番外編:母との会話


母:

「妹さん、貴女が実家に帰っている間に、ご相談したいことがありましてよ」


私:

「なんでしょう、お母様」


母:

「先月、貴女のお父様が誕生日だったのは、覚えておいでですね?」


私:

「覚えてますわ、お母様。ナチュラルに〝父の日〟と被っていたので、これ幸いとばかり、最寄りの銀行のキャンペーンに乗っかって、花束を贈らせていただきましたわ。お喜びになられて?」


母:

「おそらくは。正直なところ、あの人は感情の喜怒哀楽がイマイチ分かりにくいのだけど、きっと喜んでいたはずでしてよ?」


私:

「よかった。ちなみにその花は、今どちらに?」


母;

「玄関先に活けていたけれど、枯れたので捨ててしまったわ。翌日に差し替えたけど、本人はまったく気がついていた感じで仕事に向かっていったけど」


私:

「ですわよねー」


母:

「ですわよー、それで本題に戻るのだけど、貴女のお父様が誕生日を迎えた際に、わたくしの方からも、何か欲しい物はないかしらかとお尋ねしてみたの」


私:

「お父様、なにか欲しい物がありまして?」


母:

「LINEをやってみたい」


私:

「……はい?」


母:

「なんかねぇ、この前、仕事先の同僚さんが、家族でLINE始めたとか言ってきて、興味持ったみたい」


私:

「……えぇ~……」


母:

「すごく嫌そうな顔しないの。――お母さんの言いたいことは分かるわね?」


私:

「ヤダー。メンドクサイー」


母:

「そういう事言わないの。お兄ちゃんは、いいんじゃねって言ってるのよ」


私:

「アレは一番まっ先に飽きるタイプですわよ、お母さん」


母:

「そうよねー。逆にお父さんは、結構ポチポチと、マイペースに長持ちするタイプよねぇ。気が付いたらスタンプが1000種超えてたみたいな」


私:

「生産性のない会話を毎回チェックするのって、地味にしんどくでイヤー」


母:

「でも登録だけならいいじゃない? 後は適当に放置しつつ、気が向いた時にでも相手してあげたらいいから。最初はお兄ちゃんが適当に会話して、アンタも寝る前に3分だけログ遡ればいいから」


私:

「そういう習慣を付けるのがイヤー」


母:

「もぉ、お父さんの相手を3分するぐらいマシでしょ! お母さんなんて、毎日お父さんのツイート追いかけてるのよ!?」


私:

「えっ、お父さんtwitterやってたの?」


母:

「そうよ! だいたい、お父さんが〝家族でLINEとか、いいね〟とかツイートしてたから、ログ追いかけたらそういう事が分かったんじゃない!」


私:

「お父さん、恥ずかしいな! っていうか、お母さんもなんで、そんなお父さんのログ追いかけてるの」


母:

「ヒマだったから。お父さんのアカウント教えてあげようか?」


私:

「ヒマなら相手してあげなよ。べつにいい」


母:

「アンタねぇ、お母さんも24時間ヒマなわけじゃないのよ。でもたまーにヒマだから、お父さんのツイート追いかけてるだけ。でも便利なこともあるのよ」


私:

「なにが便利なの?」


母:

「この前ね、そろそろカラアゲ食べたい。って呟いてたから、夕飯、唐揚げにしてあげたら、喜んでモリモリ食べてたわよ」


私:

「そうなんだ。じゃあもう、お母さんだけが相手してあげたら、十分じゃない?」


母:

「だからお母さんも、24時間ヒマじゃないんだってば。忙しいのよ」


私:

「だからたまにヒマなんでしょ? ヒマな時にそれだけ相手してあげたら、お父さん十分だと思うよ?」


母:

「アンタ、それはちょっと、さすがにお父さんに言い過ぎよ?」


私:

「そうかなぁ……」



~後日~


私:

「ねぇ、お兄様、私達の両親って、もしかしてすげー仲良いんですの?」


兄:

「そうか? 普通じゃないか?」


私:

「えぇ……もしかして私の感覚がおかしいの……?」


兄:

「うむ。お前は割と、血も涙もないからな」


私:

「さすがにそこまで言われるとは思いませんでしたわ。お兄様」



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