第14話 魔法適性


 今俺達は朝食を食べている。


時刻は大体6時半から7時の間と言ったところだ。後、ここはどうやらヨーロッパはイギリス、その首都ロンドンのようだ。ふと気になって起きた時にスクリーンを出して、現在位置を見ると『倫敦』と表示されたからだ。


 あの時はビックリしたなぁ…


ちなみに『ネウトゥラ自治区』は元々は『日本』と呼ばれていた島国だ。


 軽い雑談を交わしながら朝食を取っているとバタンと扉を開けてユルグが部屋に入ってきた。ユルグの手には昨日も見た裏表紙の無い書を持っていた。


「おはよう皆さん。今日は皆さんの『魔法適性』を調べようと思っております。では、今は告知だけですのでゆっくりと朝食をお楽しみ下さい」ユルグはそう言うと部屋を出ていった。


「ユルグさんって何であんなに物腰低いのかな」大森さんがふと呟く。


「さあね?」虹咬さんが肩をすくめる。


「誰にでもああやって接してるのかも知れないわね」子守さんが食べる手を止めて口にした。


「それが1番可能性としては高いと想うわね」麻宮さんも同意する。


 確かにユルグの見た目は完全に英国紳士然とした姿なんだよなぁ。


ユルグはいつもパリッとした黒のスーツ姿だ。


「とりあえず早く食べて準備した方がいいと思いますけどね」俺は朝食を食べ終えて席を立ち、椅子を元に戻し扉に向かった。


「それもそうね」子守さんも食べ終えたのか席を立ち部屋を出るために歩き出した。


気が付くと俺の後ろには亜沙ちゃんが付いてきていた。


「俺達は先に部屋で軽く準備してきます」俺はそう言い残すと自室に向かった。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 コンコンとリズムよく扉を叩かれる。


 椅子に座りボーッとしていた俺は「はーい」と間抜けな返事をしながら扉を開ける。するとそこにはメイド服を着た茶髪の女性が立っていた。


「緋野様、狼神様、ユルグ様がお呼びです。部屋までお連れいたしますので付いてきてください」茶髪メイドさんは頭を下げた。


「あ、分かりました。少し待ってください」俺はメイドさんに待つように言ってから部屋の中に戻り、ベッドで寝ていた亜沙ちゃんを起こす。


「亜沙ちゃん、呼ばれたから起きて」声をかけながら亜沙ちゃんの肩あたりを優しく叩く。


「ん…うみゅ?」しばらく叩いているとそんな言葉?と共に亜沙ちゃんが目を覚ました。


「あ、おはよ亜沙ちゃん。ユルグが呼んでるから行こうか」俺は笑顔を作って亜沙ちゃんに手を伸ばす。


「う…ん…」亜沙ちゃんは目を擦りながら俺の手を取って立ち上がる。ちなみに亜沙ちゃんは寝間着ではなく視信さんに貰った服を着ている。


「よし、行こうか」俺はそのまま亜沙ちゃんの手を握ったまま、部屋を出た。


「すいません、お待たせしました」


「ごめん…な…さい…」俺と亜沙ちゃんは待たせてしまったメイドさんに頭を下げた。


「頭を下げないで下さい。私も待つのは慣れていますし、待つと言うほど待っていません。では、付いてきてください」メイドさんは俺と亜沙ちゃんが頭を上げるのをまって、歩き出した。


俺と亜沙ちゃんはメイドさんについて行き、ある部屋に入った。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 部屋には虹咬さんや子守さん、8人が既にいた。どうやら俺と亜沙ちゃんが最後だったようだ。


 良くある講堂みたいな部屋だな。


俺は部屋を見渡す。扉から下の方へ向かって長い連なった椅子が円を描くように広がっている。


 これをなんて言ったかな…んー思い出せないなぁ。


一番下、と言ってもそこまで下ではないには教卓のような物が置いてある。


そして、


「こんにちは皆さん、それでは魔法適性について話しましょうか」何処からかユルグが姿を現し、教卓の前に立つ。右手にはもちろん書を持っている。


「さぁ皆さん、遠慮せず適当に座ってください。少し長い話になりますからね」


俺達はユルグに促され各々近場の椅子に座る。俺と亜沙ちゃんは入口のすぐそばの椅子に座った。


「では、始めましょうか」するとユルグの手に五つの光る珠が出現する。五つの珠はそれぞれ『紅』『蒼』『翠』『白』『黒』にそれぞれ光っている。


「魔法には『火』『水』『風』『光』『闇』以上、5つの属性かあります。魔法を持つもの、いわゆる『マリフィツァ連邦』住民の中でも最初に挙げた3つ、『火』『水』『風』が大多数をしめます。『光』『闇』は『マリフィツァ』連邦内でも少数、数百人程度です。最近は言われていませんが昔はこんなことを言われてそうですよ《『闇』を持つものそれ即ち【破滅】の宿主なり》と。そのせいで『闇』属性の人は忌み嫌わられるていたそうです」


ユルグの手の上の珠がユルグの説明に反応して跳ねる。どうやら『紅』が『火』、『蒼』が『水』、『翠』が『風』、『白』が『光』、『黒』が『闇』を表しているようだ。


「逆に『光』の属性を持つものは《『光』を持つ者世界を【繁栄】へと導く》と言い伝えられてますね。おっと失礼、話が逸れましたね。魔法適性は基本的に1人に1つですが、稀に適正が高いと2つ以上の属性を持つ場合もあります。また、練度が上がれば魔法も発展していきます。こんなふうにね」


ユルグの手の中の『翠』の珠以外が喪失し『翠』の珠が黄金を纏い始める。


「『風』の属性は練度が上がると『雷(イカヅチ)』に変化させることができるようになります。まあ、これはあくまでも例ですから他にもバリエーションは多々ありますが」するとユルグは手の中の『黄金を纏った翠の珠』を消した。


「ところで、私が何故あなた達を呼んだか、気になりませんか?」


ユルグは改まった口調で俺達に問うた。


 それは誰もがずっと引っかかっていた事だ。ランダムに選ばれたと言えば済む話ではあるが、ここにいる10人、無いしは8人は何処か思考の奥底で疑問に思っていた。


「その疑問にここで答えましょう。何故私があなた達を呼んだか、それはあなた達の魔法適性が非常に高いからです。魔法適性が高ければ例え1つしか適正がなくともそれは常人の適正を超えます。さらに、適正が高いのですから、2つ以上属性を持っている場合も高い、これが私があなた達を呼んだ理由です」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

対なる契約者の代理戦争(ストルゥグレ) 川崎厚未 @Afkpwg_1759

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