第14話 達成感
良太たちの特訓は続いた。だが、美紀の歌は向上しなかった。
美紀「・・・ごめん」
公太「えっ?」
美紀「付き合ってくれてるのに全然うまくならなくて」
良太「そんなことないよ」
公太「何言ってるんだ、末永?」
美紀「だって・・・」
公太「お前の歌は、俺の魂の歌をかき消したんだぞ・・・うまいだろう」
美紀「えっ?」
良太「公太・・・そうだな・・・個性かもしれないよ」
美紀「個性?」
良太「末永さんにしか歌えない歌なんだよきっと♪」
美紀「二人とも・・・ありがとう」
アルゴ≪物はいいようだな≫
良太≪そうかもしれないけど・・・落ち込んでる末永さんを見たくはないんだ≫
アルゴ≪不思議なものだな・・・お前らは。理屈がチンプンカンプンだ≫
良太≪そうだね、アルゴ≫
そうして、クラスでの練習もこなしていくが事件が起きる。公太が言いかけると先に良太がいう。
女生徒「末永さん・・・下手だわ」
美紀「えっ・・・」
女生徒「歌わない方がいい」
デブ男「そうだ、そうだ!!」
デブ川「俺もそう思う!!下手過ぎる!!」
公太「お前ら」
良太「お前ら何様だーーーーーーーーーーーー!!」
公太・美紀「!?」
良太「お前らがどんなに歌がうまかろうが、俺は知らないよ」
「心が汚い奴の歌声は聞いてて、気持ちが悪いんだ」
「お前らこそ歌うな!!」
アルゴ(屁理屈ばかりだな・・・)
女生徒「なに、心が汚いって!!」
公太「だって、そうだろう」
女生徒「なっ!?」
良太「言い過ぎたけど・・・末永さんだって、必死に練習してるんだ。それを馬鹿にするのは良くないと俺は思う。」
「だって、みんなで歌うから合唱なんだよ」
アルゴ≪それはお前が正しい。合わせなければ、合唱にはならんな≫
美紀はそれを聞いて涙ぐんでしまう。
美紀「・・・・」(あの時と一緒だ・・・)
美紀と良太は小学校が一緒だった。そのときも同じようなことが起きた。
女生徒「末永さん・・・歌声が汚いよ・・・」
美紀「えっ・・・」
良太「やめろよ!!」
女生徒「なによ!!」
良太「みんなで歌うから合唱なんだ。一人かけてもだめだよ!!」
先生「良太のいう通りだ。みんなで歌うから合唱なんだ。末永もちゃんと歌え♪」
美紀「・・・はい」
そして、美紀は良太に感謝する。ただ、6年生の時クラスが違ったため、良太の事件にはあとで気付いた。
美紀(あれ・・・良太くん学校にいないな・・・転校!?)
慌てて、教師に確認しにいく美紀。
美紀「あの、良太くんって転校しちゃったんですか?」
先生「転校はしてないんだけど・・・いや・・・ちょっとな・・色々あって・・」
美紀「え・・・」
美紀は事情を聴きだす。良太がいじめられていたことを。後悔した、恩を返せなかったことを。
美紀(私は助けてあげられなかった・・・あの時助けてもらったのに・・・)
(ごめん良太君・・・ごめんね)
教室に話は戻る。
公太「まぁ・・・良太の意見に賛成だ、俺は!!」
男子生徒「なんとなくそうだな」
女生徒「なっ?優勝したくないの?」
男子生徒「する必要がそんなにあるか?」
良太「・・・」(あの時とは違う・・・公太がいる)
公太「いいじゃん!!楽しく歌えばそれだけで!!優勝して何かもらえるわけでもないし」
美紀「公太・・・」
女生徒「それは・・・」
アルゴ≪優勝に意味がないなら、なんでもいいだろう。それに、お前ら非生産的なことしてるのに、何を求めてるんだ?≫
良太≪う~ん・・・自己満足ってやつかな・・・≫
アルゴ≪わからん≫
良太≪僕もだよ、アルゴ≫
教室に先生が入ってくる。
先生「なんか、騒がしかったけどなんかあったか?」
女生徒「先生は優勝したいですよね?合唱コンクール?」
先生「えっ?」
公太「それか、みんな楽しんで歌う方がいいか?」
先生「・・・そういうことか」
先生は話始める。それを聞いて良太は閃く。
先生「俺は、みんながたのしければいいと思う。ただ、優勝したいってやつがいてもいいとは思う。どっちも大事だからな」
女生徒「答えになってません!!」
良太「そうか!!」
女生徒「えっ?」
良太は話始める。
良太「それでいいんじゃない!!両方で!!楽しんで優勝する!!」
「どっちかだけにしなくても♪」
公太「それはいいな♪良太さすがだ!!」
先生「俺もそれがいい」
女生徒「・・・」
アルゴ≪うん?優先順位の問題だろう・・・どっちをとるかだ≫
良太≪違うんだよ・・・どっちもとるのがいいんだと思ったんだ≫
アルゴ≪条件が成り立つのかそんなもの?≫
良太≪条件はわからないけど・・・可能性は0じゃない≫
アルゴ≪そうか・・・納得した≫
そうして、クラスは一つの目標を立てる。
目標「みんなで楽しんで、優勝する!!」
放課後美紀が良太に話しかける。
美紀「また・・・助けてくれてありがとう」
良太「えっ?」
美紀「覚えてないか・・・そうだね。良太君はそういう人なのかもね♪」
良太「うん?」
美紀(自然に誰かを助けちゃうのかもしれないね、良太君は)
そして、合唱コンクール当日を迎える。
先生「じゃあ、みんなで楽しんで、優勝しよう!!」
生徒一同「ハイ!!」
合唱コンクールが始まる。結果は。美紀は泣き出してしまう。
先生「やりきったな」
女生徒「やりきりました」
美紀「・・・」
良太「やったね、末永さん♪」
公太「優勝だ!!」
美紀「うん・・・ううう」
コンクールでは、公太の魂と末永さんの魂がうまくまじり、人に感動を与えた。
公太なしでは、だめだったかもしれない、末永さんなしでは、だめだったかもしれない、他の生徒達がいなければ、だめだったかもしれない。みんなでとった優勝だ。
布団でアルゴと話す。
アルゴ「ららら、今日の、ららら、感情は♪」
良太「アルゴまで、歌いだした♪」
アルゴ「何故かわからんが、そういう気分なんだ」
良太「気分か?おもしろいな、アルゴは」
良太「そうだな・・・達成感かな。やりとげたから♪」
アルゴ「達成感か。覚えておく」
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