第9話
バトリクが倒れた後、速やかに治療が施された。命に別状はないようだ。もっともその様に攻撃したのだから、当然である。
我らの闘いが終わると、4人の人間が場に入ると、何やら言葉を紡いだ。すると、闘いで荒れ果てた大地があっという間に、元の姿を取り戻した。
そして、その次はギルド長であるクラエスと共に部屋に戻る。
クラエスは席に着くと開口一番、
「おめでとう。君の力は本物であった。
これで君もSクラスだ。ようこそ、この化け物の世界へと言うべきかな」
さも楽しそうに、嬉しそうにそう述べた。
これを聞くに人間の中でもバトリクは規格外の強さを持つようである。あのレベルの人間がごろころいるとすれば、苦戦必至であるため少し安堵した。
「ふむ、まあよい。それだけではないのだろう? 続きを言うがよい」
気持ちよく豪快に笑った。
「まったく。その態度も実力に裏打ちされているのだから、仕方がないと言うべきか。
もちろん、何も祝辞や皮肉を言うために呼んだのではないよ。
と言うのも、この後君は正式にSランクとして任命を受けるだろう。ギルド長の私が言うのだから間違いない。
それでだ。Sランクになれば、様々な恩恵を受けることが出来る一方で、少なからず義務も発生する。
それを君にも担ってもらうわけだが、簡単にではあるが、実績を積んでもらいたい」
そう言って机の上に何やら文字が書かれた紙が数枚置かれた。
「護衛、討伐、探索。冒険者の花形の依頼であるこの3種類を経験してもらう。
護衛では貴族との人脈を持ってもらい、討伐では実力を示し、探索では総合的な能力を見せてもらいたい。
出来るかな?」
問いかけてはいるが、反論は許さないと言ったところか。いい加減このような回りくどいのは止めてもらいたいのだがな。
「貴様こそ我を誰だと思っている? 無論、可能だ。すぐにでも行えるか?」
「そう言ってくれると思っていたよ。だが、今すぐには出来ない。せめて仮発行証を受け取るまでは待ってもらいたい。それがあれば、すぐにでも可能だよ。
君とて、休養は必要であろう?」
我に休めとな。笑わせてくれる。だがまあ、整理しなければならないことが多いのも事実だ。ふむ、ヤコブにでも案内をさせるとするか。
「良いだろう。時間をもらうとしよう。して、その仮発行証とやらはいつ出来るのだ?」
クラエスはあご髭を撫でつけながら、思案する。
「そうだな。これから先程の試験の結果を議論し、関係各所との連絡を取るゆえ……3日、いや、5日後には発行証を出すことを約束しよう」
5日というのが、早いか遅いかは分からぬが、まあ良い。どのみちそれが無ければ、動けないのだろう。人間というのは面倒なものだ。
「分かった。では、なるべく急げよ。
話はこれで終わりか? ならば、我は行くが」
「ああ、これで終わりだ。
今日はご苦労であった。ゆっくり休んでほしい」
形ばかりの労いを、鼻で笑いその場を後にした。
部屋の外に出ると多くの人間に混じりヤコブが立っていた。我を目にすると真っ先に駆け寄ってきた。
「で、旦那どうでした?」
「どうということはない。我がSランクとやらになるだろうとのことだ。
それよりも調べたいことがある。付いて来い」
ヤコブは快く頷き、揉み手をした。
獅子王の冒険譚 こう茶 @yual
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