それでも
僕も君と同じだったよ。走って前へ進むことだけが唯一正しいことなんだって信じこんで、いつも一番前にいようとした。だけどね、一番になろうとすればするほど、一本道に対する違和感が否めなくなっていった。僕の向く「前」はこっちじゃないのかもしれない、ってね。でもどっちが前かなんて誰もわかりやしない。決まってないからさ。だから僕は城に入るのを、それ以上進むのをやめたんだ。
君はこの世界の何を嫌う? どうしてその境界線が越えられない?
きっと不安なんだ。自分は本当に正しいのかって。目的地をここに決めたのは君自身かもしれない。けれど君に走れと言ったのは誰だ? おそらく君じゃない。僕のときも僕じゃなかったからね。同じだ。残念ながら世界はそう簡単には変わらない。どこかの城へ走ることは、間違っているのかもしれない。もしそうだとしても、今は走るしかない。
けれど、絶望しなくたっていい。ためらいのない人なんてそうそういないんだ。本当に良いのかわからないなら、本当に悪いのかもわからない。決まってないのなら君が決めてやればいい。そうだろう? 良いも悪いも表裏、どちらを選んだとしてもその正誤は君の感情にしかわからない。だからこの向こうも悪いところじゃない。大丈夫、僕が保障するよ。
―――さあ、行っておいで。
そしてまた三年の時が満ちた。
あのとき真珠色に輝いていた城は、気づけば灰色にくすんでいた。
それでも一歩を踏み出した。
世界が、誘うように光った。
真珠色の城 露草あえか @dr0p-aeka
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