麒麟について

 麒麟という空想上の動物がいる。

 この鹿に似た動物は、聖人が世に現れると姿を見せるとされている。

 雄を麒と書き、雌を麟とする(逆とする説もある)。

 麒という漢字は、この動物を指すためだけにあるようだ。

 対して、麟のほうには、

 ①の大鹿

 ②光り輝くさま

 という字義もある。

 麒麟は、生草を踏まず生物を食わないそうなので、今の世では動かずビールでも飲んで、日々を過ごしているのかもしれない。


 日本で麒麟といえば、日本橋に立っているブロンズ像が知られているが、その型をつくったのは渡辺長男。

 長男と書いておさおと読むのだが、彼の出てくる文章を読んでいると、本人を指しているのか、彼の長男のことを言っているのか少し迷う。

 弟のなまえは次男と書いてつぐおだろうか。


 さて、この麒麟が関わる言葉に、獲麟という成語がある。

 絶筆や物事の終末を意味するのだが、出どころは、中国の歴史書『春秋』に記されている最後の出来事である。

 「十有四年春、西に狩りして麟を獲たり」と麒麟を捕まえたのだが、だれも見たことのない生き物を気味悪がり恐れた。吉兆を知らせる動物なのに。

 麒麟の扱われ方を見て、『春秋』の作者といわれる孔子は、獲麟の記事をもって『春秋』を打ち切ったとされている。


 最後は空想から離れて現実的な話で締めよう。

 麒麟から、一日千里を走る馬のことを騏驎と書くが、日本ではジラフのことをキリンと呼ぶ(ちなみにgiraffeは、アラビア語で「早く歩むもの」)。

 中国では長頸鹿と書き、情緒は薄いが、鹿とするのは麒麟の影響か。

 麒麟とちがい、キリンは動物園で見られるが、名付け元と同じく、なかなかおもしろい生き物である。

 たとえば、

 ①ハードルは高いがペットとして飼える

 ②純血と雑種の区別がある(純血は四種。自然状態では他種と交配しない)

 ③落雷注意

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