第27話 モクスルの理由
フレイラが素っ気なく云い放って歩きだしたので、カンナが続く。
「ねえ、そっちのセチュも置いてったほうがいいんじゃないの!?」
同じ年頃のカンナを心配してか、アンリータと名乗った娘が叫んだ。
「余計な心配だ、こいつもカルマだよ! ……おまえもなんとか云えよ! 黙ってるから、セチュだと思われてんじゃねえか」
「えっ? ……ええ、ああ、あの、そ、そうなんです」
そう云った瞬間、カンナは石に
「あ、あの、フレイラさん……モグ、モ、モグってなんですか?」
「あ? ウガマールにゃモグラはいねえのか? 地面を掘って穴の中に棲む、ネズミみてえな生き物さ。竜にもそんなやつがいてよ、地下潜行型特殊竜をモグラって呼んでる」
「じゃ、じゃあ、その、バグルスの他に、地面を掘る竜がいるってことですか?」
「そういうことだな。こりゃ、当たりかもな」
「当たりって?」
「森にゃ、まだバグルスがいるだろうぜ」
カンナは顔をしかめた。まったくバグルスづいている。
「あの、さっきの人たちに、せめて、そのモグ……ラーを、退治してもらったら……」
「モクスルにか?」
「ええ」
確かにそうだとフレイラも思った。アーリーが主張している、モクスルとカルマが協力して竜を退治する良い機会だろう。が、
「無理だぜ」
「どうしてです?」
「前も云ったけどよ、可能性が低くたってカルマ並に強い奴は確かにいるんだよ、話を聴く限り……な。だけど、そいつらは動かねえんだ。いくら報酬が高くたって、バグルス相手じゃ命がいくらあってもたりねえからな! だから可能性が低いんだよ、あいつらは!
可能性ってのは、単純な強さじゃねえんだ!」
「いえ、バグルスじゃなくて、その、モ、モグラーの相手をしてもらうんですよ」
フレイラが、ため息まじりに掌を振った。
「分かってるって。さっきの連中がどれくらい強いのかしらねえがよ……こっちが云う前に、もう逃げ腰だったろう? 強かろうが、弱かろうが、どっちにしろバグルスにゃ近づかねえよ。あいつらとオレたちが連携して竜退治なんて、夢のまた夢さ」
それは、臆病ということなのだろうか。それとも、意識が足りないのか。カンナは分からなかった。そもそも分からないのは、臆病で意識も足りない自分の可能性が最高に高いということだが。
「でも……わたしでも勝てたんだし……」
フレイラが止まる。突然振り向いて、カンナの胸元をつかんで顔を引き寄せた。目が据わっている。
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