17 正しい旅立ち
「ありがたいことにパパとママはお金は残してくれた あの家もママはお金を持ち出そうとしてたけど
取り返したわ 叔父さんもおねいさんの為にお金を残したわ 使うあてもなかったしみんながいなく
れば あの家もここもおねいさんものになる」咲は言った
「どこかに行くつもりなのね」日向は自分の予感が的中したのを感じた
「そうせっかく自由になったし・・・」咲は心持うつむいて言った
「私 走っているとき もう死ぬんじゃないかと思うまで走るときカチッって音がしてしっかりと自
分の中に自分がおさまっていくのを感じた 両親の怒鳴り声で布団をかぶっておびえているだけの自分が
どんどん死んで真ん中の私が出てくるみたいな感じ、回りくどい言い方だけどけどわかるかしら」
日向は猫を抱いたまま言うなづいた 咲の顔は自由で 奔放で 輝いていた
「捜索願を出してほしいの 7年たったら死亡が確認されるわ」
「どうして」日向は泣きそうになって咲を抱きしめた
「もう会えないの」 「いいえすぐ会えるわ ただ叔父さんに効きすぎてしまって」
咲は窓のそばに行った 草むらに背の高い男性がいた 月の光に照らされるとびっくりするほどハンサ
ムだった 長い苦しみのため髪は一部白くなっていたが咲と同じ年くらいに見えた
眼だけが若者にそぐわしくない深みと嵐の過ぎ去ったよう静かな穏やかさをたたえている
(私も知らない 私の生まれる前の叔父さんだわ)日向は思った
「しばらくは連絡が取れるし おねいさんもあとから来たらいいわ冷蔵庫にジャムにしたルビが入ってる
それからしばらくは真ん中の部屋に気を付けて」
「まさか よみがえったりする」聞くと咲は笑った 「しないわ 確かめたもの だけど人に見つから
ないようにしないと・・・・・」
「あなたは叔父さんが好きだったんじゃなかったの 二人きりでいたいでしょう?」
「そうだけど しばったりしないわ 叔父さんはずっとあの椅子に縛り付けられてたんですもの」
咲は言った 咲の顔もどんどん明るくなってこわいほど綺麗だった
「しばらくこの子たちと一緒にいるわ」日向は咲の首に手をまわして引き寄せた
「ありがとう じゃあ行くわ 急にさみしくならないように電話するわ」と笑って窓から軽々とジャンプ
して振り返って手をあげた
叔父さんも手をあげて笑って二人はあっという間に闇に消えた 日向は咲のために喜んだが 多少妬み
もした それから あの部屋には何人の死体があるのかしらと考えていた
(終わり)
ありがとうございました<m(__)m>
叔父さんが外に出られない複雑な事情 のはらきつねごぜん @nohara
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます