12月24日(日)

特別編-Merry Christmas in 2017-




 今年の大学の授業は先週の金曜日で一旦終了し、昨日から1月8日までおよそ半月の冬休みに入っている。

 今日はクリスマスイブ。晴れているので今日は栞と一緒にデートに行き、そのまま僕の家に彼女を招くことに。栞は泊まることになっている。


「今年のクリスマスは悠介君のお家で過ごすんだね」

「そうだね。去年は栞の家でお世話になったから、今年は僕の家にしたいって前から思っていたんだ」

「そうだったんだ。私は悠介君と一緒に過ごせるならどこでもいいと思ったけれど、悠介君のお部屋だと凄くドキドキする」

「ははっ、そっか。去年の僕は……ドキドキもしたけれど、受験勉強もあったからね」

「うんうん、そうだった。私もクリスマスに自分の部屋で悠介君と2人きりの状況にドキドキはしたけれど、受験勉強が大変だったから。でも、悠介君が優しく分かりやすく教えてくれたおかげで今があるのかな……なんて」

「そう言ってくれるのは嬉しいな。でも、最後は栞の頑張りがあったからだと思うよ」

「……うん」


 栞はとても嬉しそうな表情を浮かべている。

 去年のクリスマスは僕が栞の家に行き、受験勉強をしながら栞との時間を過ごした。あのときは受験に合格するかどうか不安な時期だったけれど、栞と一緒にいることで気持ちが安らいだことを覚えている。


「今年も3月までは大変だったけれど、4月から悠介君と同じ大学に通い始めたからかとっても楽しいよ。サークルには遥香先輩や絢先輩がいるし」

「学部は違っても、大学の中に高校の先輩がいるのは心強いよね」

「うん。きっと、先輩達も楽しいクリスマスを過ごしているんだろうなぁ。でも、一番心強いのは悠介君が側にいてくれることだよ」

「……そう言ってくれると凄く嬉しいよ。僕も栞が隣にいてくれて心強いって思ってる」


 僕は栞の頭を優しく撫でる。照れているのか、彼女の頭から強い温もりが感じられる。もちろん甘い匂いも。


「ね……ねえ、悠介君!」

「うん?」

「お、お手洗いを借りてもいいかな?」

「いいよ」


 そう言うと、栞はバッグを持って僕の部屋を出た。バッグを持っていく必要はないと思うんだけれど……あぁ、もしかしてそういうことかな。


「じゃあ、今のうちに僕も……」


 元々、今日は栞が僕の家に泊まる話になっていたので、僕の部屋の中に彼女へのプレゼントを用意していたのだ。それをテーブルの上に置いて栞が戻ってくるのを待つ。

 それにしても、今年もこうして栞とクリスマスを迎えることができて良かった。このまま平和に年を越したいところだ。

 ――コンコン。

 あれ? ノック音が聞こえたぞ。栞かな。


「はーい」


 僕がゆっくりと部屋の扉を開けると、


「悠介君! メリークリスマス! 栞サンタ2017だよ!」


 そこにはとても可愛らしい栞サンタが立っていた。やっぱり、栞サンタになるためにバッグを持ってお手洗いに行ったのか。

 それにしても今年の栞サンタ……大学生になったからなのか、去年よりも更に肌の露出度がアップしているような。肩まで丸出しだし、スカートの方も膝上20cmくらいの短さだ。夏休みでも肌の露出度が高い服はあまり着ないのに。クリスマスになると栞はいつになく大胆になる。


「凄く可愛いね。何だか、去年よりも更に艶やかになっているような気がする」

「大学生にもなったし、悠介君とも……色々と深い関係になっているから、きょ、去年よりも大胆になってみました!」

「なるほどね。……うん、確かに去年よりも大人な雰囲気になっている気がするよ。さっ、栞サンタさん……僕の部屋に入って」


 いつまでも廊下にいたら、寒くて風邪引いちゃうからね。僕は栞の手を引いて、彼女のことを部屋の中に入れた。その際に栞サンタの姿をスマートフォンで撮影する。


「やっぱり、悠介君の部屋の中は温かくていいね」

「まあ、この寒い時期にその恰好をしていて、温かいのが嫌だって言ったら僕は耳を疑うけれどね」

「……うん。そうだ、今年も栞サンタからクリスマスプレゼントがあるんだよ。はい、メリークリスマス」


 栞はバッグから水色の袋を出し、僕に渡してきた。結構柔らかい感触だけれど、どういうものなんだろう?

