Goodbye Game OF Life

 「退屈だな」

 少年は煙草を吸いながら空を見上げた。そこは学校の屋上。立入禁止の場所だ。だが、鍵は壊しておいたので、いつでも出入り自由だった。昼前の時間。まだ、教室では同級生達が授業を真面目に受けているだろう。

 「はぁ・・・どうしよっかなぁ」

 彼にはプランがあった。それはあまりにくだらなくて、どうでも良いようなプランだ。この世の中においてはあまりにくだらないプランで、自分にとっても無駄なプランだった。そもそも実現性が低い。

 「でもなぁ・・・こんだけ、退屈だと・・・やろっかなぁ」

 彼はこの頃、生きているのが退屈だと思っていた。あまりに退屈だったので煙草を吸ってみたが、面白くない。酒を飲んでみてもくだらない。危険ドラックや覚せい剤、大麻だって手を出してみたが、こんな物にハマっている奴はなんて、安上がりな思考なんだろうと思うぐらいにつまらなかった。

 セックスもやってみたが、あまりにくだらないので、途中で女を蹴り倒して、止めた。快楽などと呼ばれる類のものは所詮、低能な猿みたいな行為の一つでしかない。それは刺激と呼ぶにはあまりに幼稚で、虚しいだけだった。

 最後の一本を途中まで吸って、投げ捨てる。

 「さて・・・退屈な・・・退屈な・・・世界を根絶しようとするかな」

 少年は傍らに置いていたボストンバッグを手に取る。チャックを開くと中にはゴチャゴチャと入っている。その中で一番目立つのは少し細身の銃身が長く伸びた一丁の自動小銃だった。折り畳み式ストックのお蔭で何とか鞄に入っているが、それでもかなりギリギリの感じに入れられている。それとその銃に使う弾倉や弾が詰め込まれている。


 64式微声冲鋒槍(サイレンサー内蔵短機関銃)


 1960年代。ベトナム戦争真っ只中、中国軍は北ベトナムに対して支援を行っていたが、その中で、ジャングルにおいて、サプレッサーの効果がとても有効だとされ、アメリカ、ソ連、中国の間で特殊部隊向けに開発が行われた。アメリカにおいてはサプレッサーの開発のみに終わったが、ソ連と中国ではほぼ、専用となる銃が開発された。

 64式微声冲鋒槍は機関部を当時、中国軍が56式自動歩槍(自動小銃)として生産していたAK47がベースとなっている。銃身部分を消音器付の物に替えるわけだが、消音器自体は第二次世界大戦中に国民党軍がアメリカ軍から供与されたM3の消音器装着モデルに付属していた消音器を参考にされている。この消音器はベル研究所とハイスタンダード社が共同開発した物であり、ライフリングを施された銃身に穴を幾つも開け、発射ガスを抜いて、筒内に残すのである。これに専用の亜音速弾を用いると80デシベル以下の銃声で撃つ事が可能になる。80デシベルの音量だと、電車の車内などの騒音に匹敵する程度で、人が聞いても、それほど、嫌にはならない。それと同時に音自体もくぐもる為に、低音となり、銃声のように聞こえなくなる効果と響かないために発射位置が解り難いなど、特徴がある。

 機関部こそ56式自動歩槍と同じだが、使う弾丸はトカレフTT-33自動拳銃のコピー品である54式手槍(自動拳銃)と同じで、これを亜音速化した物が専用の弾となる。機関部が自動小銃と同じである事から、当時の短機関銃としては珍しくクローズドボルトでの作動になる。後にローラーロッキング方式のMP5と同じのように思えるが、穴開き銃身や亜音速弾を用いるなどの点から、特段、命中性が高いわけじゃない。

 無骨なそのフォルムの銃を取り出す。何度か試射はした。亜音速弾の拳銃弾と重さのある銃のお蔭で、撃っても反動はほとんど感じない。軽々と撃てる感じだ。弾倉を装填して、右側にある排莢口にあるコッキングレバーを引っ張る。排莢口が開き、弾がせり出してくるのが見える。そして、引き切ったら、離す。パシャリとレバーが前進した。

