古時計分裂

烏合の卵

古時計分裂

 オギャー!


 おじいさんの生まれた朝に、大きくてピカピカの柱時計が家にやってきました。

 ボーン、ボーン。幼いおじいさんは時計の音を聞くと、どんなに泣いている時でもピタリと泣き止み、ケラケラ笑顔になりました。


 おじいさんは時計が大好きだったのです。


 次の年、おじいさんが1歳になった誕生日の事です。おじいさんのパパとママはとてもビックリ! なんと大きな時計は2つになっていたのです!

 最初は誰かのドッキリかと疑いましたが、いくら調べてもそんなイタズラをするお茶目な犯人は見つかりませんでした。

 さらに奇妙な事に2つの時計は瓜二つ、木目までコピーしたように同じでした。おじいさんは2倍に増えた時計のベルに大喜び。

 時計はチックタック、お爺さんはキャッキャキャッキャ、家は賑やかになりました。


 次の年、おじいさんが2歳になった誕生日、時計は4つに増えました。これにはみんなビックリ! おじいさんのパパとママは密かに誓います。


『来年こそはこんな手の込んだイタズラをした犯人を絶対見つけてやろう』


 翌年の夜中、パパは目を血走らせて時計を見張りました。そしてパパはまたまたびっくり!

 ボーン、ボーン、なんと時計は0時の鐘が鳴ると同時に、ひとりでに8つに分裂したのです。それを見たパパは大喜び!


「この時計を売ればすごい金になるじゃないか! こいつは一財産だ! ヒャッホー!」


 おじいさんも時計が増えて嬉しそう。時計のベルはおじいさんをいつも笑顔にします。


 おじいさんにはもう一つ大好きなものがありました。それはおじいさんの祖母、『コンピューターおばあちゃん』です。おじいさんが愉快に話す時計のお話に、おばあちゃんはいつもニコニコ。でもひそかに不安を感じていました。


(そいつはちょっと……やべぇ代物じゃないかね?)


 コンピューターおばあちゃんは『危ないから燃やしてしまえ』と警告したのですが、パパは一向聞きません。


「こいつは俺たちが幸せに暮らすために必要なものだ。俺たちには幸せを追求する権利がある! 人間らしく暮らす権利が! 憲法で保障された権利がッ!」


 それから5年間、パパは近所に怪しまれないよう時計をずっと納屋に保管して増やしました。でも納屋はすぐにパンパン、屋根裏部屋まで使っても入りきりません。時計は256個にも増えているのです。ギシギシ言う床や柱に、ママも不満を言いました。


「あなた、もう売りましょうよ。これだけ売れば十分だわ」

「いや駄目だ! こいつは売った先でも増えるに違いない。そしたら市場価値はどんどん下がって値崩れを起こす。しばらくはこの独占状態を続けるんだ」


 それからというもの、パパは借金までして納屋を増築。自分で地下道を掘ったりして出来るだけたくさんの時計を抱え込みました。10歳になったおじいさんも次第に金の亡者へと変容していくパパに恐怖を覚え、おばあちゃんに相談します。


「パパの目が怖いんだ。まるで何かに怯えているみたい、取り憑かれたみたい」

「心配するでねぇよ。時計だっていつまでも増える訳じゃあるまいて。もう少しの辛抱さ」


 いつも優しいおばあちゃんのしわくちゃの笑顔に、おじいさんの恐怖心も吹き飛んで、ヒマワリみたいな笑顔になります。だけどこの時、コンピューターおばあちゃんだけは真の懸念材料を見極めていました。


(もしこのまま衰えずに増え続けたら……)


 そんな不安ともおさらばする日がついにやってきました!

