第300話 ガイアゲンの戦闘跡

 ガイアゲン商会本部へ着いた二人、何十もの大小の松明、ランタン類が赤々とかざされ、人が集まり、騒然とした様子と、商会本社の建物の一部が崩壊しているのを見て、度肝を抜かれた。


 「まさか……ここで戦ってたの……!?」

 マレッティも驚く。二人は、どさくさにまぎれて裏門から素早く敷地内へ入った。


 スティッキィがフードを取り、顔なじみの衛視を探すと声をかける。すなわち、その衛視もメスト関係者である。二人は松明から離れ、暗がりで声をひそめあった。


 「ちょっと、何があったの?」


 「はい、バグルスと、他組織のメストが襲撃してきたのですが、たまたまおられたカルマのお二人が撃退してくれたのです」


 「たまたまって……」


 スティッキィは破壊された本部建物を瞠目した。補強されたレンガ建築物に、まるで竜が突っ込んだような大穴が空き、屋根も梁から折れて、基礎も崩れて建物全体がゆがんでいる。


 「人間のガリアで、あんなことができるものなの!?」


 「カンナちゃんを、そこらの人間と思っちゃだめよお。ダールだと……いや、もしかしたらダール以上かもしれないんだからあ」


 二人へ近づいたマレッティもフードを取る。同じ顔が出てきたので、衛視が目を丸くした。

 「お姉ちゃんよ。カルマのマレッティ。メストになったから」

 「は……ハッ!」

 衛視が身を正し、礼をする。


 マレッティは頭の雪をほろいつつ、顔をしかめた。こうなっては、アーリーとカンナへスティッキィを紹介せざるを得ない。


 (どうやって紹介しよう……)

 そんなマレッティの胸の内を、スティッキィはすぐさま見抜く。

 「隠れてようか?」

 「いやっ……そういうんじゃないけど……」

 「いずれ殺す相手?」


 マレッティが驚いて妹を見つめる。そのまま、二人して不気味な笑顔を見せあい、声を殺して楽しそうに笑いだす。衛視が、気温のせいだけではない寒気に震え上がった。


 「ま、今すぐじゃないけどねえ。あんな連中、下手うったら返り討ちだし……」


 「ダールに、ダールみたいな謎のウガマール人……暗殺し甲斐があるじゃないのお。それより、人の身でそんな凄い人たちの仲間なんて、やっぱりお姉ちゃんは凄いわあ」


 「え、そ、そお?」

 意外な観点を指摘され、マレッティは戸惑った。

 「そおよお。さすがマレッティだわあ」

 「ま、まあ、そうかもね」


 まんざらでもなさそうに、マレッティが頬をゆるめる。スティッキィが醒めきった眼を読まれまいと、微笑むふりをして細めた。


 (変なところで単純なのは相変わらず……ふふ、可愛いマレッティ。こっちも殺し甲斐があるわあ……フフ……フフフフ……ク、ケ、ケケッ、ケクッ……)


 それはそうと、アーリーとカンナはどこにいるのか。


 衛視に調べてもらうと、住居棟でレブラッシュ達と共にいるという。二人が来たことを伝えてもらうと、すぐに来るように云われたので、衛視についてゆく。

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