第14話 翌朝
「明日にも、侵入したバグルス討伐の依頼が都市政府から来るだろう。どんな竜を何匹引き連れているのか知らないが……それはコーヴとモクスルにまかせる。我々はバグルスを退治する。これは、ちょっとした総力戦だ。いい予行演習となるだろう」
「アーリーさん……あいつ、どうします? きっと使い物にはならないっすよ」
フレイラが顎で脱け殻となっているカンナを指した。
「カンナちゃんはだめよお。今日の明日で、動揺しているだろうしい。ここにいた方が安全だわあ」
「そうだよな」
しかし、アーリーははっきりとそれを否定した。
「いや。カンナも連れて行く。可能性は飾りではない。彼女は役に立たずとも……彼女のガリアは……あの黄金の線模様の黒い剣は、きっと役に立つだろう」
「マジすか……」
フレイラが露骨に表情を歪めた。お守りは御免だと云わんばかりだ。
「だあいじょおぶよお。それじゃあ、あたしがカンナちゃんを指導しますのでえ。カンナちゃん、明日は本格的な初陣だから、はりきっていっきましょおねえ! 今日はあ、れ、ん、しゅ、う! 練習ねえ! ……カンナちゃん、カンナちゃん? 起きてる?」
「えっ……ええ……ええ……」
「おい、こいつ、まじめにやれよ!」
フレイラがカンナの肩をつかんで揺さぶった。とたん、バチン! と音を立てて静電気が走り、反射的にフレイラは手を離した。いや、静電気などという生易しいものではなかった。電流がほとばしった。軽い火傷の痛みと激しい痺れを隠し、フレイラは鼻息も荒く、
「お前が死ぬだけならまだしも、足をひっぱりやがったら承知しねえからな!」
と、悪態をつき、階下へ下りて行った。
「カ……カンナちゃん? あたしにビリビリはだめよお? さ、もう寝ましょ? 立って。ね、いきましょ?」
のろのろと立ち上がり、カンナはマレッティに連れられて自室へ向かった。
アーリーが、その二人を、壁の奥まで透徹したような眼でみつめている。
小さな蛾が、燭台の炎に焼かれて落ちた。
小竜めいたヤモリが蛾を求めて、壁をつたっている。
3
カンナはいつのまにか眠っていたようで、気がついたら起きていた。
この街に来て、まだ一晩しかたっていないのに、激しい衝動と衝撃を受け、どのようにしていまここにいるのか理解できない。
今、自分が寝ているのは、この街で最高の栄誉と権力と実力を誇るバスク組織の宿舎であった。本当にここにいて良いのだろうか。化けの皮がはがれない内に……いや、死なない内に逃げ出した方が良いのではないか。ぼやけた天井が急に眼前へ迫ってくる感覚に襲われ、カンナは仕方なく起き上がってメガネを探した。やや離れたテーブルの上にあった。マレッティが置いてくれたのだろうか。ふと見ると、薄い下着で眠っていた。昨日、下女が用意してくれた服を着て、部屋の中を改めてよく観察した。
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