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バハムートが指を鳴らす。すると男の触手全てに小爆発が発生して撃ち落される。

もう一度鳴らすと、本体である男に対して広範囲の爆発が起こり、食らった男が悲痛な叫びをあげる。

「こ、これは一体どういうことなのだ…。この力は一体…なんなのだ!」

「下級魔族である貴様には決して分からぬだろうな」

「か、下級だと…この私が下級なわけがないだろう!貴様のような小娘ごときに私のような崇高な存在を分かるわけない!」

「小娘か……我を理解することすら叶わない存在が崇高なわけなかろうて」

「なんだと!」

互いが互いを挑発しあう、まさに一触即発のこの状況下で前線にいることの危険性を察知した幼馴染が僕の隣に戻ってくる。

「ね、ねぇ。彼女は何者なの?それにさっきの名前って…」

「彼女が僕の切り札。伝説の龍…だと思った者…かな?」

「えぇ!?じゃあ彼女が本で読んだあの…」

「ふっ、こちらの小娘のほうがまだ物分かりがよさそうじゃの。それに比べて相手のなんと幼稚なことか」

おおげさに両手を上げて首を横に振る。それに対して男はこめかみに血管を浮かび上がらせて悔しそうにしている。

「我が主殿がわざわざ名前まで呼んでくれたのにも関わらず、気付く事すら出来んとはな。いや、気付きたくない…といったところかのぅ」

「知ったような口を……貴様がバハムートだったとしてそれがどうしたというのだ!私に勝つことなど!」

「ほ、気付いていながら慢心とはのぅ。よほどの自信家か、阿呆か。貴様はどちらかの」

「ほざいていろ!この力の前に誰も敵うわけがない!」

身体から再び触手を生やし、その触手で全方位から攻撃してくる。だが攻撃は魔障壁で防がれ、先ほどと同じ小爆発で触手を全て迎撃する。

「たわけが。その程度で我が狼狽えるはずなかろうて」

「こ、この小娘がぁぁぁ!」

「小娘、小娘と馬鹿の一つ覚えにもほどがあろうて」

「き、キサマラァァァ!殺す…コロス!」

凄まじい殺意を放つとその場に踞り、男の身体に黒い霧が集まっていく。そして霧を身体に取り込みながら変形させてゆく。腕が四本追加、身体が周りの建物より大きくなり、角と牙が生え、人の姿を失ったその見た目はまさに悪魔や怪物と言える存在に変わる。

「ふむ、大きければ良いと言うわけではないがのぅ…」

「コロス…コロスゥ!」

「知性まで失ったようじゃの」

「そんな悠長に構えてる場合じゃないだろ!どうすんだ、あれ!」

「かか、なに心配しなくとも手はある。そこな小娘。名は…ソフィアじゃったかの?」

「は、はい!」

突然名前を呼ばれたソフィアは、背筋をピンと伸ばして気を付けの姿勢をとる

「主も契約しておろう。海神とな」

「え?あ、はい!」

「呼び出してみせよ。今なら出来るじゃろうて」

言われたことをあまり理解できなかったのかキョトンとするソフィア。

「なんだかよく分からないけど、頑張ってソフィアさん!」

「っ……はい!任せてください!」

「かか、初々しいのぅ。では喚べるまで間の前座を努めさせてもらおうかの」

怪物が動く前に足元に小爆発を大量に起こし、足を消し飛ばす。足を破壊された怪物はバランスを崩し転倒する。すぐさま足を修復して立ち上がろうとするが、地についた手を狙い小爆発を起こすことにより、再び地に転がす。そしてバハムートはまるでおもちゃのように部位を直した怪物の部位を壊すことを児戯のように繰り返す。

しかし幾度も繰り返せば相手も理解をするわけで、修復と同時に攻撃をしてくるようになる。さすがに迎撃をしながら攻撃をするのは難しいようで、最初は避けながら攻撃をしていたが、迎撃に手を割き始めたころから怪物を転がすことも難しくなり、徐々に劣勢に立たされる。

「ちょ…、このままだとまずいんじゃないか?」

「なぁに、心配する程度でもないぞ。それにこちらの勝ちは確定じゃしのぅ」


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WayBackStory 天風春雷 @iguzex

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