想像の先

 評価の基準というのは、人それぞれだ。

 お笑いを見る時に、社会風刺や政治批判の有無を気にする人もいる。

 私には理解できないが、各々の価値観は尊重されるべきである。

 だから、賛同はしないが非難まではしない。

 ただ、「こうあるべき」を他人に押し付ける人間は嫌いである。


 物の良し悪しの軸が、自らの政治信条である者が目につく。

 自分と考え方がちがうと、あいてのすべてを否定する人がいる。

 たとえば、作家に対して、その作品云々ではなく、政治的志向をもって拒否する。

 そのためか、政治的な主張はなくとも、右側の新聞に左側の作者は載らない。

 逆も同じ状況である。

 (昔の欧州では、政治と文学を切り離した新聞があったらしいが)

 私で言えば、高橋源一郎さんの小説は好きだが、政治の話は興味がない。

 しかし、彼の政治的な立ち位置を、作品の評価に加えはしない。

 そういう私の考えが、理解できない人もいる。

 読書に求めているものがちがうのだろう。


 読書は尊く、マンガやゲームはそれに劣る、という人がまだいる。

 何でも読書は、マンガやゲームに比べて、想像力を養うのに良いらしい。

 正直、理屈がよくわからないし、時間をかけてまで知りたい話ではない。

 ただ、その説が正しいのならば、疑問が一つ浮かんでくる。

 本をよく読み、想像力が豊かな世代の営みの結果が、今の社会なのか。

 顔を左右に振り、世の様を見るに、読書は想像力を鍛えはしないようだ。

 もしくは、いまの老人たちは、あまり本を読んでこなかったのか。


 個人的には、凡人の想像力などは、高が知れていて当てにならないと思う。

 文字だけで豊かな世界を脳内に作れている読者など、どれだけいるのだろうか。

 ゲームで例えれば、想像力のある人ならば、ファミコンのドラクエで十分だろう。

 しかし、凡人は、プレステ5で具体的な物語世界を示してもらった方が……。

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