第3話 彼の親切で俺は蝶かと蜜を吸う。
あーる晴れたー昼下がりー、異世界迷子の旅人さんはガタゴト馬車に載せられていくよ、と歌わずには居られない昨今。正直日記と言うよりは、エピソード記になっているのが否定できやしない。現代人的日記らしく、実際はあとで時間が出来た時に書いているため、臨場感無いのはその場当たりのいい加減さは許してほしい。
お前メタすぎんだよ、何に書いてんだよ、というのはまぁ聡い読者さんなら思いつくだろう。そうでなきゃ、まぁ悶々とするがいい。
そんな姿をみて愉悦に浸りたいと思っているからな。
さて、俺の今のっている馬車とおっさんと、『そーぞーまほー』について、記録しておこうと思う。
*
まぁ、未来の俺を含む諸君、なんでわざわざ『そーぞーまほー』なんてひらがなで書いているのかという話をしよう。もっとも、各創作小説サイトにてファンタジージャンルをチェックしている幾多の異世界物を読んでいるだろう諸氏においては、そーだろな程度の話ではある。
そーぞーまほーイコール創造魔法などではなかったのである。
*
真昼の空に月が浮かぶ異世界。まぁ、幸い世界のどこからでも見えるような剣が刺さってるだの、空を見上げたら地球があるだの言われないだけいいか、と思いつつ俺が考えたのは言うまでもない。
「腹が、減った」
である。
いつもより遅かった飯、疲れ果ててはいたが味がわかるよに自ら整えたあの、牛丼でを食べ損なった上にである。むかつく営業と同じ笑顔を浮かべた自称神様から送り込まれたものの、結局なんも食べてないのだ。
おそらく日本でもっとも有名な、空腹個人輸入雑貨商もかくやと言わざるを得ない空腹っぷりで、手にもっていたビジネスバッグに入っているのは目覚まし兼エチケットがてらのボトル入りのお徳用ガム。
昨日だったら、黄色い箱入りの皆様ご存じのブロック栄養食が。一昨日だったら10秒チャージのカロリーゼリーが入っていたのに、こん畜生めとカバンを投げつけたくなったのは言うまでも無い。とりあえずは手っ取り早く、腹に物を入れたい。
*
旅立ちに対して、彼はこうのたまったのである。
「『そーぞーまほー』を預けましょう」
預けてもらったわけだ。まぁ、自称もとい、多少神様からだ。
繰り返す。神様から、魔法を預けて貰ったわけだ。
神様転生で若返りでない諸々考えても、これは勝ち組じゃね?
ヒャッホー、と思ったが、罠であるのは想定内の案件であるのは言うまでもない。
*
その後のトライアンドエラーを考えれば、失敗する度に目の光が消えていって、いわゆるレイプ目になるまでの俺のあれこれは想像に難くないとおもう。そーぞーまほーだけに。
結論だけ言えば、そーぞーまほーは、創造魔法にして想像魔法だった。つまり、欲しい結果があるならば、事細かに想像できなきゃいかんわけだ。水が欲しいなら、空気の水分を凝縮する過程を思い浮かべ、手のひらに水が溜まる姿を想像し、それに口をつけて喉を潤して乾いた身体が活性化する、どれかかけても、自分に足りない要素がでるのだ。
最初は、最後に食べたかった牛丼様を思い浮かべ、出てきた牛丼様をかっこんで、あまから醤油味のする粘土のような何かに吐き出した。
それならせめて、豚汁の汁だけでも、と思ったがなんか塩味がするザラザラする何かが混ざったお湯だった。
それならお冷でも、と水がある姿を想像したが、変な味や匂いがした。
その次は水がある姿を想像したが何も起きなかった
次は手のひらに水蒸気を集め水が溜まる姿がうまく想像できなかった。
中学校ぐらいの授業を思い出し、蒸留を思い出して想像した。
手に付いた水滴でああ、水だ!と感動したのを覚えてる。
嘗めて気がついた、まさしく蒸留水で味もなんもない、と。
奴はいった「そーぞーまほー」だと。
より、ならばもっと強固に『想像』しろ、『連想』しろ、
いつもコンビニで買ってた飲み慣れたあのペットボトルの名水を。
冷たく冷やした、汲みたてを想像するあの美味い水を。
その水が、身体の乾きを癒し、活力を戻していくところを!
*
まぁ、結局のところ、まったくもって上手く行かず、というか最初に口にしたものに当たったのか、上から下から酷い有様で、道の脇で自称文明人としては酷いことになっていたわけだ。おまけに『そーぞーまほー』で一番出して無難だったのが、紙のような何かだったときには、もう俺は惨めさに涙しか出なかった。
それでもって、出涸らしになって辛うじて道に戻ってきた時に、馬車に適当にぶった切った丸太満載で遠くからやってきたのが、おっさんだった。
木こり? 薪屋? まぁ、領主から指示のあった森の木を切り倒し、街まで売りに行くんだそうだ。流石によれよれの俺をみて、街で下す薬だか、止める薬だかを買ったらどうだ? と言われて、金はないがまぁいってから考えようと連れて行ってくれと頼んだのさ。
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