第15話 忍耐

公太は夜に家を出る。扉の前に立つ。

母親「気を付けて、いってらっしゃい」

良太「うん」

良太≪では、アルゴ先生。よろしく、お願いします≫

アルゴ≪うむ≫


扉を開けて、夜の街にでる良太。

良太「さぁ、やるぞ!!」

アルゴ「元引きこもりには、辛そうだな」

良太「うっ!けど、昔はそこそこだったよ・・・」


そして、夜の街を走り出す。

良太「ホッ、ホッ、ホッ」

アルゴ≪大変だな人間は≫

良太≪そうかも・・・なぜ走ってるのかわからなくなるよ≫

アルゴ≪マラソン大会のためだろう≫

良太≪・・・そうだった≫


季節冬になり、学校での校内マラソン大会が迫っていた。

そのために、トレーニングを始めた。

良太「ここまで、へっ、へっ」

アルゴ≪自分を、自分で苦しめる人間がわからん≫

良太≪僕らはこうでもしなきゃ、強くなれないんだ。部品とか、かえて強くなったら楽なのに≫

アルゴ≪そうだな・・・不便な肉体だな≫


翌日、学校に行く良太。教室の机で上半身を寝かす。

良太「う~」(体の節々が痛い)

アルゴ≪筋肉痛だな、それは≫

良太≪わかってるよ!!≫

アルゴ≪馬鹿でも知っていたか≫

良太≪なっ!?≫

美紀「どうしたの?辛そうだけど、良太君」

良太「いや、昨日マラソンの特訓してたら・・・筋肉痛に・・・」

公太「何!!特訓だと!!」

良太「へっ?」


公太が特訓という言葉に食いつく。

公太「俺もしたい!!良太!!」

良太「いや・・・筋肉痛が」

公太「大丈夫だ!!筋肉は、切れて強くなるんだ!!」

良太「えっ?」

公太「よし!!放課後特訓しよう!!良太♪」

良太「・・・」(うううう)

アルゴ≪こいつは、あほだな。筋肉は切れて、治って強くなるんだ。切れてるのに、切ったら断裂するぞ≫

良太≪・・・断裂?≫

アルゴ≪肉離れともいう≫

良太≪・・・≫


そして、放課後校庭を走る二人。

公太「うぉおぉおおおおーーー」

良太(早すぎるよ!!公太!!何食ってんだーーーー!!)

アルゴ≪あいつの身体機能は無駄に高いな。中学1年の平均を軽く凌駕しているな≫

良太≪消防士になる男だからね!!≫

アルゴ≪消防士と関係あるのか?≫

良太≪だって筋肉必要でしょ?≫

アルゴ≪過剰にはいらないぞ。平均程度あれば十分だ≫

良太≪そうだったのね・・・≫

公太「うぉおおおおおおーーー!!」


そうして、特訓の日々は続く、美紀もたまに覗きに来た。

美紀「ほい、二人ともお水」

公太「サンキュー」

良太「ありがとう、末永さん」

美紀「運動部にでも入ったら?」

公太「スポーツがしたいわけじゃないからな。消防士になりたいんだ、俺は!!」

良太「僕もあまり」

美紀「良太君、運動神経よくなかった?」

良太「いや・・・引きこもりの弊害が・・・」

美紀「あっ・・・」

公太「弊害?なんだそれ?」

美紀「じゃあ、私は部活に戻るから」

良太「末永さん、わざわざありがとうね」

美紀「少しづつ、恩を返さないとね♪」


美紀は去っていく。アルゴが美紀の発言を受けてしゃべりだす。

アルゴ≪お前もそろそろ、俺に恩を返したらどうだ?≫

良太≪いや・・・感情おしえてるでしょ・・・≫

アルゴ≪あれだけでは足りんぞ!?俺の助けてる回数の方が多い!!圧倒的に!!≫

良太≪・・・頑張って、お返しします・・・≫(否めない・・・)


そして、良太の体力も徐々に回復を見せる。

良太「やった、自己ベスト更新だ!!」

公太「いいぞ♪いいぞ♪」

アルゴ≪確かにタイムが縮まってるな≫

良太≪どんなもんだい♪≫

アルゴ≪そこは機械にない部分かもしれないな。まぁ、パーツ1つでたやすく超えるがな≫

良太≪夢も・・・努力もない・・・≫


良太は公太に話す。

良太「公太は・・・学年1位とかなれそうだね」

公太「おう!!目指してるからな」

良太「すごいな・・・」

公太「お前もライバルだぞ良太♪」

良太「・・・勝てないよ・・・」

アルゴ≪無理だな・・・≫

良太≪アルゴはひどいな・・・事実だけど・・・≫


そうして、マラソン大会当日を迎える。

公太「おし!!」

良太「頑張るぞ!!」

アルゴ≪寒いのに運動すると体に悪いのにな・・・命も危ないぞ≫

良太≪マラソンはそういうものなの≫

アルゴ≪ほんとよくわからん≫


スタートの合図が鳴らされる。

公太「うぉおおおおおおーーー」

良太(とんでもないスピードだな・・・・)