 「さて・・・始めるか」

 彼はダルそうな感じで鞄を左肩に背負い、銃を手に、屋上から校舎内へと入って行く。授業中の校舎内は静かなものだ。廊下を歩いていても、教師の声が聞こえる程度だ。外では校庭を走っている生徒達が見える。とても長閑な風景。その中に異質な感じに銃を携える少年が居た。

 緑色のリノリウム張りの廊下を安っぽい上履きがキュッキュッと音を鳴らす。彼は職員室に向かっていた。彼にはそれなりに綿密な計画がある。それに従って行動している。計画が狂うのは嫌いだ。何事も正確に行う。だからこそ、美しい。

 職員室の前に立ち、銃の右側にあるセレクターレバーを動かす。銃の後端から前に伸びた三角形のレバーをカチリと下げれば、フルオートで撃てる。撃ち過ぎてはいけない。指を離すタイミングが大事だ。そう心に言い聞かせて、扉を開く。授業中なので、教員の数は少ない。職員も含めて、その場に居るのは10名。目で全てを把握する。突然、入って来た生徒にその場の誰もが注目している。目の前に居た現国の洞木という中年女性が声を掛けようとした瞬間、その顔面間近に銃口を向けて、発砲した。弾丸はパシュという音と共に銃口から飛び出し、女の眉間に穴を開ける。亜音速弾と言えども、僅か数センチの距離からの発射ならば、頭蓋骨を貫く事は可能だ。一発で女は死んだ。だが、その小さな銃声のせいか、誰もが、何が起きているかを理解が出来なかった。

 銃のストックを右肩に掛けて、構える。冷静に。フルオート射撃だから、撃ち過ぎないように3発ぐらいで止めながら撃つのが良い。頭で全てを整理する。近くに居る者から次々と撃つ。狙いは胸。一番大きな的を狙うのが一番良い。仮に反動で上がっても頭。胸や腹を狙っておけば、相手を殺すことは容易なのだ。

 パシュシュシュシュ

 低い銃声が鳴り続ける。次々とその場に居る人々が自分の身体を貫く弾丸で倒れる。7.63ミリの小さな銃弾は思った以上に衝撃を与えない。だから、すぐに倒れなかったりする。それでも弾丸が身体を貫けば、人は動けなくなるものだ。

 死なないまでもその場に蹲る者達。それでも何とか逃げ出そうと床を這う。だが、その背中に強い衝撃と身体が裂かれる痛みが走る。それは少年の持つ大型ナイフによるものだった。少年は念入りに彼等を刺し殺していく。体に飛び散る血を気にせずに一撃で刺し殺していく。銃だけで殺せない可能性があるのは織り込み済みだ。ほとんどの者を殺した後、彼は職員室から出た。そして、廊下にある非常ベルを押す。

 校内に突然、鳴り響く非常ベル。教室中がパニックになる。

 「落ち着け!静かにしろ!避難訓練通りにやれば、大丈夫だ」

 教師が大声で、動揺する生徒達を落ち着かせる。教室はすぐに静かになり、教師達はすぐに避難訓練通りに彼等の誘導を指示した。毎年の避難訓練が役に立っているのか、生徒達は冷静に正面昇降口へと列を成して、移動をする。

 「上履きのまま、校庭に出ろよ!校庭の中央で整列するだ!」

 教師が彼らに向かって叫ぶ。昇降口にある下駄箱の間を抜けて、出口に出ようとした時、誰かが、そこに張られていたピアノ線に足を引っ掛けた。ピンと張られたピアノ線はプツンと力を失ったように撓む。その瞬間、昇降口の床が一気に燃え上がった。激しい炎が十数人の生徒や教師を燃やす。炎に巻かれた生徒達が廊下の方へと飛び出して、転がる。次々と押し寄せる生徒達はその光景に悲鳴を上げた。