 袋を開けてみると、中には青いニットキャップが入っていた。


「おお、ニットキャップだ!」

「今年は結構寒いじゃない。悠介君、手袋やマフラーはするけれど、帽子を被っているときはないなって。だから、ニットキャップにしたんだ」

「そうなんだ」


 僕はさっそくニットキャップを被ってみる。


「うん、似合ってる!」

「ありがとう。やっぱり、こういうものを被ると温かいんだね」

「ふふっ、気に入ってくれて良かった」

「じゃあ、僕からも栞にクリスマスプレゼント」

「ありがとう!」


 僕は栞にクリスマスプレゼントが入った赤い袋を渡す。気に入ってくれるかな。


「うわあっ、赤いマフラーだ!」

「栞、今日もそうだけれど、いつも灰色のマフラーをしているじゃない。もう1つあれば、気分転換にいいかなと思って。マフラーにも色々な生地があるから、普段している灰色のマフラーに似た柔らかいものにしてみたんだ」

「たまに、チクチクするマフラーってあるよね」

「じゃあ、プレゼントのお礼って言ったらアレだけれど、僕はマフラーを巻くよ」

「……お願いします」


 僕はサンタ服姿の栞に赤いマフラーを巻いてあげる。マフラーを巻くことで栞の白い肌の露出が減ったけれど、これはこれで……色気があるな。


「……可愛いよ」

「……ありがとう。これからはこれをメインに巻こうかな。そうだ、せっかくだからこの姿で記念写真を撮ろうよ」

「そうだね」


 思い出として残しておきたいから。僕と栞は寄り添って、僕のスマートフォンでツーショット写真を撮る。


「うん、いい写真だね。後で送って」

「分かった」

「……ねえ、悠介君。実は……もう一つクリスマスプレゼントがあるんだけれど」

「うん、何だろう?」


 すると、栞は僕のことをぎゅっと抱きしめてきて、


「私がクリスマスプレゼントだよ」


 そう言って、僕に口づけをしてきた。

 そういえば、去年も今と同じような感じで、栞は自分がクリスマスプレゼントって言ってきたな。


「あれ? 今までも栞は僕のものじゃなかったかな?」

「もちろんだよ。ていうか、その言葉……去年も言っていたような気がするけれど」

「多分、言ったと思う。栞こそ私がクリスマスプレゼント、っていうのも去年言っていなかったかな?」

「……うん、言ったよ。この言葉、高校の後輩の美来ちゃんが去年教えてくれて。こう言えばきっと彼氏さんもキュンとくるだろうって……」

「なるほどね。キュンときたよ」


 美来ちゃん……って、ああ……卒業式の日に会った朝比奈美来さんのことか。確か、彼女は結婚前提に付き合っている社会人の男性と同棲しているんだっけ。彼女も栞と同じように今頃、サンタコスプレをして彼氏さんに自分がクリスマスプレゼントだって言っていそう。


「あっ、今……美来ちゃんのサンタ姿を想像して、きっと似合うだろうなだって思ったでしょ」


 栞、不機嫌そうに頬を膨らましている。


「彼女も似合うと思うけれど、栞の方が絶対に可愛いよ」

「……あ、ありがとう」


 すると、栞は照れ笑いを見せる。栞が一番可愛いに決まっているじゃないか。


「悠介君、今年は……去年以上の素敵な聖夜を悠介君に提供したいと栞サンタは考えているのです! その……お互いに18歳になったんだし、悠介君と色々なことをしたいなって。去年のクリスマスにそんなことを言ったじゃない。だから、去年よりも大胆な服装にしたんだよ」


 栞は今夜のことを色々と考えながら、サンタコスプレの衣装やクリスマスプレゼントを用意したのかもしれないな。


「……そっか。出会った頃は高校生だったけれど、今は大学生だもんね。僕らも大人になってきたことだし……今夜を特別な夜にするために色々しようか」

「……ありがとう、悠介君。じゃあ、栞サンタが悠介君に色々なものをあげるね。それで、素敵な時間にしようね」

「……そのつもりだよ。一緒に楽しもう」

「うん!」


 その後、僕と栞は2人きりで聖夜に相応しい特別な時間を過ごした。それは、体も心も温かくなるような愛おしいもので。栞の嬉しそうな笑みをたくさん見ることができて、僕はとても幸せで、それこそが一番のクリスマスプレゼントだと思った。

 大学生になってから初めてのクリスマスは、高校生だった去年までとは違った雰囲気で、そして変わらず楽しいクリスマスになったのであった。




特別編-Merry Christmas in 2017- おわり

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