ドラゴンバスター
1944年9月17日 日曜日 フランス
イギリス軍第一空挺師団
ビル=ヘンダーソン大尉は酷く緊張していた。彼の乗る飛行機はガタガタと震えている。エンジンは時折、咳き込むような音を立てる。眼下に広がる田園地帯には数万人のドイツ兵がウロウロしているはずだ。そう思っただけで心臓が口から飛び出しそうな気持になる。
幸いにも空は好天に恵まれた。機長から降下命令が下り、輸送機のハッチが開かれる。遠くで爆音が聞こえる。頼むから飛び降りるまで撃墜されないでくれと祈る。部下達は下士官の指示で次々と飛び降りていく。
最後にビルの順番となる。彼がハッチの所に立つ。
「大尉、大丈夫ですか?」
乗組員がそう声を掛ける。多分、泣きそうな顔をしていたのかも知れない。足元の遥か下にはフランスの大地が広がる。白い落下傘が幾つも花開いていく。それはまるでタンポポの綿帽子のようでもあった。
一瞬、恐怖を感じたが、何度も訓練した事である。今更、怖いなど言ってられない。彼は息を飲んで、大空へと飛び出した。身体は一気に落ちていく。すぐに落下傘が開かれ、身体全体がグッと吊り上げられる感じだ。
この時代の落下傘は、現代の物に比べて落下速度が速く、また、コントロールも僅かしか出来ない。特に気を付けねばならぬのが着地であり、失敗をすれば、足を骨折する事も多かった。
地上には多くのドイツ軍が居るはずだった。しかし、彼等からの攻撃は無かった。それどころか、姿すら見えない。それは幸運だと言えよう。敵はこの奇襲に対して混乱している。この間に我々は無事に着地して、戦闘準備を行う事が最優先だ。ビルはそう何度も頭の中で繰り返す。そして、祈るように地上を見た。だが、不幸にも彼の身体を突風が襲う。それはあまりにも強烈な風で彼の落下傘は酷く煽られる。
あまりに酷い風で彼の落下傘は形も維持が出来ない程になり、ビルの身体は空中で四散するかと思うぐらいに揉みくちゃにされた。体中に激痛を感じながら何とか体勢を立て直そうとするも、突風は続き、彼の身体を四方八方に振り回す。あまりの激しい揺さ振りの中で、彼の意識は次第に遠退き、目の前が真っ暗になり、意識が途絶えた。
次に目を覚ました時、そこは草原の真ん中だった。ビルは慌てて、落下傘を切り離し、小銃に手を伸ばした。彼は士官ではあるが、短機関銃を好まず、このイギリス伝統の古臭い小銃を用いていた。
ショートマガジン リー・エンフィールドMarkⅢ ボルトアクションライフル銃
元になったのは1895年に採用されたリー・エンフィールド小銃である。そこからさまざまな改良を施して、近代化されたがのがこの銃だった。基本設計こそ、古いが堅牢な動作性能や良好な射撃性能から、イギリス軍はこの銃を大戦中も使い続け、更にこの銃を改良したモデルが戦中に開発され、生産された。そして、この銃を補うために短機関銃や軽機関銃などが部隊に配備されるに至った。
最大の特徴は当時としては珍しい脱着可能な複列弾倉を装備して、装填する弾薬数が多いと言う事と、ボルトの後退幅、回転角が小さく、ボルト操作が小さく出来る。これは普通のボルトアクション銃から比べると、ボルト操作が素早く出来るのと、ボルト操作中に顔を離さずに行えるので狙ったまま、連続射撃が可能になる。その為、1分間に30発の連続発射も可能だったとされる。それ故にこの銃は銃自体の重さや基本設計の古さがあっても、現代に至るまでも使われるほどの名銃となった。
ビルは銃を構えて、周囲を見渡す。仲間の姿は無い。
降下地点から大きく外れてしまったのだろうか。だとすれば、すぐに味方と合流しなければ、ドイツ軍の捕虜になる可能性が高い。