 「たすけてぇえええ!」

 昇降口の出入り口付近に居た生徒や教師が炎に巻かれながら叫ぶ。炎は燃え上がったまま、鎮まらない。激しい業火となって、飲み込まれた者を燃やし尽くす。

 その場に居た生徒達はあまりの恐ろしさに我を忘れて、後へと逃げ出そうとする。だが、奥から押し寄せる生徒達ともみ合いになり、混乱が起きる。

 別の避難出口では外の非常階段を使うためにドアノブを回した。すると非常扉の外が燃え上がった。被害こそ出なかったが、非常扉の窓ガラスは熱で割れた。その場に居た生徒達はパニックになる。

 パタパタと廊下を走って来る音がする。どうやら、職員室に呼びに来た先生らしい。彼女は息を切らせながら、職員室前に立つ少年を見た。

 「あっ、あなた、すぐに避難しなさい!」

 彼女はそう叫んだ瞬間、腹に刺す痛みを感じる。最初は何が起きたか解らない様子だった。手を腹に当てる。すると、血が着いた。不意に少年を見る。彼は腰の位置で何かを持っていた。それが彼女が最期に見た光景だった。

 腹に空いた穴は小さい。亜音速弾の為、貫通力も低くなっているし、元々、変形の少ない弾頭の為にあまり内蔵は破壊しない。それ故に一発で致命傷を負わせることが出来るかどうかは難しいが、至近距離で腹と胸に撃ち込めば、かなりの確率で致命傷を与えられる。少年はそれを学んだ。

 小さな弾丸で苦しみながら死んでいく者達。それを見下ろしながら、彼は笑っていた。とても愉快に。

 校内はパニックなっていた。教師はそのパニックを鎮めながら、一階廊下の窓を開き、そこから生徒達を避難させる。生徒達は一目散に校庭へと駆け出す。それは死ぬかもしれないという恐怖からの行動だった。少年はそんな光景を窓から眺めつつ、ゆっくりと鞄の中に銃を納め、裏口から、外へと出る。サイレンの音が幾重にも聞こえる。パトカーや消防車だろう。少年は混乱する学校から抜け出した。

 「第一目標・・・成功」

 少年は冷静に学校から遠ざかる。集まって来た野次馬達。紛れて逃げるには都合が良かった。警察はすぐにこの事件について、気付くだろう。それでも犯人が生徒だと気付くまでに時間は掛かるはずだ。それまでに次の目標を攻略せねばならない。

 途中の公園にある公衆便所に入った。そこには予め、着替えなどを用意しておいた。この公園は派出所に近く、ホームレスや不良も近寄らない治安の良い場所だから、選んだ。あれだけの事をやって、目と鼻の先に派出所のある場所で着替えをするのもスリルの一つだ。

 着替えを終えたら、学生服などを紙袋に包んで、公園のゴミ箱に捨てる。そして、次の場所へと移動した。スマホのラジオアプリで現状を知る。あれだけの事件となれば、ラジオではずっとそのニュースが流れる。警察の動きも知れるわけだ。

 「校舎内には、まだ、多数の人が残されているという事もあり、消防は消火活動に続けております」

 火災はまだ収まっていない。ガソリンとエンジンオイル、灯油を混ぜた物を瓶に詰めて、そこに自動発火装置を付けて、ワイヤーを引くと発火するように仕掛けた。昇降口や非常口にはそれを大量に仕掛けておいた。一気に燃え上がった炎は天井材を燃やし、火災は広まったのだろう。想定以上の効果だ。それに時限式の発火装置が空教室などでも燃え上がる頃だ。学校火災が長引いて、警察が死体の検分が出来ない状態が続けば、射殺された事を察知するのに時間が稼げる。

 彼はほくそ笑みながら、街中を歩く。30分程度歩いた場所にこの街の市役所がある。ここが次の目標だ。さすがに学校のように色々と罠を仕掛ける時間や余裕はない。だが、市役所と言う場所は市民に開かれた場所だ。ただ、入るだけなら、誰にも怪しまれずに入る事が出来る。築40年近いコンクリート打ちっぱなしの建物は薄暗さを感じる。

 1階を通り抜け、2階に上がる。そこは教育委員会や選挙管理委員会、議会事務局など、一般の人々があまり来ない部署が入っている。それでも誰かが少年が歩いている事に疑問などは持たない。そこだって、市民に開かれているからだ。スイスイと彼は進むと、その先は市長室や議長室、議員控室などがある。

