1-4. 掃除

朝が来た。

なんということか。私は眠っていた。

珍しいこともあるものだ、と自らを少し笑う。


今度は覚えている。

小屋の中には少女がいる。

この子もゆっくりと眠っているようだ。


…人間って存外、強いものなのだな。


正直、脅えて震えて夜中のうちに消えているものかと考えなかったわけじゃない。

私に意思を投げてきた子供など、

私が睨みつけただけで泣き出して、逃げ出したものだったから。


…どうしよう。

これからこの子をどうするか、何も考えていなかった。

眠ってしまったからだ。

この考えなしをじいが見たらどう思うことかな。


私は自嘲気味になりながら、

じいとの約束を思い出した。

人間を恨んではいけない。

知っている。

知っているよじい。


とりあえず、この子が起きるまで放っておこうか。

勝手にいなくなってくれた方が楽だしな。

そう考え、木の枝拾いに出かけることにした。


…………


…………


帰ってきた。

少女は……

そこにいた。驚いたことに。

箒を持ち、床を撫でている。何がしたいのだろう?

そんなことを思いながら眺めていると、

少女がこちらに気付いた。


「あ、あの!」

「うん。」

「おはようございます!」

「・・・うん。」

「あ、いやそうじゃなくて。いやそうなんだけど、あの。」


いまいち要領を得ない子だな。


「ありがとうございます!」

「夜に聞いたよ。」

「え、あ、はい!ありがとうございます!」


・・・面倒くさい。


「なにをしているんだ?」

「掃除です!手持ち無沙汰だし何かしなきゃと思って。汚れていましたし。勝手にやっちゃってまずかったですか?」

「あー…いや…」


そーじ。

箒で床を撫でること。

そーじ。したこと無かったな。

汚れたらそーじか。

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