草原はどこまでも続く感じだ。目立った目印が無い以上、地図を見ても、ここが何処かだか、見当のつけようもない。敵地で完全なる迷子になってしまった。これはあまりにも絶望的な状況であるとビルは真っ青な顔になりながら思った。
「やばいな。とりあえず・・・北へ向かうか」
コンパスを頼りに歩き始める。
半時程、歩いたところで、一本の道に出る事が出来た。未舗装の道だが、轍なども確認が出来る事から、街道だろうと推測が出来る。
ビルはどっちを進むべきか悩む。進む方向を決めようにも地図で解るような地形も無く、空には友軍機どころか、ドイツ軍機すら飛んでいない。こんな時こそ、空を飛べよとビルは空軍に対して、悪態を突く。
彼は枝を拾って、それを宙へと投げた。クルクルと回転して落ちた枝の先が指した方へと歩き始める。街道はそれほど、広く無く、戦車が一両ギリギリ通れる程度だ。多分、脇道のような街道なのだろうとビルは考える。これならば、あまり敵も頻繁には警戒していないだろうと思いつつも、常に周囲を見渡しながら、先に進む。
小一時間程度、歩くとビルは村を発見した。一瞬、助かったと思ったが、あれが味方が制圧した村かどうかは怪しかった。ビルは少し離れた叢に姿を隠して、ドイツ軍などが姿を現さないかを確認する事にした。
村は比較的、小規模。人口は100人程度。車などは無く、電気なども通っている気配はない。昔ながらの村だ。ドイツ軍が駐留している気配はまったく無い。戦時下であるものの、人々の行動にはあまり、そのような感じは受けられない。ただの長閑な村だ。
「ふむ・・・ここはフランスか?オランダか?どっちにしても話せないが・・・」
問題は言葉だ。日頃の不勉強が祟ったせいで、ビルはここに来て、言葉の壁に阻まれる。さすがに相手が一般人と言っても、数は居る。下手をすれば、捕らえられて、ドイツ軍に突き出される可能性もある。
「もうちょっと、仲間が現れるのを待つか?」
そうこうしていると、何やら、馬に乗った甲冑姿の男達が街道を走っていく。
「甲冑?」
さすがに第二次世界大戦になると甲冑自体は珍しい。似たような物だと、爆撃機乗りなどが来ている防弾服とかだ。ビルはそれに似たような着衣かもしれないと思い、様子を見ている。だが、甲冑姿の男達はすぐにドイツ軍かどうかとは判断がつかない。ただ、彼等が入った村は急に大慌てになったようだ。人々はすぐに家の窓や扉をしっかりと閉め、何かに備えているようだ。空襲を警戒しているのだろうか?だとすれば、あそこはまだ、ドイツ軍の支配地域なんだと理解した。
ビルはここから離れるべきかを判断するために双眼鏡で村の様子を伺う。村は何かに警戒している様子だ。甲冑姿の男達が村の入り口を固めるようにしている。手には槍や弓矢を持っている。本当に中世の時代の騎士のようで、ドイツ軍は物資不足なのかとビルは少し安堵した。すると、空から何か唸り声のような音が響き渡る。ビルは飛行機のエンジン音かと思って、慌てて、空を見上げる。
「な、何だ、あれは?」
ビルは空に浮かぶそれを見た時、愕然とした。
そこにあったのは連合軍の爆撃機では無い。
真っ赤な巨躯に、長い首、爬虫類のような顔をした怪物。それは巨大な翼を広げて滑空していた。
それはまさに子供の頃に読んだドラゴンだ。
「なんだよ・・・あれは・・・冗談だろ?」
ビルはドラゴンを凝視した。
口からは炎らしき物をチラチラと出しながら、それは村に迫った。何が起こるのか。ビルはただ、黙って、見ているしか無い。
ドラゴンは村の前へと降り立つ。長い首を器用に動かし、村を一瞥した。そして、突如、口を大きく開き、雄叫びを上げる。それは地響きを感じる程だ。
