巡り合わせのように

 少し前に一度この作品を読んだことがある。
 勝手なことながら何年か前に書こうとして断念した小説のことを、この作品のタイトルやフレーズから想起した。だからというわけではないが、何かバイアスのようなものがかかっているように感じられて、私はまた別の作品のところまで泳いでいった。

 それから今、もう一度この作品を読んだ。
 残念ながら私には詩というものを理解する素養はないが(あるいは理解するものではなく感情で捉えるのが正しいのかもしれない)、素直に良いと思えた。以前と同じように形に成らずに死に絶えていった作品のことを思い出しもしたが、それを度外視しても良いと思えた。
 やはり私にはこの作品のどこが良いかというのは説明しづらい。ただ、小さなところに焦点を合わせても素敵と思えるし、大きなところに焦点を合わせても面白いと思える。そうした度量の広さが心地良いのかもしれない。

 再びここへ戻ってきたのは、一種の巡り合わせのようなものかもしれない。
 そのような錯覚をさせられるくらい、引力の強い作品だと思う。