幕間 日月浄土抄 護法転身サンシャイン&ムーンライト 激闘編 其の三

 「これで動きやすくなった。お返しをさせてもらうぞ!」


 「油断するなよ!」


 「応ッ!」

 

 結界展開を完了したムーンライトが叫び、地上の怪物一体目掛けて駆け出した。相棒のサンシャインもそれに続く。こちらの狙いはもう一体の地上の怪物だ。


 サンシャインとムーンライトにしてみれば、固有の結界を展開し終えた今、状況はホームに敵を迎えたようなもの。


 ずいぶんと戦いやすくなったことだろう。


 事実、呪詛を受けていた状態とは打って変わり、ムーンライトの動きは鋭かった。


 「ゴオオオオッ」


 「ガアアアアッ」


 「グケエエエエェッ」


 結界に捕らわれた形の怪物二体も、迫るサンシャイン、ムーンライトの姿を捉え、反撃の態勢に入る。上空を飛ぶ猛禽型の三体目も同様だった。


 ブオォォォンッ! ブオォンッ!


 だが、この場に居るのは、太陽と月の戦士と、怪物だけではなかった。朧なるブラックサンと、スーパーフルムーンの二台のマシンも存在していたのである。

 二台は揃って走行し、前面のライトを怪物たちへと向ける。


 カッ! カッ!


 「ギャウッ!」


 「ガルアッ!」


 「ギュエエッ!」


 やはり多面の敵に、目潰し攻撃は有効だった。

 目潰しの光線を浴びた地上の二体は光線を腕で遮り、それができない猛禽飛行型は、たまらず旋回して光線の範囲外へと逃れようとする。

 目が多いことは攻撃で敵を捉えることには有効だが、逆にこうして攻められると弱い。

 一見、強そうな異形の姿には、そんなデメリットが発生するのだ。


 「ェイヤーッ」


 「トアーッ」


 ドゴォッ! ズガンッ!


 「ゲャオオッ」


 「ガルウウゥッ」


 「まだまだ! エヤーッ!」


 「逃がさんぜ! ツアーッ!」 


 ドンッ! ズドォッ! ズザァッ! ズザザザザァッ!

 

 地上の二体に、速度と体重と慣性の法則、そして霊力を上乗せした回し蹴りが炸裂した。だが怪物二体は目潰しを受けても、匂いと野生の感で一撃目を防御するのに成功した。

 しかし、続くサンシャイン、ムーンライトの空中回転の二撃目に対応できるほど、強靭ではなかった。

 それぞれ左右に分断される形で吹き飛ばされる。


 その二体が居た付近を、標的を追って走り抜けていく影。

 

 ブォオオオンッ! ブオオオオオオンッ!


 朧なるブラックサンとスーパーフルムーン。並走する二台だ。


 二台は、主二人のコンビネーション・アタックの成功率を高めるための目潰し攻撃を成功させると、次の命令…すなわち、飛行型の怪物と相対するための準備に入った。

 

 [フォーメーション・シンメトリカル]

 [フォーメーション・シンメトリカル]


 並走していた二台が機械音声で変形開始を周囲に伝え、ドッキングをスタートさせる。


 キュルル…ブィイイイイイインンンッ!


 ガシャンッ! キュイイイイン…ガシィ!  


 バンッ! ガタッ! ガシュンッ! ガシュンッ! トットットッ…ピカァッ!


 ダダンッ!!!

 

 ウィリー走行になった後、二台は座席が合体するように態勢を変更。そうして座席部が合体し、後輪二つが二台分の車体を支えられるようにすると、全輪部…すなわち、人で言うところの上半身となる部分の変形を開始。

 それが終了すると、一旦は露出した機関部が装甲に再び覆われて、最後に後輪部が脚部となり変形を完了した。

 

 [[シンメトリカル・ドッキング! 誕生! 阿吽仁王!!!]]


 ひとつにリンクした機械音声がハーモニクスし、新たな戦士の誕生をアナウンス。そして日本産のカーロボットらしく大見栄を切った。 


 やったあ! カッコイイ!!!


