1月1日(月・祝)
『白組が優勝しました!』
2017年の紅白歌合戦は白組が優勝した。3年ぶりの白組優勝か。今年はどうなるだろうと思っていたけれど、蓋を開けてみれば圧倒的な差で白組が優勝した。
「今年は白組だったね」
「久しぶりだったから嬉しいよ」
「確かに、最近は紅組の優勝が多いイメージだったもんね」
ただ、紅組にもいい歌唱をしていた人もいたし、名前くらいしか知らなかった出場歌手の曲の中でも、何曲かいい曲を見つけることができたので、個人的にはとても楽しかった。
「2017年ももうすぐ終わるんだね」
「そうだな」
気付けば、2018年まであと1分を切った。テレビを観ていると右下に2018年までのカウントダウンが表示されている。
「悠介君、今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いします」
「うん。こちらこそお世話になりました。来年もよろしくお願いします」
僕と栞はテレビを観ながら、2018年を迎える瞬間を待つ。
『2018年まで……3、2、1!』
『Happy New Year!! 2018年あけましておめでとうございまーす!』
「あけましておめでとう! 悠介君!」
「おめでとう、栞」
2018年になって最初に栞と目を合わせると、栞が笑顔で僕のことを見てきて口づけをしてきた。
「今年もよろしくね、悠介君」
「うん。よろしく、栞」
まさか、2018年になってすぐに口づけをすることになるとは。2017年になったときもそうだった気がするけれど、今年は更に早かった気がする。2019年のときはなった瞬間に口づけしそうな気がするぞ。
「2018年の初めての口づけ、美味しくいただきました」
「ははっ」
「何だかいつも以上にコーヒーの味が強かったような」
「紅白を観ている間に何杯も作ったからね」
「そんなに飲んだら眠れるの? 明日は初詣に行くつもりだけれど」
「毎日、夜にはコーヒーを1杯は飲んでいるからね。何杯飲んだところで、あんまり変わらないよ。実際にちょっと眠気来てるし」
「そうなんだ。……2018年になってさっそく勉強になったよ」
「勉強熱心でよろしい」
僕は栞の頭を優しく撫でる。受験勉強をしていたことを除いては2017年とさほど変わらずに年を迎えることができたので、今年も栞と楽しい1年が過ごすことができそうな気がしてきた。
「ねえ、悠介君」
「うん?」
「お父さんもお母さんも多分、もう寝ちゃったと思うから……今夜は一緒にお風呂に入ろっか? それで、ベッドで一緒に……」
「……もちろん」
「うん! じゃあ、ちょっと下の様子を見てくるね」
そう言って、栞は部屋を出ていった。
どうやら、2018年は……去年以上に楽しい1年になりそうな気がしてきた。
その後、栞が御両親は眠っていることを確認したので、僕は彼女と一緒に新年最初のお風呂に入り、体も心も温めた状態で彼女のベッドで眠るのであった。
朝になって、僕と栞は御両親と一緒におせち料理とお雑煮を食べた。そのときに栞の御両親からお年玉をいただいた。大学生になって、バイト代だってあるのに。毎年恒例だけれど、かなり申し訳ない気分に。ただ、もらったからには大切に使わせていただこう。
予定通り、僕は栞と一緒に近所の神社に初詣に行くことに。そのときはクリスマスプレゼントで栞からもらったニットキャップを被って。栞も僕がプレゼントしたマフラーを巻いてくれて嬉しい。
去年と同じように、神社に到着すると、元旦だけれど、晴れていて日差しの温もりを感じられるからなのか、僕達のように初詣に来ている参拝客が多くいた。去年よりもたくさんいるような気がする。
参拝の長い列に並んでからおよそ20分。やっと僕と栞の番になった。
「はい、栞」
「ありがとう」
僕は栞に5円玉を渡した。栞と出会い、こうして一緒にいられるご縁を大切にしましょう、という意味で賽銭をするときは毎年5円と決めている。
僕と栞は賽銭箱に5円を入れて、二礼、二拍手、一礼。
最後の礼のとき、今年も栞と一緒にいることができますようにとお願いした。栞と同じ願いだったら嬉しいな。
「ねえ、悠介君。何をお願いした? 私は今年も悠介君と一緒に楽しく大学生活を送ることができますように、ってお願いしたけれど」
「僕も同じようなことをお願いしたよ」
「ふふっ、やっぱり」
