4月10日(木)

 彼女の胸が僕の背中に当たるという出来事が衝撃的すぎて、昨日はあまり眠ることができなかった。そのせいか、未だにあくびが止まらない。ちなみに、今でもあの柔らかさしっかりと覚えていて。

 昨日のような出来事がまた起こってほしい気持ちもあるけど、あんなことが毎日続いたら心臓が持たなくなりそうな気もする。昨日だって、彼女が降りてからもずっとドキドキしていたし。あと、こんなことを考えてしまって彼女に申し訳ない気分に。

 あんなことがあったけれど、今日も彼女は乗っているだろうか。乗っていたら、嬉しいけれどちょっと気恥ずかしいかな。



 今日も、7時30分発の八神行きの電車が定刻通りにやってくる。

 先頭車両の一番後ろの扉が開くと彼女が乗っていた。

 しかし、彼女は僕と目が合うと少しだけ頬を赤く染めて俯いてしまう。きっと、それは昨日の出来事が影響しているのだと思う。ただ、今日も同じ場所に乗っているから、僕と一緒に乗っていることが嫌だというわけではなさそうだ。

 それにしても、恥ずかしがる彼女も可愛いな。


 僕は彼女の左隣に立ち、左手で近くの吊革を掴んだ。


 走行中、彼女に怪しまれない程度に、彼女の顔を何度か見る。

 今日は終始、頬を赤く染めて俯いていた。これは思ったよりも、昨日のことが響いているのかな。


 こんなとき、どんな言葉をかければいいのだろうか。

 昨日のことは仕方ないと言うべきなのかな。それとも、彼女が恥ずかしがっているから、何も言葉をかけない方がいいのかな。


 鏡原駅で彼女が降りるまでの間に、その答えが見つからなかった。

 結局、今日は彼女の姿をチラチラと見ただけで、一言も言葉を交わすことができなかったのであった。

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