1-5. 氷解

少女は非常に色々なことを語った。

この国のこと。この村のこと。法律。規則。文化。

そして。あの夜に何が起きたのか。


それは私の中に長いこと静かに眠り続けていた疑問を氷解させた。

"何故私は森に捨てられたのか。"


その答は、この国が、この国唯一の王族である女王が作った法であった。

昔、女王はこう宣言した。


「異能の者は、全て排除しなさい。」


その言葉は審議をされない。真偽は問われない。

是非など無い。唯一の王族の言葉だからだ。

そうして、"異能狩り"が始まった。

魔女と呼ばれていたものや、一線を画すほど優れた能力を持つもの、

その者たちは有無も言えず捕らえられ、城で消されていった。

異能者を匿った家族、友人、恋人は、全て殺された。

何故女王がそれほどまでに異能者を消したかったのかはわからない。

しかし、粛々を異能狩りは続けられていった。


「じゃああんたは異能者なのかい?」

「ううん、わからない。でもね、お母さんがそうだったの。すっごい当たる占いができて


ね、それでお父さんと一緒に仕事をしていたの。お父さんの友達が凄い困っていたみたい


で、お母さんはそれを助けたんだ。そうしたら、その人が---」

「国に密告したと。」

「…お父さんは隠していたって言われて捕まって。お母さんとわたしを逃がそうとしてく


れたんだけど兵隊さんが追ってきて、村の人たちも。お母さんは私を庇って…」


私が捨てられていたのも、そういうことなのだろう。

私は人間とは違う。それはよく知っている。

だから私は家族に捨てられた。あの人たちが罪に問われないように。

国に渡さずに森に捨てたのは、あの人たちなりの優しさなのかな。

私がこれまで密告されなかったのは、みんなが私のことを知っていたからだろう。

知っていながらいつまでも密告をしなかった。このことで村が罪に問われるかもしれない


まあ、そんなところだろう。


「で、あんたはこれからどうするの?」

「…」

「帰る場所とか行く当ては?」

「…」

少女は黙って、うつむきながら首を横に振る。


「あー、よかったらここにしばらく住むかい。」

何を言っているんだ私は。

「…え?」

少女は驚き、答にならない声で応える。

「いやだから、ここにいてもいいよって。掃除して欲しいし。」

人と関わるなんて止めたはずっだのに、何を血迷っているのだろう。しかもなんてらしく


ないことを言っているのか。

「はい、あの、でも…。」

「嫌かい?嫌なら別にいいんだけどさ。」

「嫌だなんてことないです!」

なんだちゃんと喋れるんじゃないかこの子。

「ただ、わたしは兵隊さんとかに捕まるかもしれないし、そうしたらあなたに迷惑がかか


って…。」

「大丈夫、私はさっき言ってた異能者だから。」


ああ、これか。これが理由か。

私のことを教えてくれた。そして、もしかしたら初めてできた私の仲間かもしれない。

私はただ、このこと一緒にいたくなったということか。

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少女×レジスト @nagi-is

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