おっ、さすが20歳」

　僕がそう言うと、栞は嬉しそうな笑みを浮かべながら大きな胸を張っている。奢ることになったけれど、ご機嫌な様子で良かった。紅白を観ているときにカクテルを呑んで、ほろ酔い状態になっているからかも。そんな栞が可愛くて彼女の頭を撫でる。すると、そのことで更に嬉しそうな笑みに。

「2018年ももうすぐ終わるんだねぇ、悠介君」

「そうだね」

　気付けば、2019年まであと3分を切っていた。テレビを観ていると右下に2019年までのカウントダウンが表示されている。

　いよいよ平成最後の年越しを迎えるんだ。今までと違って、お酒の影響でほろ酔い気分だけれど。主に栞。

「悠介君、今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いします」

「うん。こちらこそお世話になりました。来年もよろしくお願いします」

　僕と栞は1年の挨拶を済ませて、互いに頭を下げる。

　それからは一緒にテレビを観ながら、2019年を迎える瞬間を待つ。

『2019年まで……3、2、1！』

『Happy New Year!!　2019年あけましておめでとうございまーす！』

「あけましておめでとう！　悠介君！」

「おめでとう、栞」

　平成最後の年越しはあっという間に終わった。一瞬のことだからそれは当たり前なんだけれど。2018年の間は年を越すことが特別な感じがしたけれど、実際に2019年を迎えると例年とさほど変わらないと思った。

　2019年になって最初に栞と目を合わせると、栞が笑顔で僕のことを見てきて口づけをしてきた。

「今年もよろしくね、悠介君」

「うん。よろしく、栞」

　2018年になってすぐにも同じようなことをした気がする。毎年変わらず栞と一緒に新年を迎えることができるのは嬉しいことだ。きっと、1年後……2020年になったときも同じようなことをするような気がする。

「2019年の初口づけ、美味しくいただきました」

「それは良かった」

「コーヒーの味もするけれど、カクテルも呑んだのか甘い感じもするねぇ」

「カクテルを呑んですぐに、酔い覚ましでコーヒーを飲んだからね」

　そのおかげか、僕はあまり酔うことはなかった。これなら、新年早々二日酔いになってしまう心配はないだろう。一緒に呑んだお酒は強くなかったし、量もそこまで多くないので栞もきっと大丈夫かな。

「ねえ、悠介君」

「うん？」

「2019年も最初のお風呂は悠介君と一緒に入りたいんだけれど……」

「もちろんいいよ。そういえば、2018年も栞と一緒に初風呂したね」

「そうだね。じゃあ、一緒にお風呂に入って、一緒のベッドで寝よう？」

「もちろんいいよ」

　2019年も楽しい1年になりそうな気がしてきた。

　その後、両親がお風呂に入っていないことを確認して、僕は栞と一緒に2019年最初のお風呂に入った。酔いが残っているからか、栞は終始楽しそうで。

「はぁ、お風呂気持ち良かった。新年早々、悠介君と一緒にお風呂を入ることができて良かったよ。幸せだなぁ」

「そう言ってくれて嬉しいよ。幸せな1年になりそうだ」

「ふふっ、私も。今夜は悠介君と抱きしめながら寝たいな」

「うん、そうしよう」

　まだ酔いが残っているからか甘えっぽいな。そんなところが可愛らしい。

　約束通り、温かな栞と抱きしめ合いながら眠りにつくのであった。