何日目なんだろ〔2〕最終回

 意外ともつ。痛いけど。

 思いついた事が。手帳は俺達2人を死ぬと判断した。なら、2人の手帳を交換すれば……別の判断を下すんじゃないか?

 完全な賭けだけど。それに今度も「死ぬ」って判断されたら、またもタイムスリップ。


 よし、交換しよ!

「手帳を交換するぞ」

「何故?」

「手帳の性質を利用する」

「ああ? ああ……ああ!」

 交換した。血だらけの男の血だらけの手帳と、血だらけの俺の血だらけの手帳を交換……。



 また、寝てた? あ、痛くない。いや、痛い。傷が治った、右膝から下以外。右膝から血が滴り落ちる。

 まだ、特急の中。タイムスリップはしてないみたい。

 あの男は? ……何処に行ったのかな? タイムスリップしたのか?


 傷は痛いけど、紐があったので縛って止血した。客が少なくて助かったな。

 後は待つだけだな、特急が止まるのを。


 …………ん? 止まる? 今、何処だ?

 松葉杖を使って先頭車両に行くことにした。

 車掌さんに伝えた方がいいからね。


 確か、九州を出るあたりでトイレに行ったな。そこから、どれぐらい寝てたんだろう。

 移動しながら考えた。



 ガシャァン

 ん⁉︎ 何の音だ?

 ギギギギ

 鉄の軋む音だ。窓を見た。関門海峡。

 へ?

 ゴォォォォォン ガァン

 車体が傾ぐ。

 嘘ん……。なるほど、あの時タイムスリップしたのは このせいか。

 列車は関門海峡に落ちていった。俺と一緒に。




 終わり






 ではなぁぁい!




 …………ん?

「大丈夫?………………起きたのね!」

 あ、生きてる? ウオォォーーーーッ!! やった! やったぞ!!! 手帳は裏切らなかった!!

 身体動かないけど。


 って、誰だ? ん? 生きてる……ということは。

「あ、あの、い、今は何年ですか?」

「?」

 首を傾げる美人。

 かわいい。あんまり目が見えないけど。


「ごめんなさい、言葉がわからないの」

 あ? あーあ。そうか、俺がロシア人を見慣れていたせいか! (会話になってない)


 なんでロシアの兵士たちを見たら、女性のロシア人もわかるようになるんだよってのは置いとけ。


 ロシア美人が目の前に……悪い気分ではない。

 あ。ロシア美人って、また? 嘘……また? え? また? え、ちょ、ちょっと。手帳は何処だ。

 俺が焦る理由はわかるよね。この感じはタイムスリップしたのかは別として、絶対ありえない状況だし。


 でもやっぱり、タイムスリップが頭をよぎる。

 手帳を探していると、ロシア美人が気づいて何かを持ってきた。


「これをお探し?」

 ドイツの野戦病院にいた時のたたまれた入院服?と、その上にペンと、手帳。

 早速ペンで、手帳に「今は何年ですか」って書いた。ちゃんとロシア語に翻訳された。


「まぁ! ロシア語が書けるのね!」

 パツキンロングに白のエプロンがよく似合う

 なぁ。……『パツキン』は古かったかな?

「えっと〜、1946年よ」

 あーあ、またかよ。嘘だろ。


 ……ふはは。だが、今回は戦時中ではなぁい! それに、美人さんもいる!


 こうして、一度は現代に戻ったものの、再度タイムスリップした俺。今回はちゃんとやっていけるのか?

 それは、まだわからないけど、今度は美人がついてる。


 果たして、俺は生き残れるのか? でもさ、物語だしね、生き残れるでしょ。手帳があるし。





 終わり




「ただいま」

「おかえりなさい、貴方!」

 既婚者だった。これは生き残れないな。

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え⁉︎ ソ連兵って畑から取れるの⁉︎ 蕃茄河豚 @har3

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