「何だよ。あれ?俺は夢でも見ているのか?」
ビルは目の前にある光景が夢のようだと思い、信じられなかった。
ドラゴンは雄叫びを上げたと思ったら、その口から火炎を吐く。まるで火炎照射器のように伸びた炎の筋は連なる家々を燃やす。火の手が上がり、家から飛び出した人々に対して、ドラゴンは襲い掛かった。その巨大な手が人間を捕まえて、その口の中へと放り込む。
「マジかよ。人を食ってやがる」
ドラゴンは捕食する為に村を襲っている。
騎士達も弓を引き、必死にドラゴンと戦うが、その矢はドラゴンの堅い皮膚に阻まれ、効いていない様子だ。そして、彼等もまた、ドラゴンの炎によって、一瞬にして黒焦げとなり、その場に倒れた。
「何だか・・・これは現実じゃないな」
ビルは夢のような光景に驚きながらもボルトを引いた。初弾は薬室に装填される。その状態で安全装置を掛け、いつでも撃てるようにする。これならあのドラゴンがこちらに向かって来ても戦える。そのように備えた。だが、あくまでもこれは備えであって、本当はあんな化け物とは戦いたくはない。軍隊では戦車と戦う方法は叩き込まれたが、あんな化け物と戦う方法など誰も教えてはくれなかったからだ。
俺はきっと、夢を見ている。多分、その内、目が覚めて、また、戦場に戻れるだろう。んっ・・・?戻れるのか?まさかと思うが、現実の俺はすでに死んでいて、あの世の世界じゃないだろうな?
ビルはそんな嫌な妄想をして、頭を振るう。とにかく現実として、目の前の光景を直視しないといけない。彼は再び、ドラゴンの方を見た。
相変わらずドラゴンは暴れている。
貪欲なまでの食欲を満たすべく、家々を壊し、人も家畜も食べられる物を全て、口に運んだ。ビルは幾度も戦場を駆け抜けたが、これほど酷い光景を見たことが無い。人が生きたまま、食われる様など、想像を絶する光景だった。これは夢だとしても酷過ぎる。悪夢だ。彼は神に祈りの言葉を捧げるしか無かった。
ドラゴンは逃げ遅れた一人の少女に手を掛けようとした。
「おい・・・そんなガキにも、容赦なしかよ」
ビルは少女を見る。
怯える少女。
赤髪の少女はただ、怯えて、ドラゴンを見るしか無かった。
ビルは双眼鏡を地面に置いた。
「あぁあああ、もう、どうでも良い。だけどよぉ、俺の目の前で、ガキに手を出すんじゃねぇよ」
彼は小銃を構える。
ボルト後端左側にある安全装置を前に押し戻して解除する。
そして、狙いをつける。相手は戦車よりもデカイ獲物だ。狙うのは簡単。あの頭だけでも車ぐらいある。だが、303.ブリテン弾が効くのか?疑問は感じるが、不幸にもイギリス軍はマーケット作戦では対戦車兵器はあまり持って来なかった。当然ながら、士官のビルが持っているわけもなかった。
彼はゆっくりと小銃の狙いを定める。ドラゴンの手は少女を掴もうと、荒々しく伸びる。ビルはゆっくりと引金を引いた。
ドン、低く籠った銃声が鳴り響き、弾丸は銃口から飛び出し、それはドラゴンの右目を貫いた。一番、弾丸が効きそうな場所を選んだ結果だ。距離は500メートル前後。幾ら大きな目とは言え、かなり難しい射撃だった。ドラゴンは目を潰されて、痛いのか、激しくのたうち回り、悲鳴のような声を上げていた。
「おい・・・それ、一発で済むと思うなよ」
彼はすかさず、ボルトを左に回して、引く。撃針は後退して、空薬莢が宙へと飛び出す。そして、ボルトを前進させて、右に回す。弾倉からせり上がった弾丸は薬室に装填される。
次の弾を暴れるドラゴンの腹に撃ち込む。弾丸は柔らかそうな腹に命中した。ドラゴンは堪らず、悶え苦しみながら、突如として、飛翔を始めた。
「ここで始末すべきか・・・」