 彼は鞄から銃を取り出した。歩きながら安全装置を外し、市長室の前に行く。静かなものだ。扉を開ける。ノック無しに扉が開かれる事など無い。中に居た市長は何かの執務をやっていたのだろう。突然開いた扉に驚いたような顔をしていた。

 間抜け面

 そう思った。手にした銃を構える。市長は驚きの余り、身動きどころか、声すら上げられない様子だった。扉を開けて1分も掛からずに市長の上半身を次々と銃弾が貫いていく。頭、胸に銃弾が当たったのを確認したら、扉を閉める。次は隣の議長室。消音効果で、銃声はまったく響かない。隣の部屋の扉を開けると、議長も同じだった。ただ、そこには彼の関係者だろうか。若い男も居た。だから、まず、若い男を撃った。その間に議長が叫ぶ。五月蠅いなぁと思いながら、顔面を撃ち抜いた。命中精度の低い銃でも10メートル以内なら、問題はない。

 それから、議員控室に行く。今日は一般議会のある日なので、そこには20人程度の市会議員が居た。誰も銃声を聞いていない。いつも通りに資料に目を通したり、電話をしたりしている。片っ端から撃った。悲鳴と怒号、嗚咽。全てが入り混じる地獄がそこに展開される。さすがに数が多い。弾倉を捨て、新しい弾倉を装着する。排莢口のコッキングレバーを引いて、弾を装填する。その間にまだ、無事な若い議員が飛び掛ろうとしてきたが、至近距離でそいつの腹に5発程度、連射してやった。変形が少なく、貫通力の高い弾頭は易々と彼の腹を貫き、背中から飛び出した。彼は嗚咽を上げながら、その場に転がる。

 二本の予備弾倉を使い切ったところで、その場に動く奴は居なくなった。壁や床には血がベットリと付き、まだ、息があるのだろう。嗚咽が聞こえる。トドメを刺しても良いが、ここで時間を無駄にしているわけにはいかなかった。彼は扉を閉めて、その場を後にする。銃を鞄に入れて、静かに市役所から、出ていく。きっと、今頃、あの惨状を見た職員が驚いている頃だろう。警察が来る前に次へと移動せねばならない。

 彼の予想通り、10分後には職員が発見して、警察に通報がされた。だが、この頃には彼は市役所近くの空家に入り、着替えを済ませる。監視カメラに撮られている事は解っている。だが、画像分析をして顔が解ったとしても簡単に特徴の違う人物を見分けるのは難しい。予め用意していた服に着替え、鞄を替える。そして、バリカンで頭の毛を刈る。それだけでもこの短時間でそれだけの事は出来ないという思い込みから、認知されない可能性が高まる。

 そして、次の場所へと移動する。次が最後だ。移動をしたら、自宅近くの図書館で時間を潰した。ラジオでは大量射殺の事件が流れ、警察が幹線道路に検問を置き、包囲網を築いているらしい。多分、遠くに逃走すると踏んでいるのだろう。バスや電車、タクシーなどを使えば、すぐに捕まってしまう。だが、それは一切、使っていない。何故なら、全ての事件現場は徒歩30分圏内だからだ。そんな近場で全てが行われる。ましてやこの厳戒態勢で。警察はそこまで思っていないかも知れない。どこかで怯えて潜んでいる。そう思っているのかも知れない。だが、そうじゃない。図書館で堂々と休憩をさせて貰っている。

 夕方となり、そろそろ、閉館時間が近付いたので、図書館から出る。幼い頃から知った街。よく知った人達が住む街。閑静な住宅街が広がる。区画整理された街並みは碁盤の目のようだ。夕闇に染まる街角。パトカーのサイレンが五月蠅く鳴り響く。それなりに警戒しているのか、雨戸やシャッターを下ろす家もある。防犯は大事だ。そう思う。