 さすがにパパも4096個もの時計を置くスペースがなくなり、市場に放つ決意をしたのです。


「一個10万円として4億円だ。これでもう木こりや大工なんかしなくて済むぜ!」

「あなた、素敵!」


 時計は当初15万円前後で売れたものの、次第に値崩れを起こし最終的には5万円くらいになってしまいました。それでも見積もり通り4億円を超える利益を手にしたのです。

 12歳になったおじいさんは、これからの養育費に事欠く心配は無くなった……かに思われました。


「あなた、ちょっとお酒飲みすぎじゃありませんか?」

「うるせぇ! 誰のおかげでこんな生活が出来ると思ってんだ!!」

「キャアッ!」

 

 ガシャーン!


 その日からパパは変わりました。働かず、昼間っからお酒を飲んでは遊び歩き、しまいにはママ以外の女の人に手を出す様になったのです。全てはお金が招いた悲劇でした。

 人間精密コンピューターと呼ばれるおばあちゃんも、これは予想が付かなかったみたいです。


「金があんなにも人間を変えてしまうとはの……学問をひた走るめくらには見えんかった。あんただけは素直な子に育っておくれ」

「うん!」


 離婚問題に発展するのは時間の問題、自明の理でした。チックタック、時計の針は進みます。


「もう耐えられません。わたし、この家を出て行きます! この子はわたし一人で育てます!」

「好きにしぃや。ただし金はやらんぞー。おい小僧! 金と女、どっちがええか選びな」


 15歳になったおじいさんには夢がありました。それは祖母みたいなスーパーサイエンティスト、つまりコンピューターおじいさんになることです!


「俺、おばあちゃんと生きてくよ」


 それからというもの、おじいさんはおばあちゃんの研究所でアルバイトをしながら勉学に励みました。

 しかしおじいさんは馬鹿でした。どれくらい馬鹿かというと、18歳になっても時計の文字盤が読めないのです。そんなおじいさんの手取り足取り、おばあちゃんは懇切丁寧に勉強を教えてあげました。馬鹿な子ほど可愛いのです。


 そして20歳の誕生日、世界中がそのニュースに震撼しました。壊しても元どおりになって増え続ける恐怖の時計、その数およそ100万個が世界中に散らばっているというのです。


「やれやれ、ついにこの日がきてしまったようじゃのう」

「ばあちゃん、これは俺の責任だ。どうすればいい?」


 そんなおじいさんの肩を、細くて暖かい手が撫でます。


「あんたは自分の幸せだけを願って生きればええのじゃ、ありゃあんたの責任と違う」

「パパが自分たちの幸せだけを求めた結果がコレじゃないか! 俺は人の幸せのために生きたいんだ!」

 

 おばあちゃんはおじいさんをギュッと抱きしめました。気がつけば、身長も体重もずいぶん逆転しています。


「あたしはアンタに生きて欲しい。それだけじゃ。それがあたしの幸せ……」

「ばあちゃん……」


 可愛い孫のために、おばあちゃんは密かに決意します。


(必ずこの子を守ってみせる)

 

 それからというもの、おばあちゃんの研究所では古時計撲滅計画が本格的に始動……一方、おばあちゃんの願いを叶えるため、おじいさんは自由気まま、本能の赴くままに筋トレを始めました。


「プロテインうめぇー!」


 おじいさんは馬鹿でした。ハードなウェイトトレーニングに励み、定職にも付かず、ゴールドジムに通い詰めるうちに10年が過ぎ去ってしまいました。

 ざっくり言うと時計は10年で千倍の数に膨れ上がります。闇金融もびっくり、たった1個だった時計はこの30年で10億個以上に増殖したのです。

 ネコも杓子も時計が読めるようになったこのご時勢、おじいさんは文字盤を読むどころか知能が退化、ステロイドを常用。インテリジェンスを捨て、ストレングスへと突き進みます。


「あんた、フランケンシュタインにでもなるつもりかい?」

「……俺の理想像だ」


 おじいさんが地上最強の生物になった34年目、時計は人類の人口を超え、そこらに生えている木や、捨てられたゴミと同じ扱いになりました。もはや時計が無い場所なんかありません。チックタック、世界中で正確な同じ時間を刻んでくれます。