ビルは考える。追い払えれば、とりあえずは大丈夫だ。これ以上、やれば、ドラゴンにこの位置を知られる可能性もある。あの火炎放射器のような炎は危険だ。そう思って、銃を構えたまま、ドラゴンをやり過ごす。ドラゴンは飛翔してから、すぐに逃げ出した。
「逃げたか・・・助かったな」
ビルは空を見上げて、立ち上がる。小銃を手にして、村を見た。村は3割程を焼かれたようだ。結構な数の人も死んだだろう。幸いにも彼が助けた少女は無事のようだ。問題はここまでやっても自分自身の目が覚めない事だ。
「夢なら早いところ覚めて欲しいんだけど、戦場で寝っ転がったまま、ドイツ兵に殺されるのだけは勘弁して欲しいぜ」
ビルはまだ、夢の続きかと思い、とりあえず、村へと向かう事にした。小銃は背中に担ぎ、腰のホルスターからエンフィールド№2回転式拳銃を抜いた。
「さっきの様子だと、銃が無いみたいだけど、拳銃で大丈夫かなぁ」
ビルは怯えながらも村に近付く。家は煙が立ち、まだ、騒然とした様子だ。ビルはその様子を見ながら、村の中へと入っていく。そこで一人の少女と出逢う。
「あ、あなたは?」
赤髪の少女は英語でそう尋ねて来た。
英語?そうだ。ビルには少女の言葉が解る。彼女は確かに英語を喋っているのだ。ここはイギリスか?そんなはずは無い。フランス人なら、絶対に英語など喋らないだろうし、それともオランダだろうか?
ビルは不思議に思ったが、これは幸いだと思って話し掛ける。
「わ、私はイギリス陸軍第一空挺師団のビル=ヘンダーソン大尉です」
少女は不思議そうな顔をした。
「ドイツ軍からフランスとオランダを解放するためにやってきました。ここの村長に会わせて欲しい」
「ドイツ軍?フランス?なんのことか解らないけど、村長なら、ドラゴンの後始末で忙しいからすぐには無理だと思うわ」
「ドラゴン。さっきの赤い怪物か」
「そうよ。あなたも見ていたの?」
「あぁ、そこの丘の茂みの中でね」
「突然、凄い音がして、ドラゴンが傷付いたお蔭で、助かったわ。あのままなら、この村は全滅していた所よ。今、ドラゴンが活性しているようで、すでに二つの村が全滅したって聞くし」
「そうか・・・ドラゴンはそんなに危険な存在なのか?」
ビルはそう尋ねる。彼からすれば、銃で貫通するから、その気になれば、倒す事も可能なのじゃないかと思う。だが、少女はあまりにビルが呆気なく言うもんだから、驚いた様子だ。
「あなたはドラゴンを知らないのですか?あんな、恐ろしい怪物を知らないなんて、一体、何処からやってきたのですか?なにか、変わった服ですし」
少女はビルの姿を見て、そう尋ねる。
「なるほど・・・うん、どうやら、ここは俺の知っている世界じゃないな」
ビルはようやく確信する。何が起きたかわからないが、ここがフランスやオランダじゃなく、まるで童話に描かれたような世界だと言うことだ。俺はそれを確認してから、少女の問いに答えた。
「俺か・・・イギリスから来たんだが・・・」
「さっきから言っているイギリスって・・・どこ?」
「海を越えた遠い場所だ」
「海を越えた遠い場所?ブリタニアとか?」
「まぁ、似たようなもんだ」
ここで困った事は水と食料をどのように手に入れるかだ。ここが自分の世界では無いとすれば、友軍も居ない。だが、正直、すでに腹は減ってきた。何とかしないとこの世界から脱出する前に飢え死にする。
「すまんな・・・腹が減ったのだが?」
「はぁ・・・うちはこんな小さな村なので、宿屋は無いのです。あと半日も歩くと、ダレイオスという街がありますから、そちらで」
