第24話 ガリアの銘
確かに「そのまま」だが、ふしぎな響きにカンナは胸が高鳴った。だが、
「あ、あの、アーリーさん……もしよければ、それに加えたい言葉が」
「ああ? おまえ、生意気にアーリーさんの考えた銘にイチャモンつけるのかよ」
「あ、い、いえ、あの、そ、そういうわけじゃ……」
「かまわない。カンナ、云ってみろ」
アーリーに云われ、カンナはやや安心し、
「は、はい。あの……雷紋黒曜……共鳴剣にしたいです」
一瞬、残る三人が眼を合わせる。
「共鳴剣? 共鳴って、なんのことだよ」
フレイラが大げさに尋ねた。
「あの……わたし、共鳴したんです。剣と……黒剣と、共鳴したんです。確かに。だから……きっと、それでバグルスをやっつけることができたんです」
「意味がわかんねえな」
フレイラが後頭部へ後ろ手を組んだまま、首を傾げた。アーリーが大きく頷く。
「よし。
カンナはアーリーに認められた気がして、満足だったし、ガリアに立派な銘がついたことで何かしら誇りが沸き上がってきた。しかし、マレッティは口をとがらせ、不満げだった。
「ズババーン剣のほうがいいと思うけどなあ」
で、あった。
「じ、じゃあ、マレッティは……そう呼んでもらっても……」
「そお? じゃあ、そうさせてもらおっかなあ。カンナちゃあん。今日はどおする? もう遅いから休む? それとも、夜食に何か少し食べる? 今日は、朝だけで何も食べてないんじゃなあい?」
確かに、落ち着いたら腹が減っている。言葉に甘え、カンナは塔の裏手から小腹を満たすためマレッティと夜鳴きの屋台へ向かった。夜番のセチュや、夜に竜退治を行うバスクたちが腹を満たすためによく利用するので、サラティスでは深夜も屋台が多い。パンに各種の肉や焼いた葱、魚の燻製や揚げ物、ハーブなどを挟んだ簡易な食事を提供するものがほとんどだが、中には兎や鶏肉のシチューや釜焼き、豆や蕪のスープ料理など、凝ったものを出す屋台もあった。
カンナとマレッティがいなくなってから、アーリーがフレイラへ変わらない口調で云った。
「二人から目を離すな」
しかしフレイラの返事は無かった。
「フレイラ」
「オレは反対っす。あいつにかまってたら……こっちが死んじまいますぜ」
厳しく光る視線をアーリーへ向け、フレイラも螺旋階段を下りた。アーリーは大きく息をつくと、いつもの椅子へ座り、頬肘をついて瞑想を始めた。
翌日は曇っていた。
雨になるとカンナは思った。ウガマールは、今は乾季のはずだが、ここでは違うのだろうか。心なしが気温も下がっている。
サラティスへ来て三日目で、少しは落ち着くかと思ったが、事態はさらに悪化した。
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