第23話 報酬

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 カンナは身体の痛みで眼を覚ました。一瞬、どこか分からなかったが、やがてカルマの塔の自室だと分かった。既に暗く、夜のようだ。どうやって帰って来たのかまったく分からないが、きっとアーリーたちが救出してくれたのだろう。月明かりにメガネをとり、自分を確かめると、塔の下女たちによって湯に入れられたようで身体はきれいになっている。また傷の手当もされていた。擦り傷と打撲が主だったが、やたらと腹が痛い。全身に軟膏と湿布が包帯で巻かれていた。カンナには分からなかったが、皮肉にも、最も深い傷がアーリーにくらったその腹部の打撲傷であった。


 窓を開けて風を入れ、窓際で椅子に座ると、話し声が聞こえた。上階の控室から漏れているようだ。状況の確認と、助けてくれたのであろうアーリーらへ挨拶のため、カンナは部屋を出て螺旋階段を登った。


 かなり静かに上がったつもりだったが、途中から上階の音が無くなった。カンナは気にもせずに、階段を上がりきってカルマの控室へ顔を出した。


 アーリー、フレイラ、マレッティの三人がそろって自分を見ていたので、カンナは戸惑った。


 「起きたのお! カンナちゃあん!」


 マレッティが駆け寄ってカンナの腕をとり、アーリーの前へ誘った。痛みが走り、カンナは顔を歪めた。


 「あっ……だいじょうぶ?」

 「ええ……」


 腹部を抑えながらカンナが笑顔を作った。アーリーへ礼を云おうとしたが、先にアーリーが口を開いた。


 「カンナ、報酬の百カスタは、黒猫に云って塔の保管庫へ預けてある。必要なときに、自由に引き出して使え」


 「あ、あの……わたし、たぶん、皆さんに助けられて……ありが……百カスタ?」

 「なんだおまえ、自分でバグルスをぶっころしたの、覚えてねえのか」


 フレイラが笑う。あ……と、カンナは思い出した。が、途中から覚えていない。戦ってたのは覚えているが。倒したような……倒していないような。


 「剣が……鳴った……」

 「あ、なんだって?」

 「いえ、なんでも……ないです」

 「カンナよ。バグルス戦は見事だった。しかし、過信するなよ。常に自分を保て。いいな」

 「……はい……」


 カンナは自分を見下ろすアーリーの澄んだ赤い眼をみつめた。恐ろしくも、慈愛に満ちている気がした。


 「ところでカンナ。黒剣の……ガリアの銘だが……バグルスを倒した以上、銘を決めた方がいい。サラティス市民の話題にも登ってくるだろうからな。私でよければ……考えた銘がある。そのままで、芸はないがな……」


 「どんな銘っすか?」

 「雷紋黒曜剣らいもんこくようけんだ」

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