第39話 双子のバスク

 「悪いね、こんな仕事を頼んじゃって……」

 「いいってことさ。誰かがやらないとな」


 二人のコーヴは、アートほどではないが女性にしては二人とも大柄で、肩幅も広く腕が太かった。ダークブラウンの長い髪を一人はポニーテールに、一人はツインテールにまとめ、頬に赤でペイントをし、見たこともない鳥の羽の髪飾りをつけている。顔だちや雰囲気も似ており、姉妹だという。いや、双子だ。双子のバスクだ。歳は二十代の前半に見える。


 総じて、バスクは若い。まず死亡率が高いし、生き残っても大抵は身体や精神を壊して、長くても十年ほどで引退を余儀なくされる。しかし、生き残っただけマシだし、手足を失うなどは当たり前の世界だった。


 「わたしはヤームイ」

 ポニーテールがアートやカンナ、そしてクィーカとも握手をした。

 「わたしはヤーガ」

 ツインテールが続く。声もそっくりだ。


 「こっちがカンナ、こっちがクィーカ。クィーカは俺のセチュだが、カンナはモクスルの新人で、今日から俺といっしょに退治を」


 「そうなの、よろしく。仲間がふえるのはいいことね。知ってのとおり、いまちょっと、バスクの数が足りなくて……」


 そう、二人して両手を上げて肩を竦め、眉を下げて同じしぐさ、同じ表情をする。

 「足りない? そうかな?」


 「竜が増えてきてるでしょう? モクスル、コーヴとも、半分以上はサラティス領内の村々や街道筋に出張ったり、隊商の護衛で出張したり……中には、ストゥーリアやラズィンバーグまで行ってるバスクも。残りの半分のうち、また半分くらいは順番に休みをとってるし。動けるバスクは意外と少ないの」


 「加えて……ま、続きは歩きながら説明するから、行きましょう」

 二人とアートが歩きだし、クィーカも後に続いたので、カンナもその後ろを歩いた。


 「ねえ、アート。あなた、気づいてる? 竜が増えてるといっても、ただ闇雲に増えてるんじゃない。バグルスもやたらと現れてカルマは大忙し。バグルスに率いられて、明らかに竜が組織的に侵攻してきている……」


 「竜が組織的とは、尋常じゃないな。しかし、そんなことが本当にあり得るか?」

 アートが笑いながら答えた。

 「分からないけど……カルマのアーリーはそう云ってたわ」

 アーリーの名前が出て、カンナは胃が口から出てきそうになった。


 「アーリーねえ。あのバスクの生き字引みたいな人がそう云うんじゃ、そうなのかもな。しかし、俺みたいな下っぱバスクにゃ、関係ない話だ」


 それがたいていのバスクの本音だろう、とカンナは思った。あんなバグルスなんかと、誰が好きこのんで戦うだろう。


 「ところで今日の相手はなんだ? 主戦竜か?」

 ヤーガとヤームイが顔を見合わせた。


 「さっきの話に戻るのだけど、アート、最近、バスクを専門に襲う竜が出てきているのは知ってる?」

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