 『時計標準時間』の誕生です。


 この世界に『その他の時計』は必要なくなりました。腕時計なんか誰もしていません。時計と言えばおじいさんの柱時計。道端に、海に、部屋に、ありとあらゆる場所に捨て置かれた柱時計が指し示す時刻に他なりません。

 そしておじいさん40歳の日、ついにおばあちゃん率いるコンピューター&地球連合は持ちうる全ての戦力を投入して時計との最終戦争に乗り出します。


 長く激しい戦いが続きました。


 しかし時計は焼こうが燃やそうが火を放とうが時間が経てば元どおり。戦火の果て、ついにコンピューターおばあちゃんは敗れ、そして死にました……寿命です。享年97歳、大往生です。


「ばあちゃんッ!!」

「あんたよくお聞きぃ……地球はもうすぐヤバい」

「一体何がやばいってんだ、ばあちゃん!?」

「それを説明している時間は無いんじゃ……これでお逃げ」


 就活も婚活も自活もせず、のうのうと生き延びたおじいさんの手を強く握りしめて渡したのは黒いカードキーでした。それは人類最後の希望、ノアの箱船、地球から脱出する宇宙船のカードキーです。


「生まれ変わったら……またあんたのばあちゃんになりたいな」

「ばあちゃん! 約束するよ、俺またばあちゃんの孫になってみせる! 何度繰り返す事になっても、必ずばあちゃんに養ってもらう!」


 おばあちゃんは安らかに、笑って息を引き取りました。


 そして42年目の事です。時計が地球に深刻な影響を与え始めました。生態系へのダメージです。時計を媒介とするバクテリアや菌類は大繁殖を遂げ、それを餌とする生物が爆発的に増え始めます。特に海に漂う時計の影響は深刻でした。

 43年目には海洋の3分の1を時計が覆い、赤潮が大量発生したのです。が、そんなものは次の年にどうでもよくなりました。次の年には海面のほとんどを時計が覆っているのです。


『時計星』の誕生です。


 次の年、時計が星を覆い尽くしました。地表は激しく温暖化、海中は酸欠、地獄の始まりです。宇宙では筋力が衰えるため、おじいさんはずっと地球に固執してトレーニングを続けていましたが、ここに至ってようやく地球との決別を覚悟します。


「行くか」


 乗り込んだ宇宙船の中、おじいさんは懐かしいおばあちゃんの笑顔、人口知能のホログラフィーに出会いました。


『元気にしとるかえ? これを聞くとき、おそらくあたしゃもう死んでるだろう』

「……ばあちゃん」

『でも安心しな、あんたはなんにも心配せんでえぇ。ただ逃げるだけでええんじゃ。自動で火星の秘密基地に着くようにしてある』


 おじいさんは一目散で火星へと飛びました。しかし火星は誤ったテラフォーミングのせいで、どう考えても生存競争に向かない巨大なゴキブリだらけになっていたのです。しかもそいつらは理解不能なスピードとパワー、それに獰猛さを兼ね備えています。

 

 しかし、おじいさんは嬉々としてその真っ只中へ飛びこみました。


「やっと分かった。ここが俺の戦闘郷ユートピア……」


 おじいさん、齢50を過ぎて完全に羽化します。気がつけばオリンポス山の高さまで黒い屍を積み上げ、地上最強の生物は銀河系最強の生物になっていました。


「ゴキブリうめぇー!」


 おじいさん60歳、黒い第二オリンポス山の頂上、ひっそり星空を眺めるのだけが楽しみになりました。視力53万のおじいさんアイをもってすれば、未だ地球に増え続ける時計の針まで見えます。それはもう地球というより時計の塊でした。


 けれども、おじいさんはいつまで経っても文字盤が読めません。


 その頃になると地球はほぼ壊滅状態、時計が地球を覆ってから5年以上経っているのです。生き残った数少ない人類は灼熱地獄と化した地表を捨てて海中と地中に暮らしていましたが、食糧が尽き、争い、共食いまでした末に死に絶えました。おじいさんはそれを悲しい目で見届けます。


