冷凍保存の男

@kimichan

冷凍保存の男

 一人の男が冷凍保存をしてもらうため、ある研究所を訪れた。

その研究所では、現在の医療では完治不可能な病に冒された患者を冷凍保存し、将来、可能となった時点で解凍し治療を施してくれるサービスを行っていた。全身、ガンに冒され、余命一ヶ月と宣告されていた男は研究所の医師にすがるようにお願いした。


 男「治療できるまで冷凍保存してください。お願いします。」


 医師「かまいませんが、あなたのガン治療はとりわけ困難です。

   治療法が開発されるのはいつになるかわかりませんよ。」


 男「いつになってもかまいません。私は生きたい。

  だから私は待ちます。いつまでも。」


 かくして、男は多額の金を払い、向こう1万年以上の冷凍保存を契約し、眠りについた。


 時は刻々と流れ、7000年後。医療は格段の進歩を遂げ、ガン治療が可能となった。男を冷凍した医師から数百世代後の新たな医師が男を解凍し、治療を施した。そして、長い眠りから覚め、完全な健康体となった男に医師が説明を始めた。


 医師「あなたはもう健全な体に治りました。」


 男「そうですか、それはありがたい。 これからの人生が楽しみです。」


 医師「それは良かった。でも一つだけ言っておくことがあります。」


 男「何ですか。」


 医師「冷凍保存の期間があまりに長かったためか、今後10年間はちんこ勃たないですよ。」


 それを聞いた男は愕然とし、あろうことかその場で舌を噛み切って死んでしまった。


 男であるその医師は、7000年も待った男がなぜ10年間を待てないのか不思議には思わなかったとか。

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