1-3. 会話

小屋の中には、少女がいた。

綺麗な見た目の少女が、泣いた様な顔で私を見ていた。

そりゃあ、そうだよな。私が入れたんだから。


「あ…あの!ありがとうございます!」


これは応えなくてはいけない言葉だろうか?


「わたし、村の人に追っかけられて。

お父さんが兵隊さんに連れてかれて。

そしたらお母さんが連れて逃げようとして。わたしを。

でもお母さんが捕まってわたし森に入って…」


これは聞かなくてはいけない言葉だろうか?


「あの、えと、それでその、・・・・・・。」


面倒くさいな。


「ありがとうございます…。」


面倒くさいな。


「そこ。」

「え?」

「そこにあるの使って寝ていいから。」

「え、でもあなたは…」

「私は私の寝方があるから。今日はもうおしまい。おやすみ。」


きっと彼女の言葉に応えていたら、関わった事になりそうだ。

そうしたら人間を恨んでしまうかもしれない。

それは、凄く面倒くさいことだ。


「あの、おやすみなさい!」

「…おやすみ。」


久しぶりに意味の通じる会話をしたな。

だから何ってこともないんだけどさ。

明るくなったらまたいつも通りの生活が始まるんだから。


おやすみ、世界。

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