理想と当たり前の現実

 さて、ゲームシステムの設計を考える段になって、私の目にはもはや”アイテム”も”モンスター”もとうぜん"人間"とそれに類する全てのものが同じに見えていましたので、分類別にパラメータを固定することができませんでした。

 ですが、アクションとリアクションがあるのは確実でしたので(でなければそこにあるという点にしか存在意味がない)、しかしパラメータが固定されない機能の実装を考えると、そんなものスクリプトしかない、となってしまいます。

 ということで、パラメータを自由に追加・継承・削除できるパラメータ管理機能とそれらを処理するスクリプト機能及びそれらを必要に合わせて呼び出すリスナーが必要だと判断し、恐ろしく大雑把な仕組みが構築されて行きます。

 これはそれなりに面倒な話で、スクリプトに至っては言語仕様から考える羽目になります。

 といっても、当時のネットワーク環境は恐ろしく鈍重でしたので、そんな環境なのでリアルタイムこそ諦めるものの、しかし今で言うMMORPGシステムみたいなものを作ろうなどと考えた結果、当然のことながらテキストオンリーで考えるしかなく、画面に出すのはパラメータを必要形式に変換するテキストプリプロセッサを通して整形されたテキストになります。

 スクリプトはそのテキストプリプロセッサを拡張する形で必要に流されるように実装されました。

 結果、何をするにもスクリプトが呼ばれるシステムが出来上がり、しかもパラメータも増やしたい放題となるのでした(スクリプトがパラメータなのでパラメータの中にパラメータが存在し得る)。


 ここまで来るともう好き放題となります。

 思い浮かんだ意地悪機能を入れ放題でした。ただ、データを作るのがあまりにも手間だったので、すぐに力尽きることになるのですが……。

 このシステムは当時私が運営していた無料の草の根BBSに組み込まれ、恐ろしく少なかった会員さんを実験台にして研究されました。

 しかし、彼らが誰もが”主人公”になりたがっていることを知り、私は絶望します。

 彼らはPCの中に創られた世界(データベース)の一部でしか無いと思っていた私としては、そんなもの心の中だけで想ってと思うのでした。

 いえ、すでに申した通り、単に私が主人公をセッティングする為のデータ作成に力尽きたなのですが。


 今から思えば”クエスト”とかあれば良かったのかな、とか思います。

 それなら、その中では"主人公"になれるのでしょう。

 ってそんな訳がありません。そんなもの今度はクエストを作るのに力尽きてしまいます。


 このシステムの場合、なんでもできるようにした結果、データの用意で挫ける結果に終わるのですが、考えるまでもなくどのような行動を執るか分からないプレイヤーのために、予めそれが制限のためであれデータを用意しておくこと、これはゲームを作る上で避けては通れない部分なのでしょう。ゲーム制作はこの部分だけで手一杯になるのです(無論、そこに至るまでの部分も概ね省略できませんが)。

 当然のことながら、これらを作ると今度はテストも必要になりますから、コストは雪だるま式に膨らんでいきます。

 組み合わせが増えると、末広がりにコストが膨らむ図式が生まれます。

 まあ、真っ当なゲーム開発者はそれを想定してそもそも制限を意識した仕様を組み立てるのですけども。

 ここで書いた私の作ったシステムは忘れて貰って、ゲーム開発ではゲーマーを自然に騙して(あるいは納得させて)満足して貰える仕組みを考えられるプランナーが優秀な(それとも当たり前の)プランナーなのだと思います。

 金を掛けたら良いものが作れると考えるプランナーが駄目なプランナーです(夢のプランニングは個人的にお願いします……)。

 お金を掛けるか掛けないかの判断はプロデューサー辺りに任せましょうよ。


 それにしても、そんな大変な制限の中で苦労をしていることに気付いてくれているゲーマーばかりなら幸せなのですが、好き勝手に文句を言いますよね、彼ら(私もですけども)。

 それでもデペロッパーは、限界ぎりぎりの努力をしているものです。

 それに引き換え、私が最近見た小説家希望の人たちの逃げ腰さ加減は、なんといいますか少し悲しいものがありました。

 勝手ながら、本当に苦労と努力をして何かを作ることを経験(もしくはそれを見る経験でも)していない人たちに見えてしまいました。

 非常に残念でした。

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