 これはエコーロケーションで状況を探っていた僕もニッコリだ。 


[[トウッ!]]


 そうしたのち、目潰しを嫌って距離を取ろうとした飛行型怪物を追い掛けて疾走する。


 これで両陣営の対決は、三対三のイーブンになった訳だ。


 フィイイイイイイイイイイイインンン…


 合体ヒーローロボの阿吽仁王は、間を置かずに上空の攻撃準備に入る。両腕ホイール部にソー状の霊力カッターを発生させ、幅跳びの要領で跳び上がっていく。


 ブィイイイイインンン!

 

 マフラーを一層響かせて、上空へと跳躍する阿吽仁王。その標的はもちろん、空飛ぶ猛禽の怪物だ。

 阿吽仁王、そして旋回して迎撃しようとする猛禽の怪物の影が、地上で交差した!


 「ギュエエッ!」


 シュパパパパパッ!


 フィイイイイイインンン!

 

 [[八つ裂きホイール・クローズドライーン]]」


 果たして! 


 グラッ! ブオッ…ブォオオオン!


 空中で進路を変えざるを得なかったのは、阿吽仁王であった。一瞬だけ速く、複数の羽カッターが阿吽仁王のボディに突き刺さり、その機動を逸らしたのだ。


 [[まだです]]


 しかし、阿吽仁王にはまだ攻撃の手段が残っていた。両腕のホイールをパージして、ホイールソーサーとして猛禽の怪物に投げ付ける。


ガシュン! バシュン! ガシュン! バシュン!


 バサァッ! スカッ! スカッ!


 だが、一日の長があったのは猛禽の怪物! 人型の阿吽仁王の攻撃は、空中では命中率が低い!


 そう。では!


 「まだだぜ! ホイール・ドッキング!」


 「ホイール・ドッキング!」


 その言葉通り、阿吽仁王と主二人の攻撃には、まだ続きがあった。


 猛禽の怪物に躱されたホイール・ソーサーは進路を変更し、それぞれサンシャインとムーンライトへと近付いて、天に突き上げた右腕にすっぽりと収まった。

 まるで輪投げの輪が的に収まったかのようだった。


 そんな彼等の当然の狙いは、地上で立ち上がったばかりの二体の怪物だ。二人とも追撃を与えようと、すでに敵へと向かっていた。


 「俺たちの連携の凄さを教えてやるぜ!」


 「連携ってのは、こうやるのさ!」


 「「喰らえ! ソウルリング…ホイール・クラッシャー!!!」」


 そのままクローズドライン…すなわち、アックスボンバーの要領で、地上の怪物二体へと追撃を加える。


 ギュアアアアアアアアアアアアアアンンン!!!


 「ギュア…」


 「ゴオオ…」


 ズバババババババッ…………ドンッ!…………ドォンッ1


 これにはさしもの怪物二体もたまらない。両腕でのガードを試みたのだが、ダメージが残っているところへの連続攻撃だ。

 身体を逸らして迫る腕を蹴り上げるなんて、気の利いた防御方法は思い付きはしない。


 霊力の籠ったホイールの回転に両腕を破壊され、ガードを突破されて胸部に大ダメージを受けて吹き飛ばされてしまう。


 「ギュアアッ…」


 「ギュオオオオ…」


 何とかまだ動けるようだが、結界の砂の上の中でのたうつあの様子では、もう肉弾戦は不可能そうだ。

 敵にはまだ、空飛ぶ猛禽型の怪物が残っているが、もう逆転は難しい様に…



 「おのれ! あちらでは撤退したが、せめてこちらでは勝たねばならん! 誌夏シーシア!」


 「解ったわ! 春玲チュンリン姐さん!」



 そこに、虚空から見知らぬ声が響いた。


 僕は、その言動からその正体に思い至った。国土管理室ビルの屋上から逃げていった女道士二人だ。



 「三面羅刹鳥よ! 三面羅刹獣を取り込み、三面鬼神に合体せよ!」



 うわ! まいったなぁ、これは大変なことになりそうだ。 

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