終の精霊の、その名は何ぞや?

谺響

第1話 

その昔、一人の旅人ありけり。

旅人、その旅路の果てに五人の精霊に出会いけり。

それぞれに、何を為す者かと問い訊ねけり。

はじめの精霊の答えて曰く、


「我は主の傍らに立ち、天を支える者也」


と。

次の精霊の答えて曰く、


「我は戸口に相対面あいたいめんし、家を護る者也」


と。

次の精霊の答えて曰く、


「我は方々の何処いずくにもあり、やがて町と成る者也」


と。

次の精霊の答えて曰く、


「我は秋と共に来たりて、収穫を得る者也」


と。

終の精霊の答えて曰く、


「我は流浪する身なれば、共にあるべき者はなく、何を為す者でもない」


と。

旅人、涙して曰く、


「我もまた伴侶を持たざる也。否、寄り添う者は多くあれど、その時には己が身は保てじ」


と。




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