第2話
昼休み、俺は教室で寝ていた。
正確には、寝ているふりをしている。
そうするしか時間を上手くやり過ごす方法が思いつかないからだ。
スマホをずっと弄っていても、ぼーっと席に座ったままでも、うっとしい奴らから暇潰しで色々ちょっかいを出される。
からかわれたり、馬鹿にされたりしないで済む日は、ほぼ無い。
だが大人しく寝ていれば、少しはそういった目に合う確率が下がる。
授業と授業の間の小休止中は、意味もなく校舎を彷徨ったり、ずっとトイレに籠もり続け、できるだけ他の人間と出会わない様にしている。
だが昼休みの場合、弁当を食べた後はこうやって寝たふりをしたり、本当に寝たりして時間を潰す。
全くイライラして仕方が無い。
鬱憤が相当溜まる。
この学校の連中は最低な連中だ!
最低! 完全に最低!
誰もが俺の事を馬鹿にする。
気持ち悪い、何考えてるのか分からない、猫背で、ガリガリで、間抜けな屑。
それがなんなんだ。
好きにさせろよ。やりたい様に生きさせてくれよ。
話も誰とも合わない。
ドラマの俳優や、話題のバンドやアイドル。
あるいはアニメや漫画のヒロインや声優。
ホントどうでもいい。
そして、どいつもこいつも直ぐにキレて、意地をはる。
俺はお前らの事が大嫌いで、お前らは俺の事がもっと嫌いなんだろう。
俺はもう、誰にも話しかけない。
最悪な学校生活だが、それでも出来るだけ安全な過ごした方を考慮した結果、今の形に落ち着いている。
寝たふりをしながら、俺は今朝の事を思い出している。
プリン君と、遂に結ばれ、激しく愛し合った。
これまでも、ぬいぐるみ、クッション、筆箱、水筒、靴下、シャンプーボトル……色んなポンポンプリンのグッズに、オナホールを内蔵させて何度も何度も突き入れては射精を繰り返してきた。
だが、今日のプリン君はサイズが違う。
今までの行為はオナニーでしかなかったかもしれないが、今日のはセックスだ。
セックスをした、激しく抱き合い、愛し合えた。
そう強く実感する。
思い出すとまた勃起してきた。
俺はズボンのポケットに手を入れ、硬くなったチンポを布越しに握る。
「ハハハハ!あの女ぜってえヤリマンだし!」
「お前早くお願いして童貞貰ってもらえよ!」
「いやだって……アイツ、病気持ってそうだよ。あれはやべえって!」
やかましい。
すぐ側で不良グループが騒いでいる。
こいつらはいつもそうだ。
女やファッションやバイクの話ばかり。
特に女の話が多い。
誰と誰が付き合ってるだの別れただの、ヤッただのヤッてないだの、そんな話を延々としてる。
「もーいいからアイツとヤッとけって!」
「いやアイツは嫌なんだって!普通の可愛い子と付き合いたいし!」
「お前とまともに付き合える女なんかぜってえいねぇって!」
「うるさいボケー!」
こいつらに一ヶ月前、気持ち悪いだの死ねだの、散々なじられながら、何度も蹴られた事が脳裏に過る。
ーー馬鹿どもが!
くそ!くそっ!くそっ!
だが、フンッ……
こいつらの内、何人が女と付き合った経験があるのかは知らないが、俺は今日、最愛の人を抱いて童貞を卒業したんだぜ!
そう思うとニヤニヤが止まらない。
「プリン君…………好き……プリン君……」
俺は周囲に聞こえないレベルの小声でプリン君への愛を呟きながら、固くなった亀頭を握ったり離したり、時折擦ったりして、射精しない程度の快感をチンポに与え続ける。
ああ。いい。
この身を包む今の多幸感があれば、どんな困難でも乗り越えられる気がする。
例えどんなーー
「おいこれ!ハハハハ!!やばいやばい!見て!」
「え?」
「リツイートで回ってきたんだけど、新宿のポンポンプリンの尻に精子かかってたって……」
「ええ゛ーー!サイアクー!!」
ビクッ! と身体を震わせ、俺はその声がした方へ顔を上げた。
サンリコ男子 蜜河 浮 @mitsukawa
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