真愛 ―幕間―

真愛

　真なる愛とはなんだろうか

　普通の愛とはなんだろうか

　皆が求める普通を束ねれば

　普通の愛が生まれるのだろうか

　真実の愛が生まれるのだろうか

　たとえそれが真実で正しかったとしよう

　だが

　しかし

　そんな普通を束ねた完璧に「普通」な人間など

　いるはずがない

　否

　いてはならない

　誰かの「普通」という理想に適う人間は

　誰かの「普通」という理想に適わない人間だ

　誰かの「普通」によって否定される人間だ

　世界を愛するべきだと

　すべてを愛するべきだと

　幼いころに教えられた

　しかし

　「普通」を愛していたのでは

　皆を愛することなどできない

　理想を束ねた「普通」を「普通」とし

　そんな「普通」を愛の基準におけば

　誰も愛せない

　誰もが皆欠けているのだ

　少しずつ「普通」から外れているのだ

　完璧な人間などいないのだ

　だから

　ひっくり返すことにした

　皆が「普通」でないのであれば

　誰もが一様に外れているのであれば

　僕は「「普通」でない」ことを愛そう

　外れていることただそれのみを愛そう

　誰かに否定されていることを愛そう

　形は問わない

　善悪も問わない

　何も問わない

　ただその人の

　外れた部分そこのみを

　まるでそれがその人の本質であるかのように

　それがその人自身であるかのように

　愛そう

　愛そう

　愛そう

　例えそれが真実でなくとも

　真実の愛でなかったとしても

　愛するために欠落を愛そう

　偽物であっても構わない

　愛することこそすべてだ