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耳環と片腕 ~万葉浪漫譚~

耳環と片腕 ~万葉浪漫譚~

九藤 朋

おすすめレビュー

★で称える
★★★
★29
10人が評価しました
本文あり
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本文ありのおすすめレビュー

  • 水菜月
    238件の
    レビューを投稿
    ★★★ Excellent!!!

    心だけはどんな時代をも覆うことなく気高かった。

    万葉の時代。あの歌詠みの頃。
    兄弟も親子も争いの渦の中に置かれ
    誰もが裏切りに疑心暗鬼となる、悲しく美しき時。

    中大兄皇子という偉大な父を持ち、時代に翻弄される若者がいた。
    志貴皇子。第七皇子ゆえ、自由に見えた彼の行末。

    彼を慕う豪族の雄高との、わずかに心通わせる時間。
    片耳に下がる翡翠の勾玉は
    高貴で美しき新緑の色となり、雄高の心を捉えていく。

    芽吹いたばかりの早蕨を、私も愛でてみたいものだ。
    二人が語り合った山野は
    果たして何度、四季を繰り返しているだろう
    今もそこに似合った色が漂っているだろうか。

    作品が落としていった水紋を
    幾つ拾い集めたなら、その思いに辿り着けるだろうか。

    • 2018年12月12日 09:27