1-2. 来訪

なんということはない、いつも通りの夜だった。

夜は眠る。そういうものだと知っている。

じいがそうしていたらだ。

しかし私はあまり眠くならない。

じいがいなくなってから余計に眠らなくなった。

きっと、私が只の人間ではないからだろう。


大きな声がした。

走る人間の音がした。

燃える火の音がした。

知っている。これは良くないことの前触れだ。

私は小屋の外に出る。



そこにいたのは、少女だった。



綺麗な金色の髪、艶やかな洋服、緋色の瞳。

どれも私には無いものばかりだ。


「…あ・・・」

「助けてください…!」

私は何か声を発そうとした気がするが、少女の声によりそれはかき消された。

余りにも悲痛な声。

少女は救いを求めてきた。


理由はよくわからない。

あまり深く考えるのが面倒だっただけかもしれない。

あろうことか、私はその少女を小屋に入れたのだ。

人間である少女と、関わりを持とうとしてしまったのだ。


その刹那の後、村の人間たちが松明を持ち現れた。

私は彼らを、彼女らを、さしたる興味もなく眺める。

そこからはよく見る光景であった。

私を見た村人たちは驚き、硬直し、たじろいでいく。

村人の一人が声をあげ、堰を切ったように小屋から離れていった。

いや、私から離れていったのだろう。知っている。


何度か経験したことだ。

今更こんなことで人間を恨もうとも思わない。

小屋に戻って、いつものように何かを考えよう。

退屈しのぎに、何かを考えていよう。

そう思いながら、小屋に入り口を潜る。




…忘れていた。

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