エピローグ: 或いはプロローグ
2087年4月9日二〇時五八分 ???
闇が辺りを包み、半分よりも少し顔を出している月が天井のモザイクガラスを通り抜け明かりを灯している。
そんな神殿の更に奥、そして更に地下へと降り完全に光が届かなくなったところにある一室。
その部屋は蝋燭だけで部屋全体を灯している。
部屋の中には二人の男女が居た。
男は机に置いてある設計図を見下ろしながら語った。
「ねぇ、君は霊の存在を信じるかい?」
「霊、ね。それは難しいわね。人間は目に映らないものを基本的に拒む傾向にあるわ。かく言う私もその類の人間だと自己評価しているわ」
「謙遜だねぇ。君ほどの人がそんな評価をしているなんて」
「私は自分自身を語るのに過大評価をしないだけのことなのよ。それで、霊の存在がどうかしたの?」
「人間は目に映らないものを拒む。その意見は僕も賛成だ。だが、それは少し言葉が少ない気がするね。詳しくは、目に見えず・耳に聞こえず・手で触れることが出来ないものを拒むんだ」
「そうね。で?それがどうしたの?」
「ならば、その3つの内の一つでも証明できれば、霊の存在を証明出来たことになるのではないかな」
女は男が何を言いたいのかをすべて理解した。
「つまり、霊の証明をするために私の力が必要、という事ね」
「話が早くて助かるよ。さすがだ」
「言ったはずよね?私はもう【アカデメイア】から抜けるって。地下に籠っているあなたには私が直接言いに来たはずだったのだけど」
「そうだね。でも、これには君の力が必要なんだ。僕の理論と君の発明が加われば必ず実現するんだ」
そこでようやく男がようやく女の方を向いた。
「手を貸してくれ、染璃」
黒い長髪を後ろで一つに纏めている女性・染璃は男の言葉に少し悩んでから答えた。
「………これが最後よ、ニヒル」
色白の肌と白い髪を持つ青年ニヒルは柔らかく笑みを浮かべる。
「ありがとう」
「それで何を証明するの?」
「『声』だよ。霊の声を証明する」
「『声』、ね。となると、作るは携帯のようなものかしら」
「意見が合うね。僕もそれを考えていたんだ。設計図も完成させている」
そして、ニヒルは設計図は染璃に渡した。
「これは?」
「降神術を利用して霊と対話することが可能とする機械。名前はそうだなぁ。降神術から取って――――――【テウルギア】と名付けよう」
2087年4月。
世界初の【テウルギア】が完成されるのは2年後。最悪の存在【グリモアンデット】が出現するまであと4年。
これが最悪へのカウントダウンとなる、始まりの対話であった。
原初の意志—テウルギア— 鷺山多那加 @takito
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