第二首 若草に 混じりて揺れる 紫の 妖しき花の 美しきこと
山桜が左右に連なる山道は、どこか異界染みた美しさ、妖しさを感じる。幽玄な桜舞う土地を一人進む私を、早春の草木たちはどう想っているのだろう?
そんな事を何とは無しに考えながら進む私。
ふと、山桜の向こう側の斜面で、若草に混じって揺れている紫蘭を見付けて足を止めた。
「あら、群生しないで一輪だけなんて珍しいわね。そうね、仲間の処に連れて行ってあげようか。どうする?」
ちょっとだけ足場に気をつけて紫蘭へと近付いた私は、答えが返ってこない事は重々承知の上で、悪戯っぽくそんな質問を、足元の紫蘭に向って投げかけてみた。
ふふふん♪
続け様に、プラントハンターを気取って持ち歩いていた園芸用スコップを鞄から取り出す私。
紫蘭の側にしゃがみ込み、柔らかく湿った大地に得物を突き立てる仕草を見せる。
「駄目よ」
「え?」
突然、背後から投げ掛けられた女性の声。どこか妖しく、艶やかな響きの混じった声色に、私、四季スミレはびっくり仰天して振り返った。
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