「人類とはなんと愚かで、儚い生き物じゃろうか……」


 おじいさんはひとりぼっち、人類最後の生き残りです。地球上にもう生物は見えません。深い海と深い地中の原初的な生命しか生存していないのです。

 70歳を過ぎた時、孤独なおじいさんはある事に気がつきました。地球が遠ざかっているのです。万有引力に従い、膨れ上がった時計が地球を引っ張り、近くにある重い星、太陽へと誘うのです。


「あれがワシの育った星の最期……ばあちゃんと暮らした故郷の最期か」


 仲良く回っていた釣り合いがあっけなく壊れると、地球が太陽に飲まれるまで二年と掛かりませんでした。おじいさんはそれを見届けます。


「これですべてが終わった……わし一人だけ生き延びても意味がない」


 おじいさんは永い永い眠りに就こうとしました。しかしコンピューターおばあちゃんのコンピューター、つまりはおばあちゃんコンピューターに叩き起こされます。


『これ、まだ死んじゃいかん。起きろ! アンタにはまだやる事が残っとる』

「やる事!?」

『もしかしたら時計の増殖はまだ終わっとらんかもしれん。あんたがそれを観測するんじゃ!』


 言われるがまま、おじいさんは20年ほどのコールドスリープにつきました。数えて90歳をとうに過ぎましたが、まだまだ肉体はピンピンしています。


「なんじゃこりゃあーー!?」


 緊急警報に目を醒ましたおじいさんがビックリするのも当然です。太陽が何倍にも巨大に燃え上がって見えるのです。


『やはりか熱や核融合ごときでは死なんか……火星も随分引き寄せられておる』

「ばあちゃん、これはいつまで続くんじゃ?」

『分からん……ブラックホール化して終わるのか……あるいは宇宙の終焉までか』

「わしゃあどうすればええんじゃあ?」

『とにかく今は宇宙船を改造して逃げるしかない。あんただけが最後の希望なんじゃ、諦めたらそこで試合終了だよ!』


 水星も金星もすでに太陽に飲み込まれています。おじいさんは逃げました。木星で一度、太陽で一度、土星で一度スイングバイして逃げました。太陽スイングバイはとっても熱かったのですが、おじいさんは根性で耐えました。改造した宇宙船も気合で頑張ってくれます。

 太陽が突如姿を消したのはその3年後の事でした。


 『ブラック時計』の誕生です。

 

 時計は自らの重さに押し潰されて、宇宙の理から剥離してしまいました。もうそこで何が起こっているのか、事象平面の外側からは観測できません。あるいは宇宙の外かも、もしかしたらミクロかもマクロかも分からない別世界。おじいさんアイをもってしても、もうそれが時計だったのか、分裂しているのか分かりません。


 それでもおじいさんはおばあちゃんの言いつけを守り、太陽系を振り切って、天の川銀河からの脱出を目指し、コールドスリープでとにかく逃げられるところまで逃げました。

 30年後にプロテインが飲みたくなって目覚めると、もう太陽系はありません。代わりに円盤状の小さな塊が見えました。その中心から円盤の軸方向に無数の時計を超高速で吹き出しています。


 『時計銀河』の誕生です。


 時計は小さな銀河になりました。来年は普通の銀河に、再来年は大きな銀河に成長するでしょう。おじいさんはもう逃げられません。おじいさんが逃げる宇宙船の力よりも、時計銀河の膨張と重力の方が強くなってしまったのです。


「もうだめじゃ、ばあちゃんコンピューター。わしはもう疲れたよ」

『諦めたらそこで試合終了だよ!』

「それにあんたはやっぱり本物のばあちゃんじゃない。一人寂しく生きたって……たった一人で銀河に立ち向かおうなんて、無謀だったんじゃ」

『諦めたらそこで試合終了だよ!』


 おばあちゃんコンピューターはとうの昔に壊れていました。もうこれしか言いません。おじいさんにはもう喋る相手がいません。それでもおばあちゃんの懐かしい声だけが生きる力でした。