 とある家の門を勝手に開き、中に入る。それはかつて、中学校まで同級生だった少女の家だ。彼女はそれなりに可愛くて、学校でも人気があった。その事はあまり興味のある話じゃない。ただ、学校で人気があった美少女という触れ込みに興味があっただけだ。玄関の扉へは行かず、裏に回り、居間の掃き出し窓へと向かう。そこには夕飯前の一家団欒の姿があった。両親と二人の少女。姉妹だろう。彼女達は気付いていない。掃き出し窓には鍵が掛かっている。だが、開けるのは難しくない。悪だけだ。鞄から取り出した銃のストックで殴って割る。突然の事に悲鳴を上げる少女達。そこに向かって一連射するだけだ。居間の隣のダイニングに集まっていた4人を撃つのにコツなんて、要らない。練習もかなり積んだしね。居間に上がり、4人の元へと近付く。さすがに一撃で殺せたのは最初に狙った父親だけだった。残りの三人は悲鳴を上げながら傷付いた身体で逃げ出そうとしていた。まずは母親の後頭部を撃ち抜く。残りは二人の少女。一人は足を撃たれて、引き摺る同級生。もう一人の姉は腹を撃たれたのか、苦しそうだ。

 「苦しめよ」

 その腹に更に銃撃を加える。彼女は悲鳴を上げた。

 「止めて!止めて!」

 同級生の少女が叫ぶ。突然の悲劇に歪む顔だが、確かに可愛らしい。そのポニーテールにした髪を左手で掴み、引き上げる。

 「殺すぞ。こっちへ来い」

 少女を連れて、外に出る。窓ガラスの割れた音と悲鳴で、隣家が何事かと覗いていた。そこに向かって発砲する。静かな銃声を掻き消すように窓ガラスが割れる音と悲鳴が聞こえた。

 「ははは。さぁ、ショータイムの始まりだ」

 少女を犬の散歩のようにポニーテールを引っ張りながら連れ歩き、彼は別の家に入る。扉など無意味だ。今の掃き出し窓を叩き割って、中に入る。その家の住人を撃ち殺す。それを繰り返す。4件目でパトカーが近付くのが解る。

 「ようやくか・・・遅いな」

 新たに入った家の住人を皆殺しにしてから、引きずり回していた少女の上着を引き裂いた。少女は悲鳴を上げる。それを何度も蹴る。顔は蹴らない。ただ、ひたすら、腹を蹴る。嗚咽を漏らしながら少女は黙る。

 「裸になれよ」

 女の裸など、今更、さしたる興味は無かった。だが、こんな状況に白い女の裸は景色的に良いじゃないかと思った。少女は恐怖でパニックになりながら、服を脱ぐ。

 「その壁に両手を着いて立て」

 言われた通りに和室の土壁に両手を着いて立った。

 「尻を出せ!しっかりだ」

 何をされるか・・・だいたい、予想は着いた。だが、これを拒む事は出来ない。死にたくないの一心で、大きく尻を付き出す姿勢になる。その瞬間、堅い物が彼女の秘所に荒々しく突き刺さる。これまで経験の無い彼女の秘所は膜を貫かれ、激しい痛みが襲う。

 「ぎゃ」

 と彼女が短い悲鳴を漏らした瞬間、彼女の腹を突き破って、銃弾が飛び出した。その瞬間、彼女は力なく、その場にへたり込む。お腹が熱い。痛い。触った右手にヌメリとする感触。それは血だった。腹から血が出ている。下半身に力は入らない。痛い。痛い。

 何が起きたか少女は解らなかった。

 「なるほど。女のアソコで撃つと完璧に消音になるな。まったく銃声が聞こえなかったよ」

 笑い声。サイレンと重なって、それは何か危険な音のようにも思える。意識がどんどん、遠退く。きっと、自分は死ぬんだ。そう思った。

 意識を失った少女をその場に残し、和室から出る。この周辺には多くの警察官が来ているだろう。きっと、機動隊や特殊部隊も来ているはずだ。さすがにここから逃げ出す事は出来ない。それは解っている。この結末は最初から思い描いた通りだ。

 予備弾倉をベルトに挟む。鞄は捨てた。どこまで、戦えるか。まさに最高のステージだ。相手は無数に現れる警察官達。さぁ、弾が尽きるまで、遊ぼう。そうして、一歩を踏み出した。

 

 

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