栞は嬉しそうに僕と手を繋いできた。何だか、2017年の初詣のときもこんなことを言っていたような気がする。もちろん、願い事は去年と違うけれど。
「ねえ、悠介君。今年もおみくじをやっていこうよ」
「おっ、いいね。やろうか」
去年は確か末吉だったな。今年はどんな結果になるか。受験とかはないから凶さえでなければいいなとは思っている。
巫女服姿のアルバイトの女性を見て、巫女さんの服を栞に着させたらきっと可愛いんだろうな、と思いながらでおみくじを引く。
「今年は中吉か。去年は大吉だったんだけれど。悠介君は?」
「僕も中吉だったよ」
「ふふっ、悠介君と同じなのは嬉しいな。中吉だけれど中吉じゃない気がしてくる」
「中吉で良かったって感じはするね」
中身はというと……恋愛は、
『よし。心をよく見よ』
と書かれていた。恋人がいてもいなくても、誰かの気持ちを考えるのは大切だよね。
あと、気になるのは……やっぱり、学生だから学問かな。
『よし。努力し続ければ尚よし』
とのこと。今のところ、後期の科目はどれも単位が取れると思うけれど、油断していると落とすかもしれないから気を付けよう。
おみくじの内容をスマートフォンで撮影する。何か迷いが生じたときはこのおみくじを見ることにしよう。
「あっ、私もやる」
栞も自分が引いたおみくじを撮影した。
僕らはおみくじをしっかりと結んで、2018年の初詣は終わった。
「今年もこれで初詣が終わりか」
「終わっちゃったね。これで家に帰るのはちょっとつまらないから……そうだ、あそこの屋台で甘酒が売っているみたいだから買って飲もうよ」
栞の指さす先には「あまざけ」と書かれた暖簾がかかる屋台が。
「甘酒か。久しぶりだ」
小さい頃、初詣の帰りに母親が甘酒を買ったので、それを一口もらった記憶がある。何とも言えない甘さということもあり、当時は一口で充分だったけれど。
僕達は甘酒を買って、近くにあるベンチに座って飲むことに。
「……結構甘いね」
「でも、癖にならない? 私は結構好きだよ」
「栞は甘い物好きだもんね。昔、母親が買って一口飲んだとき、凄く甘かった思い出があるんだけれど、やっぱり甘い。コーヒーが好きになったからか、今の方が甘く感じる」
それに、甘酒ということもあって体がポカポカしてきた。
「ふふっ。きつかったら私が飲むよ」
「……うん。もう一口くらいでいいかな。多分、それで満足しちゃうと思う」
もう一口飲むと……やっぱり、この独特の甘さに満足してしまった。
そんな僕の横で栞はゴクゴクと甘酒を飲み、あっという間に飲み干した。嬉しそうな笑みを浮かべているから凄いよ、栞は。
「うん、美味しい! 悠介君、どう?」
「半分は残ってる。栞さえ良ければ飲んじゃって。僕はこれで満足だよ」
「喜んで! いただきま~す」
栞は再びゴクゴクと甘酒を飲んでいく。今年、20歳になってお酒が呑めるようになったら、甘いお酒をたくさん呑みそうな気がするな。
「う~ん、美味しかった。悠介君の飲みかけだからか、さっきよりも美味しく感じたよ」
「……それは嬉しいよ」
栞、まだまだ飲めそうな感じがする。さすがは甘党。
「う~ん、甘酒をたくさん飲んだから体がポカポカだよ」
「そうだよね。僕もポカポカだもん。でも、僕の残りも飲んだから……気持ち悪くなっていたりしてない?」
「ううん、それは大丈夫だよ。でも、何となく……悠介君がいつも以上にかっこよく見えるなぁ」
えへへっ、と栞は頬を赤くしながら柔らかい笑みを見せる。これはもしかしたら……たくさん飲みすぎてちょっと酔っているのかも。
「今年も悠介君と一緒にいられると嬉しいな。さっき、しっかりとお願いしたからそうなってほしい」
と、栞は僕としっかり腕を絡ませながらそう言う。
「僕も同じ気持ちだよ、栞」
「……嬉しい」
ほんの一瞬だったけれど、栞の方から口づけをしてきた。人がいる前なのに恥ずかしいな。普段の栞ならきっとしないことだから……やっぱり酔っているんだな。酔いが醒めるまで、もうちょっとここで休むことにしよう。
「今年もよろしくね、悠介君」
「うん、よろしく。栞」
2018年はどんな1年になるんだろう。
去年と変わらず、栞と一緒に楽しい大学生活を送ることができるように頑張っていくことにしよう。
特別編-Year End and New Year of 2017~2018- おわり
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