特別編 in 2018
2月14日(水)
特別編-The Valentine's day in 2018-
2018年になってから急に寒い日が増えた気がする。関東地方では1月の大雪を機に、最強寒波が次々とやってきて、例年よりも寒い日が続いている。
そんな寒波が襲ってきている中、僕と栞は秋学期の期末試験に臨んだ。どの科目も結構できたので単位を取ることはできると思う。期末試験がなく最終課題を提出する科目も大丈夫かな。栞も単位の取得は大丈夫そうだと言っている。成績発表は3月初旬の予定になっている。
何にせよ、大学1年生の日程が終わり、今はおよそ2ヶ月間の学年末休み中。坂井先輩や原田先輩が勧めるお店でバイトをしたり、お互いの家に行ったり、デートをしたり。あと、最近は数日前から始まった平昌オリンピックを観ている。
そして、今日は2月14日。バレンタインデーだ。
今日はバイトもなく、栞からのお誘いで昼過ぎから彼女の家にお邪魔している。彼女の部屋にあるテレビで一緒にオリンピックを観るのかと思いきや、
「ルゼちゃんかわいい……」
栞が好きな『ご注文はねこですか?』のBlu-rayをずっと観ている。そういえば、栞は主要キャラクターの1人であるルゼという女の子が大好きで、彼女の誕生日が2月14日だった。思い返せば、去年も一昨年もルゼちゃんの誕生日をお祝いしていたっけ。
「今年もルゼちゃんのお祝いをするんだね」
「もちろんだよ! ルゼちゃんのこと大好きだから」
「……ブレなくて素敵だよ」
栞がここまで誕生日をお祝いするのはルゼちゃんだけじゃないだろうか。ここ何年かは、バレンタインデーはチョコをもらうだけではなく、ルゼちゃんの誕生日という印象がついたな。
「もう、おやつを食べるのにいい時間だね、悠介君」
「もう3時過ぎか。僕もお腹空いてきたな」
「よし、じゃあ……今日のために色々と作ったから、温かいコーヒーと一緒に持ってくるね。ちょっと待っててね」
栞は楽しげな笑みを浮かべながら部屋から出て行った。
今日はバレンタインデーだし、僕のためにチョコレートを作ってくれていると思う。ただ、色々とって言っていたから、今年はチョコレートだけじゃないのかな。
詩織が来るまでの間、スマートフォンでオリンピックの日本代表について検索してみる。おお、結構頑張っているじゃないか。メダル……いけるかな。
「悠介君、お待たせ」
数分ほどして、トレーを持った栞が部屋に戻ってきた。そんなトレーには小さなチョコレートホールケーキが乗っている。
「おっ、ケーキだ」
「誕生日にはケーキだからね」
誕生日ということは……このチョコレートケーキはルゼちゃんのために作ったのか。相当な愛情の深さを感じる。
ただ、ケーキの横には可愛らしくラッピングされた水色の小袋もあった。もしかして、これが僕へのチョコレートなのかな。
「もちろん、悠介君へのチョコレートもあるよ。悠介君、大好きです。愛情を込めてチョコレートを作りました! 受け取ってください」
「……ありがとう。いただくよ」
水色の小袋を栞から受け取る。
「さっそく、食べてみてもいいかな」
「……うん」
小袋を開けると、ハート型のチョコレートがたくさん入っていた。実際に一つ手に取ってみると、一口サイズの可愛らしいもので。
「いただきます」
手作りチョコレートを食べてみると、意外と甘さ控え目で苦味が強いものだった。コーヒーもブラックが好きな僕にとっては好みのバランスだ。
「とても美味しいよ。苦味が強くて、僕好みだ」
「……良かった。悠介君、普段からコーヒーばかり飲んでいるから、チョコレートも苦い方が好きなのかなと思ってカカオを多めにしたの」
「そうだったんだ。ありがとう」
付き合い始めてから4年近く経つけれど、大学に入学してからずっと一緒に過ごすようになったんだよな。そのことで、お互いに相手のことを色々と知ることができて。
僕はお礼の意味も込めて栞に口づけをした。
「……苦いね。でも、とても甘いよ」
栞はにっこりとした笑みを浮かべながらそう言った。そういえば、栞は苦いものはあまり得意じゃなかったな。
「甘いもの、栞は大好きだもんね」
「……うん。ちなみに、こっちのルゼちゃんのバースデーケーキは結構甘く作ったの」
「へえ、そうなんだ」
ルゼちゃんは甘いものが好きな設定なのかな。それとも、自分で食べることを前提に甘く作ったのか。
「2人で食べるのにちょうどいい大きさに作ったから、一緒に食べよ?」
「……うん、いただきます」
ルゼちゃんへの甘いバースデーケーキを栞と一緒に食べる。
毎年のことだけれど、今年もこうして栞と一緒にバレンタインデーを過ごすことができて本当に良かった。来年もまた栞と一緒にバレンタインデーを過ごせれば何よりだと思っている。
特別編-The Valentine's day in 2018- おわり
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