6月1日(木)
特別編-End of Spring in 2017-
今日から夏が始まる。ただ、ゴールデンウィークくらいからとても暑い日があったので、やっと夏になったのかという印象だ。
僕と栞の大学生活が始まっておよそ2ヶ月。
同じ学部、同じ学科ということもあって、栞とはほとんど一緒にいる。
違う講義といえば、入学直後に行なわれた実力テストの結果で振り分けられる英語科目と、学籍番号で振り分けられる専門科目の1つ。そのときを中心に、男女問わず同級生の友人を作ることができた。
栞と一緒に茶道サークルに入って、縦の繋がりもできた。知り合った人達はみんないい人なので本当に安心している。
あとは1学年上に、別の学部だけれど栞が卒業した天羽女子高校の先輩である坂井遥香さんと原田絢さんが通っている。坂井さんは茶道サークルの先輩でもある。
アルバイトの方は……まだしていない。大学生活に慣れることを第一なので。
縦と横の繋がりができたおかげか、大学に入学してからまだ2ヶ月くらいしか経っていないのに、僕と栞はカップルとしてちょっとした有名人になってしまっている。温かく見守ってくれるからまだいいけれど、注目を浴びるのはなぁ。
ただ、もっと有名なカップルが僕と栞の知り合いにいる。
「大学生活には慣れてきた? 2人とも」
「はい! 遥香先輩」
「……楽しいですけど、僕はもうちょっと静かに栞と大学生活を送りたいです」
「ははっ、最初の頃はそうだよね。私と遥香も入学したての頃もそうだったなぁ」
原田さんは爽やかな笑みを浮かべながらそう言う。
坂井さんと原田さんは僕らとは比べものにならないくらいに有名なカップル。そんな2人と知り合いだからこそ、僕と栞は今の時期から学内で知られるようになってしまったのかもしれないけれど。
「私も新倉君のようだったなぁ。絢ちゃんと一緒に静かに大学生活を送りたいなって思っていたよ」
「ですよね。慣れれば、お二人みたいに周りを気にせずにいられるんでしょうか」
「気にしていないって言ったら嘘になるけれど、絢ちゃんが側にいればそれだけで安心できるっていうか。そう思ったら、段々と周りは気にならなくなったよ」
「なるほど……」
確かに、キャンパスの中にいても、栞が側にいて、栞のことを考えているときは心が安らぐからなぁ。
「私は悠介君のことばかり考えているので、周りのことは特に気にならないですね」
「私は栞ちゃんのタイプだなぁ。というか、遥香と一緒にいれば場所なんて関係ないって考えているから」
原田さん、僕よりも断然に性格がイケメンだなぁ。僕もこのくらいに考えることができればいいな。
「そういえば、今日から夏だけれど、悠介君と栞ちゃんは夏休みに何をするとか考えているかな?」
「まだ、考えていませんね。先輩方はもう予定があるんですか?」
「数年くらい前に、私と絢ちゃん、お兄ちゃんとお兄ちゃんの彼女と4人で旅行に行ったホテルがあってね。そこで色々なことがあって、それからはほぼ毎年、そのホテルに行っているんだ。アクアサンシャインリゾートホテルっていうんだけれど」
「へえ……行きつけのホテルがあるんですか。いいですね」
行きつけって、普通は居酒屋とかもっと身近なお店のこと言うんじゃないだろうか。ただ、毎年行きたくなるようなホテルと巡り会えるのはいいな。あと、アクアサンシャインリゾートホテルって心霊現象が起きることで有名じゃなかったっけ。
「去年は絢ちゃんと2人きりで行ったの」
「お兄さんと奈央さん、就職活動と卒業論文があったもんね。今年は4月から社会人だから行けるかどうか分からないよね」
「そうだね。だから、もし2人さえ良ければ、夏休みに4人で旅行にいきたいなぁと思って」
「そうですね。お金の話はとりあえず置いといて、僕は構いませんよ。栞はどうだろう?」
「うん、私もいいよ。でも、お金の話は置いといてって言ったけれど、バイトをしないといけないと思うよ」
「……そうだね」
期末のレポートの締め切り日や期末試験の実施日は、だいたい7月末から8月の初め頃。少なくとも、旅行まではあと2ヶ月はある。今からバイトを始めて、普段からやりくりをしていけば旅行資金も大丈夫かな。
「じゃあ、4人で行くことで決まりだね。オーナーには私の方から連絡しておくから」
「ありがとうございます、坂井さん」
オーナーに連絡しておくって坂井さんって凄い家の人なのか?
そういえば、数年くらい前に行ったときに色々あったと言っていたっけ。もしかしたら、そのオーナーにとって、坂井さんや原田さんは恩人なのかもしれない。
「楽しみだね、悠介君」
「そうだね、栞」
大学生活最初の夏は色々と楽しいものになりそうだ。特に夏休みは先輩方も一緒だし。栞と一緒に思い出になるような時間を過ごせるといいな。
特別編-End of Spring in 2017- おわり
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