第45話 ガリア消滅
「そいつはだめだ、ヤームイさんよ。あくまで、俺たちはあんたの補助なのだから。バスクは、立場をわきまえるもんだ」
「いいの。私は何もしてないし……」
ヤームイは、そしてぽろぽろと涙をこぼし、無理に笑みを作った。
「私、バスクを辞める」
「なんだって?」
アートが聞き返し、カンナも驚いた。
「だって、私たちは、二人で可能性74だったんだもの。一人じゃ37。セチュだわ」
「しかし……」
「それに……もうだめ。心が折れちゃった……ガリアが出ないの。勝手に消えて……そのまま出なくなっちゃった……これじゃあ、竜は倒せない」
そんなことがあるのか。だが、そう云われたら、何も云い返すことは無かった。
「じゃあ……みんな、死なないで。竜を倒して。倒し続けて。この世から、すべての竜を! ……さいごに、いっしょに戦えて良かった。ありがとう」
アートもカンナも、無言でヤームイを見送った。
3
都市政府による駆逐竜の退治報酬は、一頭十カスタだった。三頭倒したので、三十カスタを手にした。アートとクィーカのふだんの退治の十倍以上で、申し分の無い額ではあったが、
「思ってたより少ないな。あんなに手強いのにこれだけかよ」
夕食後、クィーカを寝かしつけ、グラッパをちびちびやりながら、アートは不満げだった。カンナはぼんやりと蝋燭の火をみつめていた。
「なあ、あんたはどう思う?」
「えっ? ……いや、特に、なにも……」
「欲が無いな。ま、金を出すのは都市政府だ。都市政府が税を集めるのは俺たちじゃない。農民や商人、それにバスク以外の都市の住民……。彼らを襲わない……バスクしか襲わない竜に出す金は確かに無いだろうよ。駆逐竜はバスクで勝手に退治しろってか……」
真鍮の小さなカップを一気にあおる。
「納得いかないが、しょうがない」
「寝る……」
「ゆっくり休めよ」
奥の納戸が空いているので、そこを片づけてカンナの部屋にする予定だった。今日は、クィーカの部屋の隅に毛布を敷いて横になる。クィーカは深く寝息をたてていた。メガネを外し、窓際へ置く。横になってぼんやりとした夜空をその窓から見ていたが、やがてカンナも眠りについた。
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