初の戦闘
--
里の外へ行くと、魔物で溢れかえっていた。よく見ると所々負傷者がいる。
「なにこれ....以前より多くなってる....」
そう、リューラが呟いた。パッと見、どこもかしこも気持ちの悪い生き物が蠢いている。この体でこの世界に来た最初の日のモンスタートレインって言うのかな。リューラが連れてきた魔物の数より圧倒的に多い。心なしかあの時より強そうに見える。
魔物達がいる前線では数人組が明らかにおされている。リューラはそれを見て私の手を取り走り出した。
「ちょ、ちょっとリューラさん、いきなり戦闘は無理がありません!?」
「私がサポートするから大丈夫!少しでも魔物の数を減らせればいいから!」
そんなことを言っているうちに前線にたどり着いた。来る途中で、リューラ様が来たなどと聞こえてきたがもしかしたらリューラは凄い人なのかもしれない。走りながらリューラは風魔法を使い、敵を切り倒したりしていた。
前線にいたある数人組のところへリューラは行き、親しげに話している。話しながらも敵を攻撃する手は止めない。
これって....もしかしなくても私いらない子....?
そう思っていたら横から大きな四速歩行の豚とも犬とも言えない気持ちの悪い魔物が飛び出してきた。
「ガヴルルルゥ...」
「いやいやいや、私を食べても美味しくないよ!?」
少し前にいるリューラから
「ごめん!頑張って倒して!何かあったら助けるから!」
と、叫んでいた。
いや....これ....戦闘初心者が倒すような魔物じゃないよな...
かと言って逃げるわけにもいかないし...戦うしかないよな....
今私の両手にはあの本から出てきた黒い鎌がある。武器はこれだけだ。魔法は教わってもいないし、まともなのを使えそうにないから実質この鎌だけが頼りだ。
目の前を見てみる。今にも襲いかかってきそ...う...ちょ、まって心の準備がまだなんだけど!!
そんなことを思っていると魔物がこちらに飛びかかってきた。
私は思わず右で持っていた鎌を思いっきり魔物の方へぶん投げた。
ーグサッ
「あ...れ...?案外弱かった...?」
鎌は魔物の眉間に突き刺さっていた。鎌についていた鎖が邪魔になり攻撃できないかと思ったが、どんな仕組みかはわからないが鎖が伸びているらしい。
鎌の回収をしたいが見事に魔物の眉間に刺さっているので回収しにくい。
だって、気持ち悪いんだもん。いや、魔物の匂いは獣臭いってぐらいだけど気持ち悪いし。なんとなく刺さっていないもう片方の鎌についている鎖を引っ張ってみるとあっさり抜け落ちてちゃんと右手に収まった。
「おーなんかすげー」
手元に戻ってきた鎌を見てみると血が付着した痕跡もない。
リューラ達の方を見てみると見事なチームワークで敵を次々と倒していた。
しかしまぁ、笑っているのは気のせいかな...?
笑いながら魔物倒すって、一体どんな戦闘狂なのよ。
先ほどから魔物を倒していっているが一向に減る気配はない。逆に増えている気がする。
・・・これっていつまで続くの?することなくて暇だなぁ。魔物怖いけど前行ってみよーっと。
「カティ!?何で前来たの!?危ないから後ろにいていいのよ?」
「だって暇すぎて」
「暇って...私たちでさえそこまで余裕ないのにカティに戦わせるわけないじゃない」
と、リューラ。
「そうだよ譲ちゃん。リューラの言うとおりここは俺らに任せて後ろにいておくれ」
リューラの横で両手剣を持って魔物と戦っていたエルフが言う。
「そうよ、ラルドの言うとおりここは危ないから後ろにいてね」
両手剣を持った人はラルドって言うのね。だけどなにもすることないしすごすごと下がるわけにもいかない。
「むー」
「そんなかわいい反応してもだめですわよ。可愛らしい子に怪我をさせてしまったら私の心が痛みますわ」
と杖を持った美人なエルフが言う。
「ノーラの言うとおりだ。僕も後ろにいたほうがいいかな」
手に持った短剣で魔物を切りつけながら長身のエルフが言う。
...どうしても私に戦うなと言うのですね。
いいもん勝手に動くもん。鎌を構え、すぐ目の前にいた二足歩行の魔物に鎌を放った。鎌は魔物の首に刺さり魔物は動きを止め倒れた。一連の動作は流れるように行われ、次々に目に付いた魔物を倒していった。
鎌が魔物に刺さらないなんてことはなく軽々と刺さり、抜ける。切れ味が鈍くなるなんてこともなく逆に切れ味はよくなっている気がする。
「ふっふーん♪」
なんか楽しくなってきた。リューラたちがこちらを見て放心している。
鎌についた鎖を振り回し魔物を次々と倒していく。気がついたら魔物はいなくなっていた。
周囲には大小様々な魔物の死体が転がっている。エルフ達は未だに放心しているようだ。
「ふぃ〜楽しかった〜」
魔物を倒している最中はもはや魔物に対する恐怖心はどこかに消えていた。
あんなに魔物倒したのに魔物の血が服や鎌についていてもおかしくはないが服は濡れてすらいないし、鎌も駆使したのに刃こぼれさえない。一体どんな仕組みなんだろ。
それにしてもおびただしい魔物の数。半数以上を自分で倒したとは思えない。途中人間技とは思えないことをした気がするが....あ、今私人間じゃないや。息切れもしなかったし。さすが神が作った身体だね。ただのロリコン神じゃなかったんだな。
「あっ」
リューラ達のことすっかり忘れてた。
リューラ達はまだ放心しているが他のエルフ達は魔物との戦いで負傷した者を手当したりしているようだ。
「リューラ、魔物いなくなったよ」
「はっ!?」
「もうっ!魔物いなくなったけどどうするの!」
私にそう言われリューラ達は現実に帰ってきたようだ。...さっきまで視線が虚ろだったもんな。
「嬢ちゃん見かけによらず凄いんだな」
「嬢ちゃん言うなしカティだもんっ」
「そうかそうか」
そう大口開けてガバハ笑うラルドさんであった。
ん?なんか視線を感じるなぁ。
リューラがこちらを見ていた。私の持っている鎌をみているみたい。
「持ってみる?」
「うん!」
なんかおもちゃを前にした子供みたいだな。
--
断罪の書 紅黒蝶 @benikokutyo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。断罪の書の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます