4 誤解だよ

「あ、ナラハラさんお疲れ様です!」

「あれ、イトウ君、こんなとこでどうしたの?」

「ナラハラさんこそどうしたんですか?ここ般教(一般教養の略)棟ですよ」

「だって僕まだ英語あるんだもん」

「ええーっ!?2回生までに終わらせたんじゃなかったんすか?」

「そのつもりだったけど、今は就職氷河期だから、別に4年で卒業しなくても、じっくり就活できればいいかなあって考えてるんだよ」

「なるほど、先輩頭いいっすね!」

「うーん……有難う」

「ところで先輩って、オカダさんと1・2回生の頃の英語、一緒のクラスだったんすよね。オカダさん講義の時はどんな感じっすか?」

「何でいきなりそんなこと……」

「だって、オカダさんアホだし、この前だって簡単な手でナガタニの罠に引っ掛かってたし、救い様がなさそうですもん。彼女こそ4年での卒業が怪しそうっす」

「君ひどいなあ…。いや、君が思ってるほど、彼女はアホではないと思うよ」

「えっ?」

「だって僕、彼女の事ずっとネイティヴスピーカーだと思ってたもん。2回生でこのクイズ研が結成されて彼女と知り合いになったけど、それまでのあのハンパない発音と解答で、『うわ、すげえ!!』って思ってたもん」

「ええーっ!?そんな姿、クイズ研では微塵も出してないじゃないっすか!!」

「うん、それが不思議なんだよな。それに彼女、僕と同じ法文学部の学部違いの法学科だけど、ホントはたぶん理系だよ」

「えええーっ!!?嘘でしょーナラハラさん!?」

「嘘なんかじゃないよ。実際クイズ研で出す彼女の問題、明らかに文系ではないだろう」

「あっ、確かにそうです!平気でシュレディンガー方程式出してくるし、この前なんかアンドリュー・ワイルズ(フェルマーの最終定理証明者)ですもん」

「そうなんだよ。彼女、文系って自分で言ってるけど、絶対に理系なんだよホントは!」

「あれ、ナラハラさんにイトウ君お疲れ!これから講義?」

「あ、オカダさんこんにちは!」

「オカダさんお疲れ」

「あのオカダさん、今ナラハラさんからとんでもない話聞いたんすけど。オカダさんってネイティヴスピーカーなんすか?」

「へ?いや、私海外旅行とか行った事ないけど」

「そ、それじゃあホントは理系なんすか?」

「文系だよ」

「オカダさん絶対理系出身だよね!」

「どうしたのナラハラさん。確かに高校2年に進級する時は理系考えたけど、1年の時の数学の担当教師の授業が最悪でねえ、理系に進むの諦めたんだ。同じクラスのめっさ数学できた野郎の友達も『理系行くの俺も諦めた』って言って私と同じ文系の世界史・地学クラス選択やってたしね」

「ええーっ……。そうなんすかオカダさん?」

「うん、たぶん全部誤解だよ!」

「ま、マジか……」

「じゃ、じゃあ普段サークルで理系の問題が多いのは……?」

「ああ、あれは単純な趣味だよ(笑」

「しゅ、趣味なのか……」

「そうだよー!じゃ、私次刑法ゼミだから。またねー!!」

「……」

「……」

「イトウ君、世も末だな」

「はいナラハラさん。あの人だけはよく分からんです(涙」

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魔界ファンタジー発動 桜川光 @gino10

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