第205話 復活

 「あっしは、バーレスへ戻って、みなを連れてきます。どうするか、相談してきめて……明日のいまごろにゃ、ウベールさんたちを連れて戻ってきやすから」

 「分かった」

 アーリーと漁師で乗り上げた船を海へ戻し、風をみて、漁船は颯爽と海を渡って行った。

 「で、あたしらは、明日までこいつらといっしょにいるの?」

 マレッティが周囲の難民をみて、いやそうに云った。

 「丘の上に、ギロ……バグルスが住んでた館がありましたよ。昔の領主の館だったとか」

 カンナ、その館を自分が破壊した記憶がない。

 「なまいきに、そんなところに住んでたんだあ、あいつ。行ってみる?」

 「探索する価値はありそうだな……いったい、どのダールの手の者なのか」

 それを聞いてカンナ、記憶を呼び戻したが、完全に失念した。ギロアは、なんというダールの手下だったか。

 とにかく、一言もなくただ震えながら火に当たっている人々を尻目に、三人は丘を登った。

 

 既に晩秋の日は傾いて、暗くなってきた。屋根のあるところで休めると思っていたマレッティだったが、

 「なによこれえ! 誰が壊したのお? さっきの竜う!?」

 完全に破壊された館に肩を落とす。

 「……内側から破壊されているな。何者かが、館の中より破壊したのか?」

 ちらり、とカンナを見たが、カンナも唖然と破壊の跡を見ているだけだったので、何も云わなかった。

 マレッティがガリアの明かりを右手より出し、周囲を探索する。そしてすぐに仰向けにひっくり返って白目をむいているリネットを発見した。

 「こんなとこでなにやってんの、この子」

 アーリーも、瓦礫の下敷きとなって死んでいるルネーテを見つけていた。カンナは初めてルネーテの死を知って驚いた。が、リネットがどうしてここにいるのか、まったく分からない。

 「死んでいるのか?」

 アーリーに云われ、マレッティ、リネットの首筋に手を当てた。

 「死んでるわあ」

 と、肩をすくめた瞬間、その死んでいるはずのリネットがビクビクと痙攣し、さすがのマレッティが悲鳴をあげて尻餅をついた。

 「お、おばけええぇ!!」

 どんな竜でもまるで恐れないマレッティが、妙なものに弱いのだった。カンナはそんなマレッティを初めて見たので、声も無い。

 リネットがゴキゴキと関節を鳴らして、不気味な動きで上半身を起こした。首の後ろへ手をやってさすり、激しく咳き込んだ。

 「イタタ……いやあ、えらい目にあったよ」

 「なっ、な、なによあんた! なんなの!? い、いま、確かに死んでた……!」

 「えっ? そうなのかい? バグルスに襲われたのは覚えているけど……」

 リネット、生き返っても調子は変わらない。

 と、カンナが目を丸くして自分を見ていたので、マレッティはあわてて立ち上がった。腕を組んで咳払いをし、

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る