第17話 不和

 アーリーが無表情であっさりとそう云い放ち、特に装備も整えずに塔を下りた。フレイラとマレッティも続く。食料も水も薬も、何も持たないのだろうか。困ったが、仕方なくカンナも続いた。


 四人がカルマの門より出ると、何人かのバスクが既に塔の前の広場に集まっていた。もちろん全員、女だ。背の高い者から、低い者。華奢なものから、男よりも体格の良いもの。ただ、年齢は全員が比較的若い雰囲気だった。


 「コーヴは何人だ」


 アーリーが素っ気なく云い放つ。二人、手を挙げた。すると、残りの五人がモクスルとそれらのセチュだった。


 「七人か……思ったより少ないな」

 「ちょっと、アーリー……」

 肩幅の大きい、一番大柄なバスクが、お言葉だけどね、と前置きして、


 「軽騎竜が三、主戦竜も『カラス』が一頭だろ? 対空要員をそろえて、これでも多いくらいだよ。コーヴ一、モクスル二の三人でも充分」


 「そういう問題ではない」

 発言を一蹴され、そのコーヴのバスクは口をひん曲げて肩をすくめた。


 「やれやれ、相変わらずお高いのね! で、そっちのメガネちゃんが、ウワサのカルマの新人!?」


 突然ふられたので、カンナは驚いて自己紹介しようと思ったが、あまりにバスクたちの視線が鋭いので声が出なかった。


 「これがカルマねえ。可能性が99ゥ!? どう考えても期待ハズレだと思うけどねえ」

 「しっつれえねえ。ハズレかどうか、やってみないと分からないわよお」

 大柄なコーヴの女性はあからさまに鼻で笑い、かつカンナを蔑んだ横目で見た。


 「せいぜい、死なないようにね。バグルスなんて、あたしは何百カスタ積まれたって御免だからね! じゃ、みんな行こうか」


 コーヴとモクスルのバスク達は、カルマと打ち合わせも何もせずに、行ってしまった。フレイラが頭の後ろに手を組んでため息をつく。


 「あーあ、だめだこりゃ。アーリーさん、あいつらとバスク軍を作るなんて、やっぱ無理っすよ。そんなものは都市政府にまかせましょうよ」


 「政府が動くのを待っていては遅い。政府の依頼では形だけになる。バスク達が自発的にまとまらなくては、意味がない。竜どもが組織化しているのに、我々がこうもバラバラでは、いつか負ける」


 「そうは云ってもねえ……」

 フレイラは、遠い目で街道をゆくコーヴ達を見つめた。

 カンナは、マレッティへそっと尋ねた。

 「どうして、あの人達はわたし達といっしょに行かないんですか?」

 「どうしてって……コーヴやモクスルはカルマと仲が悪いからよお」

 「どうして仲が悪いんですか?」

 「どうしてって……」


 「憧れ、妬み、嫉み、恐怖、畏怖……いろいろあるけどよ、可能性だけで給料を決められちゃあなあ。そりゃあ、面白くねえだろう?」

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