第5話

  今日は給料日なので事務所に向かう。

 駅前のビルには、様々な広告が飾ってあり、僕は知らないが世間では人気らしい女性の顔がビルの最上階から下方に一面に広がり、我々を監視するように大きな目が睥睨している。また駅ビルにいる人々が僕にはとてもキラキラして見えた。

 電車に乗り、事務所近くの駅で降り、徒歩で事務所に向かう。

 事務所の開閉ドアを押して、中に入った。

「久しぶりじゃないか!谷崎君」

 所長は大げさに言った。

「はい。」

「そうだ、そうだ、今日は給料日だった。」

 相変わらず嫌な奴だと思った。今日は給料日だと解っているのにわざわざ大声でいわなくていいのに。

僕は、所長の机の前に立った。

「はい。今月の給料とこの間のボーナス。」と言い、僕に金の入った封筒を渡した。

 僕は、封筒を開け、紙幣を数える。いつもよりも多い。

 40万円が中に入っていた。

 少ない。右腕を失うことまでしたのに。

 殺し屋が暗殺するさいにしなければいけないことを我々の会社は、分業化しているので暗殺にかかわる人間が増えたことにより、分け前は少なくなる。しかし、分業化のおかげで暗殺の成功率も格段に上がった。

 所長は僕に手をひらひらさせて、こっちに来いと合図をしている。特別室に僕を入れて、サシで話し合いたいことでもあるのだろう。

 僕も所長とサシではなしたかったので都合がいい、僕は特別室に入る。

 特別室は主に来賓のために使われるので室内は豪華だ。動物の置物があったり、座り心地のよさそうなソファーがある。

 所長は、ソファーに座り、ポケットから煙草を取り出し吸い始める。

「この間は良くやってくれたと言いたいところだが、右腕を失った駄目だ。使いのものにならなくなる。」

「ということは僕は処分されるんでしょうか?」

「いいや。どうやら上の方は君を高くかっていて、このまま仕事をしてもらうことになる」

「実行部隊を外れて、他の部署に移るんですか?」

 煙草の煙を吐きながら所長は続ける。

「そのまま。ここの部署に引き続き残ってもらう。上が君に合う義手を用意してくれるらしい。」 

「そうですか。」

「私としては上に従うだけだか、君にそんな期待できるようなものはないと思うがね。」

「君の義手については園絵恵子が担当し、連絡も彼女経由で来る。」

 その後、事務所に残っても出来ることもないのでとっとっと帰ることにした。

 僕はファミリーレストランでステーキを食べた。

 何カ月ぶりのステーキを良く噛んで、飲みこむ。

 ファミリーレストランから出た後、幸福を噛みしめながら、帰路に着く。

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資本主義的殺し屋稼業 ザイロ @kokoca

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