幕間 日月浄土抄 護法転身サンシャイン&ムーンライト 終劇編
「終わったぁ――――!!!」
三面鬼神の排除を終えたサンシャインが叫び、ドサリと地面に倒れ込む。時を同じくしてムーンライトも固有の結界維持を停止した。
この結界維持がなければ、三面鬼神の呪詛を抑えきれず、戦いは三面鬼神の勝利に終わっていただろう。
役目を果たし、消えていく結界。周辺一帯から徐々に東方浄土の景色が消え失せていき、本来の交差点付近の光景が戻って来た。
奥義である日天不動拳を放った後、その場に疲れ果てて倒れ込んだサンシャイン。月天菩薩掌終了時に弾き飛ばされて、したたかに地面に身体を撃ち付け、倒れていたムーンライト。
強力して強敵を退けた今、二人とも仲良く交差点に倒れていたい気分だったみたい。
だけど、何時までもその場で地面に倒れている訳にもいかない。
二人のヒーローは、倒れたままの体勢で身体を移動させ、それなりの距離まで近付くと、利き腕を伸ばして互いにサインを出し合った。
やるじゃねえか。信じてたぜ…
…お前もな…
と。
…ちょっと無様だけど、なぜかカッコイイ二人だった。
「…ふうっ…最後の結界の外からの援護…ほとりの野郎か…貸しができちまったな…」
「…ああ…でもまあ、こうして手伝い戦で怪異を倒す手伝いをしてやったんだ…チャラだろ…チャラ…」
「…やれやれ…五億くらい現金で吹っ掛けて、貌を真っ青にしてやろうって考えていたってのによ…計画が泡と消えたぜ…」
「…貸しを作って、ほとりの奴をこちら側に引き込む作戦も、これでパーか………タダ働きってヤツだ…つらいな…」
「ああ…やっば、つれえや………さて!」
「よっ!」
「はっ!」
気合を一発発して立ち上がる二人。
「おっととっ!」
「ほらよっ!」
「すまねえ!」
立ち上がった拍子にめまいを感じ、倒れかかったムーンライトを、サンシャインが手を伸ばして支えた。
「さて、行くか」
「ああ。帰るか」
二人のヒーローは、外装はボロボロだったが走行能力には問題のない鉄の愛馬にフラフラと跨り、アクセルを絞った。
…ドドド…ドドド………キュルル…キュル…ブゥゥゥゥン………ブゥゥゥン……
二台のバイクのエンジン音が、二重奏を奏でる。
変身を解除しないまま、二人はゆっくりと走り出す愛馬に身を任せて、戦場跡から去って行った。
その背後で、滅びた鬼神の身体が変化し、崩れ落ちて重なった灰が、風に吹かれて飛び散っていくのだった。
こうして、水月ほとり君の伝手で強力にやって来てくれたヒーロー、サンシャイン&ムーンライトは、日本の首都の闇の中へと消えていった。
僕、つまり夏を司る四季の女神であるこの筒姫が報告する、国土管理室での攻防の裏で起きていた事件は、これで終了する。
なお、二人の詳しい正体などは、とくに説明する必要を感じないので、そのままとする。
お互いに生きてさえにいれば、御礼を言ったり名乗り合う時もあるだろう。
それまでは、一旦お別れとしておこうと思う。
それじゃあ、この報告を読んでくれたみんな。お別れだ。
機会があったら、また会いましょう。
それじゃあね!
さようなら!
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