第206話 ダール・リネット
「いいことお、カンナちゃあん。この世に、お化けなんていなんだからあ。わかったあ?」
「え!? あ、はい……」
アーリーが、仁王立ちでリネットへ迫った。
「リネット。ギロアは死んだ。バセッタはどこだ!?」
ハッ、とマレッティが息を飲んだ。
リネットも、屈託の無い笑顔が一瞬消え、鋭い視線をアーリーへ投げた。が、それは本当に一瞬で、立ち上がると埃を払い、また笑顔になる。
「やっぱり、ひいばあちゃんを探しに来てたんだね。サラティスのカルマ、赤竜のダールにして炎熱の先陣、アーリー」
「ひいばあちゃん!? あんたの!? あのミイラが!?」
アーリーとリネットが、同時にマレッティを見た。マレッティはあわてて、ガリアの明かりで光る手で口を抑えたが、もう遅い。
「見たんだね。あのバグルス……君たちが倒したみたいだけど、毒か何かで、ボクの口を割らせたんだ。あの洞穴で……ひいばあちゃんは、もう何年も前にあそこで死んでいるんだ。青竜のダール、深き伝道、バセッタはね」
「そうか……ではリネット、おまえが?」
「そうさ」
リネットはすらりと長い手を腰に当て、不敵な笑みを口元に浮かべて云った。
「ボクが青竜のダール、リネットさ。青竜の玄孫にあたるから、力は弱いし血も薄い。半竜化もできない。だから、きっと暫定なんだと思うよ」
「暫定ダールだと……!?」
アーリーも驚く。聴いたことがない。記録にも、あったかどうか定かではない。
「ふうむ……」
アーリー、顎に手を当て、考えこんでしまった。
「でも、あんたさあ」
マレッティが、まじまじとリネットを見つめ、片眉を上げて云った。
「あのバグルスの毒の刺を食らって生き返るんだから……確かにダールだわあ。あたし、そう思う。あれにやられたんでしょ? あの尻尾の先の……あれはヤバイわよ」
リネットは相変わらずの屈託の無い笑顔を見せた。
「ははは、回復力だけはダール並さ」
「いや、もともと青竜は導きを司り、浄化と回復の象徴だ。血が薄くとも、私より回復力はあるだろう」
「そうなんだ……」
アーリーの説明に、マレッティは何か納得ゆかない、不思議な感触をリネットに感じた。そもそも、竜の玄孫のダールというのが、いまいち信じられない。
「あんた、ガリアは遣えるの?」
「いちおうね……でも、サラティスで云うならセチュさ。とても竜と戦うようなものじゃないよ」
「ふうん」
マレッティが、
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