 おじいさんはおばあちゃんが大好きだったのです。


「やるだけやってみるかの……」


 おじいさんは宇宙服で船外へ出て、青白い銀河を見据えました。


「大好きな時計や、これはお前とわしの生涯を祝う祝砲じゃ」


 おじいさんは火星で極めた超究極奥義、カメハメ波を時計銀河に向かって放ちました。


「受け取れいッ!」


 それは人間を遥かに超越した、限りなく神に近い一撃でした。閃光はいくつもの星時計を蒸発させ、数年後には銀河核のブラックホールさえ貫く特異線となるでしょう。しかしその時にはもう手遅れな大きさになっているのです。

 もうこれで全てが終わっても、おじいさんに後悔はありません。やる事は全てやりました。もうすぐ船は加速を止め、時計銀河のどうしようもない力に飲み込まれてしまいます。


 ……ところが、辺りを見ておじいさんはビックリ!

 

 いつも暗くて冷たい外宇宙がなぜか輝いているのです。それだけではありません。時計銀河の方は赤色、進行方向は青色、まるで虹の中を進んでいるみたいに綺麗です。


「これはいったい……?」


 星虹スターボウです。おじいさんの人知を超えた一撃が、偶然にも宇宙船を一気に亜光速まで加速させたのです。しかしおじいさんはそれを走馬灯と勘違い、船内へ戻りました。


 最期は最愛のおばあちゃんの側で死にたかったのです。

 おばあちゃんの声を聞きながら死にたかったのです。


「ばあちゃん見て、宇宙はこんなに明るくて、綺麗だったよ」

『諦めたらそこで試合終了だよ!』


 おじいさんはおばあちゃんが大好きでした。

 おじいさんはおばあちゃんに寄り添って、綺麗な虹をずっと眺めました。


 ……どれくらいの時間が経ったでしょうか。亜光速のおじいさんから見ると、時計の針はものすごく速く進むのです。チックタック、それは時計がものすごい早さで分裂する事を意味しています。


 時計です。


 おじいさんは時計を見ました。しかも逃げているはずなのに進行方向に時計が見えたのです。


 『時計宇宙』の誕生です。


 チックタック、既存の宇宙のエネルギーを超越した時計は宇宙になりました。進行方向は関係ありません。宇宙が時計で時計が宇宙なのです。

 時計が時間を刻むのではありません、時計が時間、あるいはそれに準ずる次元の基底全てを成すのです。


 それでもおじいさんは幸せでした。


 やっとおばあちゃんのところに行けるのです。もう寂しくなんかありません。おじいさんは大好きな時計に笑顔で手を振って、眠りました。


 お別れの時が来たのです。




















 ボーン、ボーン。時計のベルが鳴りました。おじいさんは光に包まれて、目を覚まします。


「ここは……?」

「あたらしい宇宙だよ」


 懐かしい匂い、懐かしい声、懐かしい笑顔。

 そこには温かいおばあちゃん、本物のおばあちゃんがいました。おじいさんは嬉しくて、なんだか笑顔なのに涙があふれてしまいます。


「なんでばあちゃんが?」

「あんたが望んだからさ。あんたが新しい神様になったからだよ」


 そうです。膨大な質量とエネルギーの時計宇宙に吸い込まれる瞬間、おじいさんもまた光速を超え、既存の宇宙から羽ばたいたのです。


 古い神様は待ちわびていました。古い宇宙を突き抜ける新しい神様を。古い宇宙を克服する新しい生命の出現を。


「そんな事言われたって俺、何していいか分かんないよ」

「あんたのしたいようにしたらええんじゃ」


 子供に戻ったおじいさんの頭をおばあちゃんはクシャクシャしました。それは昔とおんなじに温かくて、昔とおんなじにしわくちゃでした。


「俺ばあちゃんと一緒に、幸せに生きたい、のんびり暮らしたい!」

「そうじゃね。あんた馬鹿じゃから。とりあえず時計の読み方でも覚えるか」

「うん!」


 それからおじいさんは、おばあちゃんと二人で幸せに暮らしました。

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