幕間 日月浄土抄 護法転身サンシャイン&ムーンライト 激闘編 其の四

 「「「ギュエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!」」」


 三面羅刹鳥が空中で三つの口を拡げ叫び出す。


 ⁉ ⁉


 すると、SFムービーのトラクタービームで引き寄せられるが如く、地上にいた怪物二体の身体がふわりと空宙に浮き上がり、スーッと三面羅刹鳥へと移動していく。


 そこそこ強力な連続技を繰り出し、霊力を大量に消費したサンシャイン&ムーンライトは、変身維持のために小休止中だ。

 そうはさせん! やらせねえ! 

 そう勇ましくカット技を披露し、怪物たちの変化に割って入る余裕はない状況だった。

 今は、ただ敵の変化を眺めること以外、これといって披露できる状態ではなかった。


 ヤバイ流れだ。


 離れた場所から状況の変化を探査していた僕も、これには戦慄を禁じ得ない。



 「…こりゃ、生半なまなかな攻撃じゃどうにもならんね…あれをやるぞムーンライト」


 「…ああ、ありゃ仕方ない。了解だ」


 「5分…いや3分くれ」


 「そりゃキツイな。だが、やらねば未来を切り開くことはできない…だろ?」


 「ああ。そうだ」


 いや、僕の考えは間違っていた。二人は小休止中にも、未来を切り開く次の一手を選び出し、実行に移そうとしていた。


 まるで追い詰められてからが本本とでも言うように。 


 「スーパーフルムーン! 月天菩薩掌準備」


 「朧なるブラックサンよ! 日天不動拳の準備だ!」


 「「ラー・サー! ドッキング解除!」」


 ガギュンッ! キュイイイン! ガシャンッ!


 ブウゥゥン! ブゥン! 


 ラジャーと、イエッサーを、そのように短くして答えた機械の相棒たちは、主たちの命令に従い阿吽仁王モードを解除し、合体を解く。

 そして、脇侍のごとく主の側に位置取りし、新たな指示の準備に取り掛かる。


 「「霊力増幅器、最大始動開始! システム・オールグリーン!」」


 「「おおおおおおおおおおっ!!!」


 自らの内なる力を引き出す二人と、それを増幅する二台。一方は、暖かで柔らかな光。もう一方は、燃えるような灼熱の輝きを発し始める。


 そんな合間にも、融合した怪物三体の姿は、三面六臂の巨人の姿を徐々に形成しつつあった。

 足りないのは、六本の腕にで持っているはずの武具くらいである。


 パッ! キィイイイ―――ンンン!!!


 なんとぉ!


 その時、結界に異変が起きた。


 なんと展開されていた結界を突き破り、天から六種類の武具が降り注いだのだ。


 バシィ! パシッ! ガシッ! パッ! ガッ! ガシィッ!


 怪物から伸びた腕それぞれが、六種類の武具を空中で受け取り、むんずと掴み取る。

  

 すると、どうだろう。


 三面六臂の身体の細部もが見事に整っていき、どこから見ても伝説の三面六臂の鬼神、阿修羅の姿となったではないか。


 「「「フウウウウ………オオオオオオオオオオオオオオオオオオンンン」」」


 三つの顏から三重奏で雄叫びを上げ、得物の武具を振り上げる阿修羅。三面とも憤怒の形相としては、サンシャインとムーンライトを睨み付ける。


 この大怪異、大陸の道士たちの用いる邪術によって都合よく悪鬼の面だけ加付されたためか、身なりは立派だが邪悪さだけが際立っている。

 敵を威圧することに特化した霊威の持ち主であるようだ。


 早速、そんな阿修羅…三面鬼神が、地上の二人と二台へ狙いを定め、次々と巨大な武具を振り回し、打ち下ろしてくる。


 シャキンッ! シャキンッ シャキンッ! シャキンッ! ジャッ! ジャッ!


 グワッ! ズオオオオオオオオオッ!!!!!!


 凶悪さをさらに感じさせる、鋭く恐ろしい連撃だ。


 だが、御仏の使いである二人は、そんな連続攻撃にも動じずに立ち向かう。仏法の教えを体幹に据えて立ち向かう。 

 

 「させるかっ! 月天菩薩掌!」


 フワアァァァァァァァァアアアッ!!! 


 だがやらせぬと、すべての霊力を使用しブーストした極大防御掌を発動させるムーンライト。

 掌の防壁が鋭いチャージ込みの連撃を受け止め、威力を相殺していく。

 

 しかし、見事に御仏の慈悲たるてのひらで、それ等を次々と無効化して見せた月のヒーローであったが、反動で急速に自身の霊力が、命に係わるレベルで消費されていると、傍目からも解った。


 「3分! 持たせてみせるぜ! おおおおおおおおっ!」

 

 「頼んだぜ! 戦友! うおりゃああああああああああっ………」


 ムーンライトの叫びを受け、さらに霊力の増幅に集中するサンシャイン。

 

 だが、言葉通りに時間は限られている! 