アルゴ≪まぁ、あいつが一位だな≫

良太≪そうだね・・・≫

アルゴ≪恩を貸してやろうか?勝てるぞ≫

良太≪ずるはしない!!≫


良太は走っていく中盤くらいに位置する。

良太「はっ、はっ、はっ、」

アルゴ≪どうした!!どうした!!そんなものか!!走れ!!走れ!!≫

良太≪アルゴ、応援してくれてるの?≫

アルゴ≪しつけをしている≫

良太≪はい、ご主人様・・・頑張ります≫

良太(なんか、楽しいな・・・・結構走れてるな・・・公太との特訓のおかげだな)


少しずつ人を抜いていく、良太。

アルゴ≪現在、34位だ≫

良太≪そこまでわかるの?≫

アルゴ≪・・・適当にきまってるだろ≫

良太≪・・・≫(機能性に嘘がはいるのはよくないぞ・・・機械なのに・・・)


ただ、近くの異変に気付く。川べりを走っていると気付く。

良太「あれ・・・」

  (反対側の土手に・・・金髪の人が・・・)

アルゴ≪あれは、公太だな≫

良太「公太!?」(コースはずれてるよ・・・)


良太は公太をよーく見ると止まっている。誰かうずくまっていた。

良太は公太の方に走っていく。

良太「公太!?」

公太「おっ、良太!!頼む、この人苦しそうなんだ」

良太「えっ?」


うずくまっている老人がいた。胸を押さえている。

老人「ううう」

公太「病院に運ぶから手伝ってくれ!!」

良太「わかった」

アルゴ≪だめだ!!死ぬぞ≫

良太≪えっ?≫

アルゴ≪下手に動かすな、何の病気かわからんからな。素人が手を出すのは危険行為だ≫

良太≪じゃあ、どうすれば?≫

アルゴ≪プロを呼べ≫

良太≪携帯ないし≫

公太「早く!!」

良太「だめだ!!公太!!何の病気かわからないから、うかつに手を出しちゃ」

公太「じゃあ・・・どうすれば」

良太(どうしよう・・・どうしよう・・)

アルゴ≪バカ!!そこらへんに電話はたくさんあるだろう≫

良太≪えっ?≫

アルゴ≪家があれば電話があるはずだ。そこらへんの民家で借りろ≫

良太≪そうか!!≫

良太「俺が、119に電話してくるから、公太はここで見ててあげて」

公太「おう、頼んだ!!」


良太は民家を訪ねる。

良太「すいません!!電話を貸してください!!老人が倒れてて、救急車を呼びたいんです!!」

民家の人「それは、大変すぐに電話しましょう!!」


そうして、無事に老人は救急車で搬送される。

救急隊員「ありがとう君たち!!」

良太・公太「あと、お願いします!!」


良太と公太は走り出す、ゴールに向けて。

良太「これで、一位じゃなくなっちゃったね・・・」

公太「別にそんなのどうでもいいよ♪あのひとが助かれば♪」

良太「公太はほんとすごいな」

公太「良太のほうがすごい、指示が的確だ」

良太「いや・・・」(ほとんどアルゴなんだけど・・・)

アルゴ≪そうだ、貸が増えてくぞ≫

良太≪闇金みたいだな・・・≫

アルゴ≪そうか、利子をつけるか≫

良太≪ごめんなさい・・・≫


二人は最後だった。マラソン大会の最後を飾る。校内にダッシュで入ってくる二人。

公太「うぉおおおおおおーーー」

良太「うぉおおおおおおーーー」

先生(最後だけ元気なのか・・・)

美紀「頑張れ!!二人とも!!」


公太が先にゴールする。良太は少し遅れてゴールする。笑っている二人。

公太「ふふ」

良太「くそ~」

美紀「二人ともビリッケツなのに楽しそうね」

公太「まぁな」

良太「そうだね」

良太・公太「ハハハ」

美紀「?」

アルゴ≪わからん≫


そうして、後日体育館で表書式がおこわなれる。10位までの生徒達が呼ばれていく。

良太「くそ・・・ほんとは公太が一位なのに~」

公太「別にいいって♪」

先生「最後に特別賞を発表する」

良太「?」

先生「公太と良太!!」

良太・公太「えっ?」

美紀「?」


先生から内容が言われる。拍手が二人に贈られる。

先生「お前ら、マラソン大会中にご老人を助けたらしいな。感謝の電話があった」

  「ご老人の方もお前らのおかげで無事だ。」

  「だから、お前らに特別賞をやる先生は!!みんな二人に拍手!!」

良太「////」

公太「ふふふ♪」

美紀(そういうことか・・・公太がビリ争いなんておかしいしね♪良太君もだけどね♪)



布団の中でアルゴと話す。

アルゴ「今日の・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

良太「ためるね・・・」

アルゴ「感情は!!」

良太「・・・忍耐かな・・・マラソンは忍耐だ!!」

アルゴ「忍耐か。覚えとく」

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