意外とシビアなもんだ。しかし、困った事にこの地で通用しそうな金目の物はない。このままでは盗賊にでもならないと、本当に飢え死にしてしまうだろう。かなり命の危機を感じるビル。その時、再び、人々が悲鳴を上げた。
「あっ、また、ドラゴンが!」
少女も逃げ出す。振り返るとさっきの赤いドラゴンがやってきた。ビルは拳銃をしまって、小銃を構える。
ドラゴンは警戒するように村の上を旋回している。さっきの復讐にでも来たつもりだろうか。ビルはゆっくりとドラゴンの翼の付け根を狙った。旋回している時に身体を傾ける。背中の一部が僅かに見える時がチャンスだ。
ドラゴンは威嚇するように雄叫びを上げながら、旋回を続ける。その時、銃声が鳴り響き、ドラゴンは背中に酷い痛みを受けて、そのまま、失速して、墜落する。
ドシンと大きな地響きがした。村の外にドラゴンが墜落した衝撃だ。ビルは駆け出す。今度はドラゴンも撃ったのが誰かを把握しただろう。炎を吹かれては勝ち目が無い。ビルは村の外に出て、倒れているドラゴンと対峙する。小銃を構える。
「貴様・・・何者?」
ドラゴンは喋った。
「本当かよ。下手に人の言葉を話せるとかって、撃ち辛いんだよねぇ」
ビルは嫌そうな顔をしながらその頭に狙いを定める。
「待て・・・殺しはせぬ。お前が何者かだけを教えろ」
「人間を食うような奴は信用しない。失せろトカゲ野郎」
銃声が鳴り響く。ドラゴンの頭に銃弾が叩き付けられる。ドラゴンは悲鳴を上げた。
「まだ、死なないのか?」
さすがに人間とは違うと思った。暴れ出すドラゴンからビルは逃げ出す。
「人間・・・許さんぞ!」
ドラゴンはビルは追い掛けようと立ち上がる。ビルは振り返り様にその喉に銃弾を撃ち込む。ドラゴンはゴハァと息を吐きながら苦しそうにする。
「首は急所か。デカイだけで、動物と同じだな」
ビルは素早くボルト操作を行い、連射をする。次々と弾丸がドラゴンの腹や足を貫く。相手は所詮、動物だ。熊と同じで、倒せない相手じゃない。
「に、人間如きが・・・なんという力を・・・許せぬ。許せぬぞ!」
ドラゴンは最期の力をもって、炎を吐こうとした。だが、それはビルの狙い通りだ。彼はドラゴンの口を狙った。
「臭い息を吐き掛けんなよ」
放たれた銃弾はドラゴンの口の中へと飛び込み、口腔を貫き、下垂体を貫いた。一瞬だった。ドラゴンは自分の口の中に濁流のように溜め込んだ炎を垂らし、それが自分の体を焦がす。一瞬にして、ドラゴンは炎に巻かれた。
「ちっ・・・てめぇの炎で燃えちまったか」
ビルは燃え上がるドラゴンの身体を見ながら、感慨深げに呟く。
「あ、あの・・・ドラゴンをやったのですか?」
後ろから少女が声を掛けて来た。
「あぁ・・・まぁな。ちょっと苦戦したがね」
「す、すごい。あなたは・・・なんて、凄い方なんですか?」
少女の顔は紅潮している。相当に興奮しているのかと思った。確かに弓矢で何とかなる相手では無いな。それを倒したのだから、相当に凄い事をやったのだと思うが、自分としては、射撃訓練をやった程度の事しかしていない。はっきり言えば、思ったよりも簡単な事だったわけで。
「あぁ、まぁ、ドラゴンをやったんだから、飯を食わせてくれないか。腹が減った」
「は、はい、幾らでも・・・すぐに村長にも伝えて参ります」
少女は駆け出した。これでようやく飯が食わせて貰えるだろう。
正直、この先、どうなるかわからない。ドラゴンを殺して、行くにも弾に限りがある。はっきり言えば、早い所、ここから抜け出して、元の世界に戻らないと、ビルはそう思いながらも、旨い飯とワインが欲しいなと思いながら村へと戻った。
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