 急げサンシャイン!


 「………おおおおおおおおおおっ!」


 「ウォォォオオオオオオオオオオオオオ………!!!」


 一方、三面鬼神も攻撃を妨げられた怒りで叫ぶ!


 そんな怒りに満ちた戦場で、時間が刻一刻と経過していく。

 

 1分経過。

 

 ムーンライトの菩薩掌と、三面鬼神の六連撃は、ここまでは一進一退の攻防を続けていた!

 三面鬼神が数歩押し込むと、ムーンライトが菩薩掌で数歩押し返すといった調子だ!

 その逆も然り!


 2分経過。


 「はあっ! かっ! はあっはあっ! おおおおおおおおおおっ!」

 

 「「「グルォオオオ―――――ムッ………ァァァァァァ………」」」


 一進一退の攻防は続いていた! 


 絶えず自らの霊威を高めて放出し続けることを強いられているムーンライトは、明らかに疲労困憊の色を見せていた。菩薩掌も若干小さくなている。

 一方、体内のパワーが元々段違いに大きい三面鬼神は、その力だけで徐々にムーンライトを押していた。

 さらに呪詛を用いてムーンライトの力を弱めるべく、三つの口での三重奏を開始しようとしていた。


 「「「ァァァァァァ…アアアアオオオオオオオオオオオオオッ!!!」」」


 「くううっ!」


 「ちぃぃっ!」


 全身に新たな重圧を感じ、反撃のための時間稼ぎと、パワーチャージの溜めをしていた二人が、苦しみと舌打ちを混ぜ合わせた声を上げた。

 それでも二人のヒーローは、歯を食いしばり必死に耐える。


 「それでもっ! それでも俺はっ!」


 「満たせ…満たせ…満たせ…満たせ………」 


 そして、無慈悲に時間は経過していく――――――――10………9………8………7………6………5………4………3………2………1………



 ついに3分は経過した。

 

 「あとはっ! たのむっ!」


 パキィィィイイイ――――――――――—―――――――ンンンンン!!!!!


 菩薩掌を破られ、三面鬼神の霊威によって後方に吹き飛ぶムーンライトとスーパーフルムーン!


 ババッ! ダンッ!


 一方、サンシャインと朧なるブラックサンは、その場に残り、三面鬼神を待ち受ける。 


 六種の武具を高々と掲げた三面鬼神は、跳び上がって残るサンシャインへと、巨大な肉体を利用した必殺の落下攻撃へと移行する!

 人間の身体をそのまま巨大化したような姿は、この様な攻撃法も可能とする。


 「満ちよ…満ちよ…満ちよ…満ちよ…」


 しかし、いまだサンシャインの日天不動拳には、三面鬼神を打ち倒すに必要な霊威は備わっていなかった。



 ゴウッ!


 そして、落下攻撃が着弾しようとした瞬間!


 シュンッ! シュンシュンシュンシュン!!!! 


 ドガッ! ドガドガドガドガッ!


 またも、結界を突き破ってくる外部からの武具! 


 遥か遠方から放たれた月夜天狗による月影の援護攻撃が、三面鬼神の後背部へと着弾した!


 僕、筒姫と憑依合体した夏月ちゃんによる能力…すなわち音響エコーロケーションデータリンクによって導かれた、月夜天狗による不意打ち攻撃だ!


 ズガッ! ズガッ! ズガッ! ズガッ! ズガッ! ズガッ!


 六種の武具それぞれの一撃が、僅かずつ逸れてサンシャインの周囲に突き刺さる!


 その中心で!


 カッ!


 「…満ちた! ぅおおおおおおおおおおおおお…日天不動拳!!!!!!!!」



 ドッ………シュウゥゥゥゥ―――――――――――ンンンンンンンン!!!!!


 

 バイザーの下の双眸をカッ!と見開き、不動の構えから超必滅の正拳を打ち放つサンシャイン!


 周辺一帯を、打ち放たれた超必滅拳と同時に放出された眩い輝きが満たす!


 果たして――――

 


 ―――シュゥゥゥゥゥ――――――――――――――ゥゥゥゥゥウンン―――

 


 ――――光が消え失せると、そこには日天不動拳を放った態勢ののままのサンシャイン………そして、六種の武具と六臂を吹き飛ばされ、胴体に大穴を開けた

三面鬼神の姿があった。




 ………ザアッ! ザアアアアアアアアアアアアアアアッ……………………………


 

 

 そのままの姿勢から、崩れさっていく三面鬼神の肉体。



 ………間一髪、本当に間一髪のところで、戦いはお見方の勝利で終わったのだった。 

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